見出し画像

シュナムル尊師の漢字廃止論

◉京都大学卒を自称するシュナムル尊師ですが、唐突に漢字廃止を打ち上げて、物笑いの種になっています。理由のひとつに、「漢字に女性蔑視が盛り込まれている」と。ならば、例えば〝〟って漢字はまさに好字(良い意味を持つ漢字)ですが、これは男性差別ですか? 結婚は両性の合意の上で成立するのに婚の字は女偏で、差別ですか? 男性同士のカップルが結婚って、差別ですか? 男+昏で、新しい国字を創るべきですか? このような問いかけにアッサリ破綻する、浅薄な論に思えますが……。

強がってますが、単に反論できないだけでしょ? 検討もしてない。漢字廃止論は「韓国と北朝鮮という失敗例があるので、マネしない方が良い」って説明で、充分に思いますけどね。それ以前に、そんなに漢字が鬱陶しいなら、シュナムル尊師のツイート、全部ひらがなで書けば良いじゃないですか。誰も止めませんよ? これが福田恆存が提唱した正字正仮名への回帰なら、読めない漢字があるので困る人も出るでしょうけど。オールひらがななら、その心配は無し。自分で実践できてない時点で、戯れ言です。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■同音異義語の問題■

漢字は二字ワンセットの熟語とか、多いですね。元々が、言葉が通じない異民族が多数いる中国大陸の、多民族国家の統治システムの道具として、生まれたためです。広大の地域を統治するにあたって、命令書を中央政府から地方へ送り、地方から中央へは租税とかの報告書が上がって来るのに、必要なシステムです。使いこなせるのは官僚や神官だけなのは、エジプトのヒエログリフやマヤ文字とも同じです。漢字は殷王朝で、紀元前1300年ごろから使われ、3300年以上の歴史と伝統があります。

漢字の数は、現在は10万文字以上ありますが、人間が発音できる音は限られています。東パプアニューギニアのロトカス語は5つの母音と6つの子音の11音素しかなく、逆に55の母音を持つベトナムのセダン語や、80-85の子音を持つウビフ語もあるとか。それでも、発音できる音素は漢字の数に比較して圧倒的に少ないので、同音異義語が増えるのは必然ですね。中国には四声による発音の区別がありますが、日本語には四声もないですし。

結果、全部ひらがなやハングルに置き換えると、同音異義語語が多数になります。日本語だと「こうしょう」だけで48単語も同音異義語があるんだとか。それに対して英語やフランス語やドイツ語など、ラテン語由来のアルファベット系の表音文字って、綴りの文字の多寡で視覚的に区別してる部分もありますね。漢字のように1文字で意味をなさない。鳥はbirdで、島はilandですから。

■表音文字の語彙は多い■

常用漢字2000字に大変な労力がかかるとのたまうシュナムル尊師ですが。その知識が既に薄っぺらく、間違い。表音文字系言語は、語彙数が増える傾向が顕著です。例えば日本の英検1級だと、必要な英単語の語彙数は一般に15000語とされますが。日本語能力試験(JLPT)の1級に当たるN1では、語彙数は10000語が必要で、漢字は2000文字が必要とされそうです。合計しても英語の方が3000語も多い。

これは広辞苑と、表音文字文化圏の代表的な辞書を比較しても、明白です。ドイツ語や英語の語彙数は、かなり多いそうで。広辞苑の収録25万語に対し、ドイツ語の代表的な辞書は35万語、英語の代表的な辞書であるオックスフォードには60万語が収録されているとか。ただしフランス語の代表的な辞書は10万語ですが、フランスはキレイな発音が自慢の国で、外来語排除のナショナリズムの伝統が昔からあるので、純粋なフランス語の語彙が少ないようです。

でも、フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語の検定では、2級レベルで必要な語彙はどこも5000語ていどと英語検定と差がないので。語彙数の上限が明確にない1級だと、だいたい10000語から15000語ぐらいというのは、たぶん変わらないと推測できます。そもそも漢字自体が「人+木=休」とか「山+石=岩」など、偏や旁や部首で意味を類推しやすい会意文字が多いです。いずれにしろ、シュナムル尊師の論は破綻しています。

