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シビレ

昨日は時間があったので、原宿〜表参道の洋服屋さんを見て回った。
自分の趣味とは別に、気になるお店には積極的に足を運ぶようにしている。
4時間くらいは歩き回ったと思う。

ふと思い出す。上京したばかりの頃もたくさん洋服屋さんを見て回った。
静岡から上京したばかりの僕は東京のかっこいいお店にシビれまくっていた。

恵比寿のマルジェラの真っ白い店内。入ってすぐバスタブが置いてあった。通路に誘導されるまま店内を一周する。ジュースの自販機まで白かった。
意味はわからなかった。

渋谷のネペンテスに置かれたバカでかい剥製や、カウンターバックに置かれたレジ台として使われていた謎の箱や、レジカウンター下の瓶に入った花。後にわかるが、謎の箱は潜水艦で使われていたパソコンのケースだった。が、この店も意味がわからなかった。そもそも店の場所がわからず、二回くらい電話して辿り着いた。

青山のコムデギャルソンの迷路みたいな作りや、頻繁に変わるディスプレイは毎回刺激的だった。これも全く意味はわからなかった。

ナンバーナインは暗くて洋服なんかよく見えなかった。鉄の洞窟みたいなエントランスを入って、中は明るいかと思ったら、中もずっと暗い。
だいたいの洋服屋さんはカッコつけた洋楽が流れていたが、ここではミッシェルガンエレファントが流れていた。

表参道のラルフローレンでは厳かな内装にビビッた。そしてガキンチョの僕に対しても丁寧な接客をされるスタッフの方は紳士を体現していた。

原宿のDogもシビれたな。あとカンナビス。店で煙草吸ってた人がいた気がする。

当時どこの洋服屋さんにいても気まずかった。もともと買い物する気も資金もなく見て回るのが目的だったから。負い目があったのだから当然ではある。

お店から「あなたはお客さんじゃないですよ」と無言のプレッシャーを感じていた。こちらが勝手に感じていただけだけどね。けれどそれ以上に、カッコよさにシビれて、流れている空気をもっと吸っていたいと思った。
どの店も『うちはこれでイくんで』みたいな主張を感じたし、お店を作った人の思考に触れてみたいと強く感じた。

思えば僕のキャリアはここからスタートしているのかもしれない。
洋服の勉強をしていたはずなのに、お店に流れる空気にばかり目がいっていた。

さて話は昨日に戻る。
果たしてシビれただろうか?それなりに重ねた経験が僕を鈍化させている部分はあると思う。それを差し引いて考えても昨日はシビれただろうか。

やっぱり僕は洋服屋さんに行ったらシビれたい。
シビれなければ、そこは洋服屋さんではなくて洋服売り場になってしまう気がしている。

ECが普及して実在店舗の役割は変化している。
だいたいの買い物は、誰もが手にしているスマートフォンで済む。
それでもお店で買い物する意味を作りたい。訪れる価値がある空間にしなければ、もはや実在店舗は役割を果たせないと思う。写真映えとかそういう次元の話ではない。もっと人間の根幹にアクセスしたい。訪れた人の感情を揺さぶって、脳みそに刻みたい。

僕は箱を作るのが仕事だから、独りよがりな意見なのもわかっている。
実際、お店を作るのには大きな資金が必要だ。敷金だって家を借りるよりも何倍も要求される。お店ができたあと、運営にも相当なお金がかかる。

それでもできると思う。熱量を感じたら、僕もそれに応えたい。
そういうクライアントに出会いたいし引き寄せたい。
僕自身、どこか欠けてしまった初期衝動を取り戻さないといけない。

そんなことを考えた1日でした。

あー柔術いきてー

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