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次期戦闘機は英国主導

◉日英伊の三カ国による、次期戦闘機開発ですが。実質は、イギリスのテンペスト計画に、日本とイタリアが乗っかった、という感じでしょうね。残念ながら、第二次大戦の敗戦で一度は滅びた日本の航空産業と違って、イギリスはスピットファイア後もずっと、戦闘機を独自開発していましたから。トーネードやユーロタイフーンとか。自分のイメージ的には、BAe ハリアー IIですが。航空産業も、ロールス・ロイス社が世界的なエンジン企業で、民間機用の超大型エンジンまで開発していますしね。日本とは、経験値が違います。

【次期戦闘機はやっぱり英主導か 日本より「技術的に勝っている」? ただトップは日本人に】ECナビ

日英伊の3国共同となる次期戦闘機の開発をめぐり、発注を行う共同研究機関が設けられること、その本部は英国に置かれることが報じられています。「わが国主導」を閣議決定した日本ですが、技術的に差があると見られているようです。

日英伊のGCAP「イギリス企業が日本企業より技術的に勝っている部分が多い」
 日本とイギリス、イタリアの3か国が共同で進める次期戦闘機の開発計画「GCAP」(Grobal Combat Air Programme/グローバル戦闘航空プログラム)が、少しずつ具体化へ近づいているのかもしれません。2023年9月26日付の読売新聞は日本政府関係者の話として、3か国が2025年秋を目標に、新戦闘機の機体に求められる要求項目などを策定し、その設計や製造などを担うJV(共同企業体)へ発注することなどを目的とする“共同開発機関”を発足させるための話し合いが行われていると報じました。

https://ecnavi.jp/mainichi_news/article/168306218fb184a2f406d2720a07faed/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、

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■日本の実力は…■

自分は保守派ですが、国粋主義者は大嫌いなので。特に、石原慎太郎氏的な妄想で、F-2戦闘機は日本の単独開発で素晴らしい戦闘機が作れたのに、アメリカの横槍で共同開発を呑まされ、日本の技術を奪われた云々の妄想には、付き合う気がありません。三菱のMRJの悲惨な末路を見れば明らかなように、日本の技術はアメリカに及ぶべくもなく。そういう、夜郎自大な思い込みとは、付き合う気がないです。アメリカの莫大な軍事費と、恵まれた研究環境、毎年ノーベル賞学者を堕す圧倒的な基礎体力の差、今までの蓄積を考えれば、そういう妄想が湧く余地はないです。

日本とアメリカでは、その差は大きく。アメリカ的には、ライセンス生産まで認めたF-2のリターンとして、技術を要求したに過ぎません。現実的に、F-22のエンジンに、ようやく追いついた程度で、1990年試作機初飛行の運用開始が2005年の機種に、ようやくエンジンが追いついただけで。日本が、独自技術だけでいま現在、F-22に匹敵する機種を作れるか? F-2は初飛行が1995年で、運用開始が2000年ですから。日米の差は20年どころでなく、開いてるわけで。いわんや、90年代とかもっと酷かったのですから。

HondaJetとか、エンジンはアメリカの老舗GE社と共同開発という形で、無理に純国産の設計とか開発に拘らず、名より実を取った面が。その結果、GE社のノウハウとか学んで、着実に実績を上げ、新機種開発に歩を進めています。アメリカの連邦航空局 (FAA)の認証も、すんなり取れて。逆に、三菱のMRJはそこがノウハウがなく、結局は迷走に迷走を重ねて、開発断念。石原慎太郎氏に、夜郎自大なことを吹き込んだのは、三菱の関係者じゃないかと、自分が疑う部分です。

■時代は共同開発■

現在も、アメリカはもちろん、フランスやイギリスの独自戦闘機を開発している国から比べれば、ノウハウも実績もまだまだ。そういう現実を認めて、一歩ずつ着実にステップアップしていくしかないですからね。そういう意味では、主力戦闘機ではなく、昔の支援戦闘機の役割の機種から、まずは造ると。だいたい、単独開発ってダメなんですよね。農林族議員の「米は一粒も入れさせない」と同じで、日頃から余裕があっても輸入しておかないと、1993年のような米不足のとき、緊急輸入が難しかったように。

