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もぐら本 制作裏話/20年の時間の流れと、拾いあつめた言葉をデザインすること。

こんにちは。もぐら会のヒロコです。

もぐら会の本「もぐらの鉱物採集2 インターネットの外側で拾いあつめた言葉たち 二〇〇〇-二〇二〇」、略して「もぐら本2」は、おかげさまで予想を上回るご注文をいただき、初版は完売、めでたく増刷となりました。長くお待たせしてしまった方、ごめんなさい。増刷分の発送もはじまり、みなさんのお手元に届いた頃かと思います。

手に取ってくださった方、どんな印象を持たれたでしょうか。今日は、「もぐら本2」のブックデザインに込められた思いと、ちょっとした仕掛けについてお話したいと思います。

「もぐら本2」のブックデザインをメインで担当したのは、もぐら会のメンバーで、本職グラフィックデザイナーである花さん。編集者など本づくりのプロがいるわけではない制作チームの中で、根気強くチームのみんなの思いを聞いて、コンセプトをしっかりもった素敵なデザインで表現してくれました。

花さん「20年間のことを17人が語る本、というコンセプトを聞いた時、どうやってその『時間』を本で表現できるだろうかと考えました。1枚1枚ページをめくりながら読み進める本というメディア、紙が積み重なって綴じられた本という立体物が、そもそも時間を内包した空間的なものなので、うまくその特性を生かしたいなと思いました。そして、普段はあまりすることのない、ちょっと実験的なことをしてみたいなとも思っていました」

表紙の水彩+ラインの意味

まずは表紙デザイン。色とりどりの水彩模様が濃淡を見せながらまじわっています。そしてそのあいまに白く細く引かれた、20本の線。

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花さん「横に引いた20本の線は、この本を貫く20年という時間の流れを表しています。その中に、一人ひとりの語りがさまざまな形で、そこにある。それを水彩模様の重なりで表現しました」

語りのページに配された「時間」

そしてページを開いてぱらぱらとめくってみると、語りのページの縁には、ところどころに水彩模様がちりばめられているのがわかります。じつはこれは……

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花さん「ページの端の上から下を、2000年から2020年の目もりに見立てて、そのページでだいたい何年ごろの話をしているのかに応じて、水彩模様を置きました。はっきり何年と振り分けることのできない語りの曖昧さと広がり、インターネットのデジタル空間からこぼれ落ちた言葉というニュアンスを伝えるために、ピクセルにならない、淡い水彩模様で時間を表しました。

もぐら本に登場する17人は、年代も生きてきた場所もばらばらですが、ある時は別の体験をしながらどこか通じる思いを抱え、ある時は同じ経験を共有しながら別のことを感じていたかもしれません。語りのページに配された水彩模様でも、ずれながら重なり合う、そんな17人の20年が感じてもらえるようなデザインにしました」

もう一度、表紙の意味

語りのページに記された水彩模様は、17人の語りの、同じ20年の中に広がる、誰とも同じではない人生のかけら。じつは、これらを拾いあつめて描き出された模様こそが、一見ランダムにも見える表紙の水彩模様なのです。

花さん「一人分の語りのページに配した水彩模様を、全部取り出してきて縦一列に重ねると、一本の縦長の帯になります。それを17人分、横並びに配したのが、表紙から裏表紙にかけての水彩模様なんです。

模様の重なりが多いほど、つまり語り手がその頃の話をたくさんしているほど、水彩は白に近づいていきます。

原稿に目を通した制作チームの中で、『語れば語るほど、語りきれないものが浮かび上がってくるようだ』と感想が交わされていたのをインスピレーションに、語られた言葉のすきまから色彩が垣間見える景色を表現しました」

これが、表紙から裏表紙にかけて並べられた、17名分の語りの模様。

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20本の白い線によって広がる20年という時間の中に、規則性も整合性もなく、でも確かに意味をもってそこにある17人の人生。その愛おしさ、おもしろさが表現された、制作チーム一同、自慢のブックデザインです。

どうか手に取って、表紙の水彩模様も語りの一部として楽しんでほしいと願っています。

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