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映画感想:岬のマヨイガ

◉9月1日が映画の日だったので、予備知識無しでハシゴするのに時間帯が合う作品ということで選んだんですが、良かったです。これは、完全に自分好みの作品。確認したら『のんのんびより』シリーズの川面真也監督に、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズの吉田玲子脚本。そりゃあ、好みど真ん中ですわ。岩手県を舞台に、現実とファンタジーが交錯する。東日本大震災から10年、ようやくこういう作品が描けるほどに、時間が経過したのでしょう。

岬のマヨイガ

児童文学作家・柏葉幸子が東北の民話を盛り込みながらつづった同名ファンタジー小説をアニメーション映画化。ある事情から家を出た17歳のユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳のひより。それぞれ居場所を失った2人は、不思議なおばあちゃん、キワさんと出会い、岬に建つ古民家「マヨイガ」で暮らすことに。そこは“訪れた人をもてなす”という、岩手県に伝わる伝説の家だった。マヨイガとキワさんの温もりに触れ、2人の傷ついた心は次第に解きほぐされていく。そんなある日、「ふしぎっと」と呼ばれる優しい妖怪たちがキワさんを訪ねてマヨイガにやって来る。主人公ユイの声を芦田愛菜が演じる。アニメ「のんのんびより」シリーズの川面真也が監督を務め、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの吉田玲子が脚本を担当。

事前情報を入れずに見に行った方が、意外な驚きが多くて良いですね。なので、未見の人はこのnoteは読まない方がいいです。

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■多様性が雑味にならない■

先にも書いた『竜とそばかすの姫』の児童虐待が唐突な感じがしたのとか、『アーヤと魔女』が大きな盛り上がりがないまま終わってしまった感じがあるのに対して、本作は親子関係の問題とか、きちんと描かれていて、それが作品の背骨にあるわけで。盛り上がり的にも、きちんとバトルアクションを入れてきましたしね。まぁ、たっぷりというわけではないですが。そこは日常を描くのが上手い監督ですから。

先日のnoteでも書きましたがマヨイガとは、『日本昔ばなし』の中でも取り上げられていました。作品としては、割と童話『ヘンデルとグレーテル』や『北斗の拳』やら劇場版『若おかみは小学生』やら、いろんな要素が入っている作品だと思います。原作小説は未読なので、どこまでがアニメオリジナルなのか、解りませんが。本作はそういう意味で、自分が大好きだった民話のいろんな部分──『不思議なコマ犬』などの要素とか、混じっていたようにも思います。

■日本文化の根っ子の部分■

そういう、もうひとつ似た話を思い出して検索したら、『地獄穴の話』という怖ろしげなタイトルの作品でした。それは、北海道に伝わる桃源郷譚のひとつですが。北海道のシリパ山の崎に穴があり、それが死者の国と繋がっているという内容で、その洞窟はオマンルパロ(あの世への入り口)と呼ばれているとか。北海道には、こういうタイプのお話が多いようですが、桃源郷ではなく黄泉の国というのが、日本神話の黄泉比良坂を思わせます。

本作は、その意味では細田守監督の『サマーウォーズ』の、女系による継承的な要素も入っていて、それは新海誠監督の『君の名は。』の、要素でもあるのですが。新海誠監督は神道の〝むすび〟という概念がベースになっているんですが。それ自体、女系天皇議論の現代の反映とは思いませんが。えにしと呼ばれるモノが、日本の文化や思考の中に、深くあるのは事実。縁を結び、縁を切る物語。

■続編やスピンアウトにも期待■

そういう、多様な要素はありますが。ではそれらが、ツギハギのごった煮かと言えば、ちゃんと1本の筋になっていますから。さすが、川面真也監督に吉田玲子脚本です。こういう状況で、映画館にも頻繁に行けない状況なんですが、もう何回かはリピートしたいですね。この世界のまま、テレビシリーズも作って欲しいですけどね。岩手の、人間と妖怪の共存する、ふしぎに懐かしい世界で。ぜひ検討をお願いしますm(_ _)m

加えて声優陣は、主演の芦田愛菜さんはもちろん、『漁港の肉子ちゃん』に続き、大竹しのぶさんが途中まで気付かせない圧倒的演技力。いやぁ、やはり声優である前に俳優たれと、野沢那智さんが語っておられたように。舞台もこなす俳優は、さすがですね。声優以外の〝旬のアイドル声優初挑戦〟みたいなのは、萎えることが多いのですが。『もののけ姫』の美輪明宏さんや森繁久彌さんのような、ベテランの適役は、ぜひと思いました。

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