■漢字の造語能力の高さ■

漢字は確かに覚えるのは大変ですが、常用漢字レベルを覚えてしまえば、造語能力が高いです。猿人・原人・旧人・新人のように、●+人で造語が楽にできちゃいますし、意味も類推しやすいですよね。ここら辺は、前述の会意文字とも構造が似ています。さらに、2文字ワンセットの熟語が多いですから、世の中を治めるの意味の経世と、民衆を救うの意味の済民をくっつけて「経世済民」という四字熟語ができちゃいます。

さらにここから縮めて、economyの訳語として「経済」なんて言葉も生み出せちゃう。杉田玄白はターヘルアナトミアの〝zenuw〟という器官に対して、神気と経脈という言葉から、神経という訳語を創ったそうです。このように、幕末から明治の日本人は、日本にない文物や概念に対して、漢字の造語能力を利用して、バンバン訳語を創っていったのです。漢字の造語能力に加え、日本にはカタカナという便利な表音文字もありましたしね。ひらがなとカタカナの2種類あると、外来語はカタカナで音写できちゃいます。

逆に韓国では、最大・最高・最多・最長を区別せずに「最大」に統一してしまおう、という語彙減少の動きもあるとか。二字ワンセットの文化で、漢字を知っていたら、この組合せと概念は別物なんですが。ハングル・オンリー世代には訳がわからなくなり、それをひとつにまとめてしまう。たぶん、韓国では最高を意味する単語や最多を意味する単語を、新たに数百年かけて創造する必要があるでしょう。表意文字から表音文字に切り替えるというのは、そういうことです。

■韓国の漢字復活論■

ちなみに、韓国では根強い漢字復活論があるのですが、これがなかなか秀逸です。慧眼の士はどこにもいるものですね。これを読むと、漢字を廃止した結果起きた、数々の問題点がよくわかります。元々は朝鮮日報日本語版にあったのですが、現在はリンクが切れているので、楽韓Webさんから備忘録も兼ねて、転載しますね。とても読み応えあります。

 われわれは、読書を通じて直接経験することができなかった知識や技術を得ることができるほか、想像力を培って文化を創造する。これは、積極的に本を読まなければならない理由だ。しかし、どうせ読書に没頭するなら、より深く理解することができる方法を積極的に活用する必要性がある。その方法の一つが「ハングルと漢字の混用」だ。

 ある者は、漢字が外国の文字だと排斥する。われわれの先祖が2000年以上にわたって使用してきた文字を「外国の文字」だと言って一蹴するには、これまで蓄積されてきた知識と意味の量からするとあまりにももったいない。読書国家として知られる日本は、小学校の時から漢字を教える。日本人が漢字を活用するのは「お前の刀も私のさやに収まれば私の刀だ」という実用主義的な考え方が根底にある。

 ハングルだけで書かれた書物は読むのが容易だが、意味を把握するのには漢字混用の書物よりも非効率的な側面がある。ハングルだけで表記した場合、直ちにその意味が分からないケースが多い。製字で見るとハングルは科学的に非常に優秀だが、表音文字である漢字よりは伝達速度が遅れる。表意文字である漢字は見た瞬間にその意味が分かるが、ハングルは音を表記した文字であるためその音を読んでこれが聴覚映像を刺激。概念(意味)と結合して意味を喚起する。

 ハングルだけで書かれた文章よりも、1行ごとに漢字が数文字ずつ交じっているハングルと漢字の混用文の方が速く読めるし、リラックスできる。文章中に出てくる漢字の意味を理解してこれを読むことで、文章の理解にも役立つ。また、漢字で表記されたものは1単語、1文節が一目で入って来るが、ハングルで表記されたものは1文字、1文字を全て同じ速度で読まなければならない。

 一目で意味を理解して本を読んでいくには、漢字の有用性を無視することができない。韓国人も読書の能率を高めるために、学校漢字教育から強化して、漢字とハングルで書かれた混用文を自由自在に読むことができる力を育まなければならない。これは国家競争力を高める道でもある。

いかがでしょうか? 正論ですねぇ。漢字仮名混じり文は、拾い読みで速読も可能なんですよね。ちなみに自分、普通の人の3倍から5倍の読む速度って、中学の時に判明しましたけど。それも、漢字の拾い読みのおかげです。でも、早い人は10倍20倍の速度で読めちゃいます。これって学びの点で、ものすごく有利なんですよね。

■漢字の識別機能■

あと、これは呉智英夫子の本にあった話ですけれど。日本人は鈴木さんと須崎さんは別の名字と認識するが、英語ではローマ字表記でSUZUKIとSUZAKIで誤認しやすい……というエピソードがありました。たしかに、HYUNDAIを英語読みしたらホンディで、HONDAと似てるようなもので。紛らわしい。平仮名で「すずき」と「すざき」では、読み間違いは漢字以上に起きるでしょうね、そう思いませんかシュナムル尊師?