 BAEシステムズやロールス・ロイスなどの企業や研究機関がテンペストの開発のために結成した「チーム・テンペスト」は、イギリス政府の要求を充たすべく、出来る限り紙の図面を使用せずにコンピュータ上で設計作業を行い、試験も可能な限り現実世界とコンピュータ上の仮想空間を融合させた「XR」(Extended reality/拡張現実)におけるシミュレーションで行う「デジタルエンジニアリング」を活用し、既存の戦闘機よりも製造行程を自動化する方針を明確にしていました。

同上

でも、共同開発しておけば、部品や兵装の流通とか、有利になりますしね。愚かな国粋主義のちっぽけなプライドを満たすためではなく、日本の安全保障を考えたら、共同開発は必然。というか、世界の軍事費の半分を占めるアメリカでさえ、単独開発は難しいのですから。であるならば、第2グループに入れてもらい、支援戦闘機の方でまずは、実績を作って。第六世代戦闘機開発で、アメリカと協力して共同開発のメンバーに加われる、そういうステップを目指すべきでしょうね。護衛艦のいずもを空母と呼んだり、次は空母保有とか、一足飛びの変化を望むのは、ただの愚策かと。

下記のnoteでもちょっと触れましたが、けっきょくは戦争は数ということであり、ドズル・ザビ中将の言うことは、正しかったわけで。ただ、日本やイギリスは四方を海に囲まれた島国で、イタリアは三方を海で囲まれた半島国家です。そういう特殊な地理条件に見合った防御や、戦争のやり方があるわけで。であるならば、アリに学んで日本やイギリスやイタリアに見合った戦闘機───双発機で、航続距離が長く、機動性が高いという、ゼロ戦のコンセプトに近い何か。

■日本の基礎体力■

戦闘機は、高性能だが高価な主力戦闘機と、性能は劣るが安価な支援戦闘機の組み合わせが、昔は基本でした。これをハイローミックス戦略と呼びますが。今はだいぶ、崩れて入るのですが、それでもアメリカはF-22とF-35の組み合わせを、日本はF-15とF-2の組み合わせで、運用していますから。日本は、F-35とペアになる次期戦闘機F-3で、しばらくは運用していく形になるでしょうし。F-35はもう、明記になるのが決定していますし、これから改良を加えながら、50年は運用されるでしょうね。

 前出の読売新聞の記事は、「日本国内で機体を組み立てるには大型の施設を整備する必要があり、政府は、国内の生産体制の検討も急ぐ方針」であると報じていますが、単に大型の施設というだけでなく、デジタルエンジニアリングや3Dプリンター製部品の活用など、これまでの国産航空機とはまったく異なる思想に基づいた生産施設と体制を構築する必要があると思いますし、それらの技術では確実に日本(とイタリア)をリードしている企業の多いイギリスに新戦闘機の共同開発期間の本部を置くことは合理的であると筆者は思います。

同上

国内の生産体制や整備体制も、整えていかないと。韓国とか、国内でF-35の整備ができませんからね。それでは、ダメですしね。日本は南北に長く、整備拠点は複数必要ですし。そういう基礎体力を無視して、軍事を語ってもしょうがないですしね。ビグ・ザム1機では戦局は変わりませんから。あるてどの機種を、ある程度の値段で、ある程度の数量産できて、ようやく戦力になり得るのであって。そのためには、整備体制とか、部品調達とか、兵装の精算とかも含めて、総合的な力が必要。

そこを無視すると「われわれが特攻で2000万人の命を犠牲にする覚悟を決めるならば、勝利はわれわれのものとなるはずです」とかいい出す羽目に。どうやって、2000万人分の特攻を行う木ですかね? 飛行機もなく、回天のような潜航艇もなく、身体にダイナマイトでも巻き付けて、米兵に抱きつきますかね? んなことやっても、あと原子爆弾を主要都市に10発も落とせば、数百万人が亡くなって、2000万人の数も揃わないでしょう。アメリカの巨大な生産力は、戦争になれば毎週小型空母を作れるほどでしたし、そういうところも含めての国力です。

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