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予言者だらけのアーカイヴ。

Xなどにより利用者の「過去の発言」がアーカイヴ化されるようになったのだが、そうなると「●年前に今回の事件を予言してる人いた」みたいなことが起きる。単なる偶然と言ってしまえばそれまでだが、中には確かに先見の明があったという人もいるだろう。しかし、こういうのは結局スポットの当て方次第とも言える。

「まだ●●が無名なころに、売れると言っていた人がいた」→M-1優勝!

みたいなパターン。いやいや、見た時に単純に面白かったら言いそうな話ではないか?そのほかの芸人にはまったく言わないでその1組のみに賭けているとかならわかるが、たぶんそんなことはないだろう。それを言うなら俺もランジャタイはM-1出る前から面白いと思ってた。思ってはいたが、あんま売れないだろうと思っていたので先見の明はない。
ちなみにランジャタイの芸風の一つとして「長い」「しつこい」というのがあるが、あれは編集で切られていても長いので、実際に見たら耐えられない長さなのではないかと思う。重度のランジャタイファンでないと受け付けないような。

一回ランジャタイがオールナイトニッポンの単発枠でやっていて、それはもう好き勝手やっていた。ブラックビスケッツの音源を使ってそれを挟みまくり、「さすがにこれ以上やるとしつこいぞ」というラインを踏まえながら、ちゃんとそれを超えてくるしつこさであった。

いやランジャタイの話がしたいわけではない。
「昔から俺は●●が売れると言っていた」
みたいなことを言う人は今までもいくらでもいたのである。ただそれがなぜ預言者的な扱いを受けないのかと言えば、もちろん「証拠がないから」。
「15年前に居酒屋でそんなこと言ったじゃん!」と言っても相手が覚えてなければそれまでである。それがX、というかブログでもなんでもとにかくインターネット全般で「自分のアーカイヴ」を残すことができるので「昔こんなことを言ってた!」が通るようになった。
とはいえ、その多くは「当たった予想だけを取り上げる」状態ではあると思う。これとこれについては外してるじゃないか、というのはそれこそ他の人が掘り下げないとわからないし、「ウソをつくのではなく黙っているだけ」で切り抜けられればそれでよいのだから。

その意味では「預言者(仮)」には誰でもなれると言えるだろう。いろんなことを言っておいて当たったものだけをピックアップするやり方なら、だが。
もちろん注目を集めればそのぶん「外した予想」にも日が当たることになるのであまり大っぴらにはできないかもしれない。というか、ネット上の「預言」の多くは本人がアピールするのではなく匿名掲示板の書き込みなどを引っ張ってきたものが多い気がしている。地震が起きるとか事故が起きるとか芸能人が結婚するとか、そういうことがあるたびに「過去のこれが予兆だったのでは」みたいな検証する人たちが出てくる。
しかしまあ、特に地震なんて常々大地震が来ると言われているので別に予言されたからというものでもない。信じていないというか、忘れている人たちが多いから東京に移り住む人もずっと増えているわけで。

あと、記憶のアーカイヴ化によって、いろんなアイデアも「俺が先に考えた」的なことを言えるようになっている。例えば今ネットフリックスで話題となっている「忍びの家」。現代に暮らす忍者のドラマだが、「現代の忍者」というだけであればこれまでいくらでもあったし、誰かが妄想として「現代に暮らす忍者の生活を軸にしたドラマを考えた」みたいなことを過去にどこかに書いてた、なんていう可能性もある。しかし、結局は「ちゃんと形にしてヒットさせた」というところが大事なのだ。アイデアの断片は誰もが持っているしメモ程度のものならいくらでも転がっている。それを実現させることのほうがよほど大変だということをよく覚えておかないとなあ、と自戒を込めて思う。

「これ描いて死ね」というマンガ(マンガ大賞2023受賞作)では、作中内でとある大御所漫画家が「すべての90%はクズ」という発言をする場面が出てくる。いわゆる『スタージョンの法則』というもので、漫画家を目指す人が10万人いても9万人はクズ、さらにそこからちゃんと話を完成させるとか連載が持てるレベルになるとかでどんどん絞り込まれていく…という話があった。まあだから「●●が●●する話あったら面白いだろうな~」と、形にすることも考えず妄想してるだけだとまあどーにもならないよということだろう。作中ではこの法則に対して別の捉え方をする人物が出てきてなかなか興味深いのだがまあそれは読んでみてください。

そういうわけで預言や占いはいくらでも下準備ができたり後から当たってましたとすることはできるのだが、「じゃあ今から俺がお前を殴るかどうか占ってみろ」とまでやるのも大人げないというか、どうやっても外すことはできるし。

まあだから基本的には預言だなんだといってもフラットに捉えるというか、「何ィ!●年前にこれを言い当てている人がいたのかァァーッ!?」といちいち振り回されないようにしておきたい、と思う。

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