さらに、我々日本人は「すず-き」と「す-ざき」で、漢字由来の音節で無意識に区切って認識するのですが、漢字を廃止すると本来の区切りの意味が失われてしまいますね。中国語のような四声もなく、朝鮮語以上に母音と子音が少ない日本語は、その危険性がより高いでしょう。ちなみに韓国では、肩甲骨が意味が子供に解らんので「肩の骨」と言い換えたそうです。なんじゃそりゃです。

漢字なら、肩の背中側にある平べったい甲羅のような骨と、字面からなんとなくイメージできるんですけれども、ハングルのみだと「けんこうこつ」みたいな感じになるのでしょうか? でも「肩の骨」だと鎖骨と混同しそうだし、肩鎖関節やらどう表現してるのかな? 韓国人自身が、ハングルオンリー教育で、祖父母の日記も読めなくなりつつあると、嘆くのもむべなるかな。戦前の韓国の新聞が読めないので、政府やマスコミの歴史捏造は簡単になりますが……。いずれにしろ、シュナムル尊師のトンデモ理論は破綻、ということでよろしいですか?

■繁体字と簡体字■

追記として。中国では簡体字という、簡略化された漢字が使われています。自分は大学の第二外国語、中国語を選択しましたが、これには苦戦しました。台湾で使われる繁体字──要するに正字(旧字)の方が、まだしもわかりやすいです。これは、漢字というのがかなりロジカルにできているからです。へんつくりや部首が、古代中国人の発想の体系に従って編み上げられているので。ここらへんは、白川静先生の著作を読むと、実に興味深いです。オススメです。

で、中国は最終的には漢字を廃しローマ字+四声記号の表記にするため、先ず繁体字を簡体字にしたのですが。けっきょく、漢字自体を廃止することはできず、簡体字のままズルズルときているわけで。廃止して弊害が起きた韓国、廃止しようとしてできずに中途半端な所にいる中国。ちなみに日本も新字というアホな簡略化と常用漢字というバカな制限で、失われてしまったモノは多いです。韓国を笑ってられない。

例えば〝世論〟という言葉。これは「よろん」か「せろん」か、読みを迷う人もいますが。これは「よろん」が正解。元々は〝輿論〟だったのに、輿が常用漢字でないため、世論に置き換えた結果。輿は神輿みこしの意味で、大衆が担ぐ象徴としての神輿のように、大衆の最大公約数の意見を神輿見立てていて、実に奥深い言葉です。これが、常用漢字というバカな制限で、失われてしまったのです。韓国で起きてるのは、コレの大規模版と言えます。

シュナムル尊師がこういう議論を検討して、冒頭に引用したようなツイートをしてるとは、とても思えません。自称京大卒が半端な知識でツッコむには、福田恆存のような本物の知性が、何十年も前に理路整然と正字体と新字体や仮名の問題を論じているのですから、そりゃあ総攻撃を受けるでしょう。まぁ、理系だからしょうがないとは思いますが、その理系の学歴も疑わしいようですが。

オマケ。内容の判定は各自でどうぞm(_ _)m

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■追記:尊師の正体■

シュナムル尊師から、いつの間にかブロックされていたんですが、このnoteが原因でしょうね。勝てない相手とは喧嘩しない、賢明な判断です。しかし、シュナムル尊師がアカウントを消した今となっては、味わい深いですね。この時点で、暇な空白氏の考察は鋭く、そこからさらに考察を重ねて、尊師の矛盾点を暴いてしまったのですから。まぁ、どうせ別垢でコソコソ活動するんでしょうけれど(すでにしてるという噂もあります)。

でも、なうちゃん尊師のようにまたすぐ特定されて、今度こそ逃亡でしょうね。けっきょく、ツイッターでバズっても、そこから本を出したり文筆に行ける人と、そうでない人には決定的な差があって。それはフォロワー数やイイネの数ではないんですよね。承認欲求なんて、有吉弘行氏の言うように「バカに見つかること」ぐらいに思っていないと。まぁ、シュナムル尊師の場合は、頭のいい人に見つかったんで、身の破滅になったんですが。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