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編集者がめっちゃくちゃな本づくりに巻き込まれて見つけた、クリエイティブの本質

こんにちは。もぐら会のかんおうかなこと申します。もぐら会では、かんちゃんと呼んでいただいております。ふだんは会社で主に子ども周辺の本をつくったり、子ども向けの企画をしたりする仕事をしています。本づくりが大好きで、できたら仕事でもプライベートでもやっていたい。

だから秋に紫原さんから「決めた! もぐら会で本をつくろう!!!」って話が出たとき、条件反射のように「絶対やる」と思っていました。好きな人たちの原稿ひとつひとつが活かされるような本をつくってみたい、わたしはそれを誰よりもしたいし、できる。

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1月にもぐら会のSlackにざっくり考えた本づくりの計画をUPしてみました。すると数名からすぐに反応があり、「かんちゃんリーダーお願いできる?」と紫原さんから投げかけられ、勢いのままに「やってみます」と答えて、数時間後には企画メンバーの募集がかけられていました。

正直に言うと、要所要所で紫原さんに相談しながら編集担当1人で本をつくってしまうこともできたんです。そのやり方なら自分の想定する100点の仕上がりにはもっていけるはず。普段仕事でやっていることだから大丈夫。傲慢にもそう思っていました。

単行本の本づくりって、著者(監修者)+編集1人で進めてしまうことが多くて。もちろん相談にのってくれる上司や、デザイン、校正校閲、プロモーションなど、場面場面で関わってくれる人がいるのですが、ゼロからラストまでの作業は大抵担当1人で進めます。

だから、「リーダーに」と言われたときも多くて3人程度で進めるイメージだったし、さらっとやってみる程度のほんの軽い気持ちだったんです。

それが……、「本づくりに関わりたい人募集」と声をかけた紫原さん、あれ? あれ? どれだけ人を集めるんだろう? へ? なんで8人も? そして執筆者が最終的には35人。なんなのめっちゃ怖い。どうしよう。

わたしは誰かの思いを実際にかたちにしていく裏方作業自体は好きでおそらく得意なのですが、前に出てみんなを引っ張っていくようなポジションには向いていないのです。

そもそも人前に出るのが苦手で激しく自意識過剰です。もぐら会のFacebookに投稿するだけでも下書きを書いて読み直して、勇気が出たらやっと送信を押せていたくらいビビりのわたしです。そのわたしが、みんなに声をかけてやっていくなんて。心臓がばくばくして怖くてたまりませんでした。

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それが、大勢でやって、本当によかったんです。

本の企画チームのあたたかでやる気に満ちた雰囲気のなか、正直に「わからないです」「できません」「苦手です」「どうしたらいいですか」と相談すると、「こうするのはどう?」「こんな事例があるよ」「やっておくね」など自分の中に全くなかったアイデアや知識、技術がどっと返ってくるのです。弱さを最初から全開で出せたのは、もぐら会の「お話会」でそれぞれの心の内を聞いてきた安心できる土壌があったからこそ。

次第にわたしは、1人で抱えるのを完全にやめて、ちょっとしたことでも企画チームに相談するようになりました。そのたびに、前のめりにみんなからアイデアが出てきて、わたしの想像を超えたゴールへと導かれるのです。

8人いると、やはり様々な考え方や個性があります。会社員やフリーの人、子育て中の人、話しやすい時間帯も違います。ものづくりのスタンスも違うので、この段階でこの話題に戻るのか! と、戸惑う場面もたくさんありました。でもそういうときに、きちんと聞いてみんなで考えてみるとその話題は本質的で、引き返せてよかったと思うことばかり。

そうしていくうちに、袋とじが35個もある本、思いもしなかった表紙、各人執筆期間2日のリレー執筆……などなど、全くわたしが想定していなかった本になっていったのです。

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普段の商業出版で出す本は、つるりとしてとてもきれいです。

1冊を通しての統一すべきルールがあり、読者に違和感なく読んでもらえるスマートさがあります。きっと多くの人に好感をもってもらえるでしょう。

でもこの本に掲載した物語たちは、ゴツゴツした原石のようなものに仕上げました。

35人の筆者で表記ルールも違うんです。マニアックな話題になってしまいますが、「なに」「なん」「何」、「とき」「時」などの使い分け、行間のあけ方などもひとつの個性として、35人の筆者それぞれでルールを変えています。今まで仕事で機械的に修正を入れてきたひらがな、カタカナ、漢字の使い方にもここまで個性が出るのだと、自身の仕事の学び直しにもなりました。また、表現が少し一般的でなくても「その人っぽさ」を感じられるものであれば活かしました。

どれも不揃いで格好のいいものではありません。だけど、だからこそ滲み出るその人らしさ、その人の生々しい心の内の物語がとても愛おしい気持ちになるんです。

読んでいただくと、自分と似た人がいたり、その逆もあったり、そして外見だけでは全く見えてこなかった内側を覗き見したりすることができて、きっとさまざまな発見ができるでしょう。

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自分が全く想定しなかった場所にゴールのある本づくりが、こんなにもおもしろいなんて知りませんでした。つくっている間、楽しくて楽しくて仕方なかった。めちゃくちゃ楽しかった。

みんなで心から楽しんでつくったもぐら会の本、興味をもっていただけたらぜひ読んでみてください。そしてもぐら会のお話会でいつかお会いできたら、これほどうれしいことはありません。


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