ぼくの米倉庫。

ぼくが小さい頃、スマホやショッピングモール、カラオケなんてハイテクなおもちゃや遊び場は無くて、

ぼくらは小さな米倉庫で、自転車に乗ってひたすらキャハキャハ騒ぎながら走りまわる遊びばかりしていた。

でもそれでよかった。十分だった。

たまに怒られながらも小さな古屋の塗炭屋根の上に二人で座って、夏の温度に熱くなってる上にあぐらかいて、そして贅沢にお母さんが持たせてくれたなんかの果物なんか食べながら、くっちゃべる。

それだけで十分だった。じゅうぶんだったんだ。




ぼくはいま、都会にいる。

ここにはなんでもあるらしい。
なんでも。なんでもね。

でも最近のぼくはありとあらゆるものの物量や目に飛び込んでくる情報の多さ、
歩いてるだけで疲れるくらいうるさすぎる電車の音や街のガヤガヤ、

とにかくじぶんの音が聞こえないって、
今まで聞こえてなかったんだってことに、
ついこの前気付いた。


外のうるささが全部ダイレクトに自分の中に入ってくるのは、
きっといまのぼくの胸の中が空だから、
もしくは外から色々と突っ込まれすぎて、それを
持っておく場所を確保するために色んなものを捨ててしまったからかもしれない。
「荷物は少ないほうがいい」
そんな言葉をある本で見てから、
いらないものはなるべく捨てるようにした。
だけどね、そうしたら何も残らない気がしたんだ。だから今この瞬間もぼくは、いらないものを捨てられずにいる。
だって本当にぜんぶ綺麗に捨ててしまったら、
新しい誰かに会うのがいちいち怖くなってしまうじゃない。
嘘でもいいから、建前でも、その場凌ぎでも、
なんかそれっぽいものがあった方が、
本当のぼくを知ってもらえなくても、
「ああ〜こうゆう感じの人ね」
って、それが違ったとしても、それでもその場は丸く収まるじゃない。

「え、なにこれ?あなたの部屋なんにもないじゃん。空っぽじゃん。」

なんてドン引きされずに済むでしょ。

最近おもうんだ。

会う人会う人、会ってしまった人にまで一人残らずほんとうのボクを正確に理解してもらう必要なんてないんじゃないかって。
そりゃ、その方がいいかもしれないけど、
伝わらないっていうか、じぶんでも分からないことまでズバズバひとつひとつ色々聞かれるじゃない?
「じゃあこんな場合はどうなの?」
「えっ??それじゃあさっき言ってたのと違うじゃん」
「それってただワガママなだけじゃない?って話になってきちゃうよ」

う〜ん、わかります。悪気はないってこと。ぼくの説明不足でもあるってこと。理解しようとして質問してくれてるだけってことも。それはありがとう。それでもそれでも、それがいちいち僕には苦しい。
ほんとうのことを言えば言うほど変な間と空気、眉間の皺ばかりが増えていく。
それに押されて上手く説明できなくなってしまう。だってそんなに強くないから。
弱かないけどそこまで強くもないんです。

「……で? 結局どうしてほしいの???」


答えられない。説明できない。
じぶんでも、よくわからない。だから困ってる。


なんて会う人会う人に言ってたら疲れてしまってもたないし、しんどい時はそれっぽい感じでそうゆうことにしておいて、それでもなんとかなるなら、それでいいんじゃないかなって、思ったりする。

でもそれは当然虚しくもある、
「なんでぼくだけこんなに偽らないと買い物もバイトもできないんだろう、コンビニくらいならいいかな、ぼくのまんまで行っても」
なんて、
思ったりもする。

だからほんと言うとぼくはいま、バイトする申し込めずにいる。ビビりすぎて何もできてなくて、
パパとママに申し訳なくて、
どんどん素敵な大人になっていく姉が遠くなっていくようで、情けなくて、バイトしなきゃなってスマホで探して、たまに勇気を出して偵察に行ってみて、すごく怖い感じがしてビビって「やっぱやめた、ここは嫌な予感しかしない」なんてビクビクしながら足早に帰宅して、
家に着いてもこわくてどうぶつの森の住人数人に話しかけて、やっと少しだけホッとする。
そうして何も解決してないけど「少しは進めた」って自分を褒めて。また元気になってきたらバイト探して。

そんな毎日。ポンコツなの。
小さい時から今まで手抜きをしてきたつもりは少しもないのに、
小さい時散々手抜きをしていた、掃除を毎回サボってたあの子の方が、
先生の悪口いいながら友達の宿題を写してたあの子たちの方が、
きっと今頃ぼくよりずっと、まともな社会人になってるんだろうな、
なんて思ったりする。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。ありがとう。
ぼくはこんなに情けないし、親不孝者でまるで社会不適合者って感じだけど、
いままでも、いまも、ぼくなりに、ぼくなりに前に進んでるんです。サボってなんか、いないんです。
分かってくれ、なんて申し訳なくて言えないけど。

でもね、悩んでずーーんってなるよりも、
こうして字を書いて、外に捌けて、
落ち着いたら笑いながら文句の一つや二つ軽くボヤいてみる。
そんな風にできるようになってきたなんて、
少しは成長したとは思いませんか?。

そんなもの。ぼくの確かな1歩。

だからぼくは、ムーサだけを見つめることにした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?