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シカゴポストロック再訪 Tortoise/TNT

トータスがブレイクしたミリオンズ・ナウ・ネヴァー・ダイの頃のシカゴのポストロックは、音楽的なピークだったと思う。90年代中頃のシカゴの音楽シーンではガスタ・デル・ソル、シー・アンド・ケイクと共に全てが充実していた。

この後、ブラーがジョン・マッケンタイアにリミックスを依頼したり、ステレオラブがプロデューサーとして起用したりしていて、彼らが世界を跨いで活躍し始めた後にリリースされたのがアルバム「TNT」。

トータスにとって大きな影響の源になっていたのがディス・ヒートだと僕が知ったのは、TNTを聴いた数年後だった。あらゆる演奏を録音してエディットで再構築する。そのためのツールとしてプロツールスが注目されたきっかけになったアルバムともいえる。

ジョン・マッケンタイアはこの頃を振り返り、プロツールスに振り回されたとも語っているものの、ここでのアプローチはデジタルというよりもアナログライクな音作りがされていて、不思議な時代感覚の上でこのアルバムは作られている。

ミリオンズ・ナウ・ネヴァー・ダイと比べると、幅は広がったものの、トータスらしさを演出していたダグ・マッカム6弦ベースがすこしばかりなりを潜め、新たに参加したジェフ・パーカーの弾きすぎないジャジーなギターがフィーチャーされている。

アブストラクトヒップホップやエレクトロニカ、ライヒの様なミニマルミュージック、ブラジル音楽といったごちゃ混ぜ感がこのアルバムの特徴。

昔、ライブで知り合ったカナダ人の男性とトータスの話になり、TNTが好きだといったら「ノーノー、トータスで一番素晴らしいのはミリオンズ・ナウ・ネヴァー・ダイでしょ!」と言われたのを覚えてる。たしかに今ではそう思う。

トータスの一枚を選ぶのはちょっと難しい。

https://itunes.apple.com/jp/album/tnt/1066552603

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