優先順位

ぼくの母はいつもぼくの父を最優先する。

姉2人がまだ実家に住んでいた頃(僕が高校生になる前まで)は家に5人もいてわちゃわちゃしてたのであまり気にならなかったけど、
姉がいなくなって高校生のぼくと両親と3人暮らしになってから、ぼくは寂しい感じになることがちょこちょこ増えていったのだと思う。

というか、母が父を優先したり父がストレスを子どもにぶつけて発散するのは多分その前からあったけど姉が優しかったし親友みたいな姉だったからそこまでこたえなかったのだと思う。

父はもともとちっちゃい子みたいな性格というか、多分大人だけど子供のときに不足していた母親の無償の愛みたいなのを妻であるぼくの母に求めているんだろうなと思うような部分が多く見えていた。
母がぼくを褒めると父が不満そうにぼくに難癖つける発言をしてきたり、母と僕が2人で出かけたり(スーパー程度でも)するといじけたり拗ねて卑屈な発言をしたりする。

そしてそんなことよりも父はぼくが小学生のころ仕事のストレスで鬱病になり、何ヶ月も入院してたこともあり、そして10年程経った今も精神科で薬をもらっているし、睡眠薬がないと眠れないらしい。ましになったりはするけどなかなか完治とかは、ないんだと思う。
と言っても買い物もできるしたまになら友人と遠出とかもできるくらいにはなっている。

でもやっぱりそうゆうこともあったし、鬱になって仕事を辞めて、また復帰して、とか色々あったので父はいまも色々と心の傷が癒えていない。

母は触れない方がいい、そっとしておくべきこととして、家庭でもその話題は僕が小学生のときからタブーとなっていた。

そうゆうこともあって、とにかく母にとって父は主人で一家の大黒柱という理由以外にも、いろいろと気にかけて優先しなければならない存在という感じだったし、今もそうだ。


そんなの、当たり前じゃないか。むしろお前ももっと父を気にかけるべきだ。


そう言われそうだ。


ぼくが母に進路のこととか学校に馴染めなくて辛いとか、すごく大事な話をしているときに2階から父が降りてくると父が話し出すし母も父を気にかけるので強制的にぼくの話は実質、終了されてしまう。

そんなのはいつものことで他にもたくさん、たくさん、ぼくが母をとられたくない場面で、父はいつも母を掻っ攫って行く。

ぼくは寂しかったんだと思う。

そして自分でも、「自分が優先されないで蔑ろにされるのは仕方がないことなんだ」と、無意識に潜在意識に刷り込まれていったのかも、しれない。

極端に捉えすぎな面はあるのだろうけど、
でも極端に捉えたくなるくらい寂しい思いをする場面が多かったんじゃないかなって、いまは思う。
当時はあんまり分かってなかったけど。


関係あるか分からないけど、ぼくはよく、自分が友達になりかけてる子と友達ができてなくて1人でいる子を引き合わせて、その2人が仲良しになると「よかった」って安心して、2人は気が合って楽しそうだし、自分はいいや…ってなんとなく身を引いてしまって、気付いたら自分だけ居場所を作らずに独りになる、
っていうのを、クラスが変わるたびに、新しいコミュニティに属するたびに、繰り返してしまっていた。



なんか、

じぶんはいいや…



みんながいいなら、じぶんは(寂しくても)いいや…




って、無意識に思う癖がいつのまにか段々とついていってしまっていたのだと、
最近になって気付いた気がした。


そんなこと、ないはずなのに、

小さい時から家の中でなんとなくずっと優先してもらえなかったせいなのか、
なんか、そうゆうのも影響あったんだろうなって、思った。


今日スーパーの帰りに、案の定雨が降っていて、買った物を乗せるためにと1台だけ押して来ていた自転車に乗った母が、
ぼくが小さい折りたたみ傘で濡れたくないからと自分で持って来ていた畳まないタイプの傘をパッと取り上げて、母が自分用に持っていたピンクの小さい折り畳み傘を僕にばっと押しつけるように渡し、傘をささずにずっと前の方に走って行った父にと自転車でバーっと持って行った。

父は雨降りそうと言いながらも傘は持っていなかったらしい。父が雨に濡れなかったのはよかったし、母は雨に濡れながら自転車に乗ってくれて、
僕は荷物一袋と袋に入らなかったピザを持ってはいたけど、雨に関しては自分のことしか考えれてなかった。


でも、なんか悲しくなった。

それだけじゃなくて、その前にも色々と、あったから余計に悲しくなったんだと思うけど。


なんか、傷付いて、悲しいけど、傷付けた方にはなんか大きな事情があって、それが分かってるからほんとはすごく傷付いて泣きたい気持ちだけど、「しょうがない」って悲しい気持ちに、傷付いた事実に蓋をして、見て見ぬフリをしてしまう、

そうゆうことって、なんか何気によくある気がする。

でもそれって、すごく傷付いたことすら無かったことにされてる自分が、なんだか可哀想だなって、
ぼくは今まで、何回も何十回も、もしかしたら何百回も、こんなことをしてきてたんだろうなって、

そんなことを考えながら、僕は小さい折り畳み傘をさして、びしょびしょになっていくピザを抱えて、一人でとぼとぼ歩いて帰った。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?