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第10回太平洋・島サミット(PALM10)の成果

◉この太平洋・島サミットも、マスコミはあまり力を入れて報じませんでしたが。海洋進出を目論む対中国包囲網という点でも、またALPS処理済み水の海洋放出に対する中国と韓国野党の政治的な動きに対する、カウンターとしても成果があったんですが――。

【「太平洋・島サミット」首脳宣言 “力による現状変更に反対”】NHKニュース

日本と南太平洋の島しょ国などによる「太平洋・島サミット」は首脳宣言を採択して閉幕しました。気候変動など共通の課題に協力して取り組むことに加え、中国の海洋進出などを念頭に、力による一方的な現状変更の試みに強く反対することが明記されました。

南太平洋の18の国と地域の首脳らを東京に招いて開かれた「太平洋・島サミット」は、最終日の18日に首脳らによる討議が行われ、首脳宣言を採択して閉幕しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240718/k10014515251000.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、太平洋のGoogleマップです。

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■対中国封じ込め策■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。この、対中国封じ込め、というのを理解できていない人が、𝕏(ペケッター)にはちょいちょい現れますが。別に中国が、国際的なルールや妥当性のある形で、海洋進出してくるのなら、日本はもちろんアメリカも、ウェルカムでしょう。力を背景にした現状変更を強行するなら、それは封じ込めるけれども、真っ当な手法で来るなら、それは制限するものではなく。ここらへんは、鉄血宰相ビスマルクの、対フランス封じ込め政策を考えれば、多少は理解できるのではないかと。

また、海洋進出の動きを強める中国なども念頭に、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の重要性や、力による一方的な現状変更の試みに強く反対することが明記されました。

フランスによって、小領主の連合体だったドイツは、ちょうど藩王が各地を支配していたインドや、独立性の高い藩が各地を支配していた幕藩体制に近いです。そこに、フランス革命を経て国民国家に生まれ変わったフランスに攻撃され、その危機感から国民国家に生まれ変わったのですが。ビスマルクは、フランスとロシアが手を結んで、ドイツを挟撃するのが怖かった。兵法の基本、遠交近攻の策ですね。だから、ビスマルクはロシアとオーストリアの対立 に目をつけ、三帝同盟を結んでフランスを孤立させる。要は、ドイツにチョッカイを出さないように、牽制するのが目的。

■政治的手段の延長■

国と国の関係を、上下とか属国と宗主国とか、戦争で勝つか負けるかとかしか捉えられない、稚拙な国際政治観は、戦後教育とマスコミが生んでしまった部分ですが。要は、ロシア連邦のように、力による現状変更をあからさまにやるのは、ダメってことで。孫子も「兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。」と断言しています。戦争は国力をものすごく消耗するので、迂闊な軍事行動を戒めているんです。「百戦百勝は善の善なる者に非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。」と喝破しています。

一方、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐっては、安全基準に合致しているとしたIAEA=国際原子力機関の報告書を踏まえ、科学的根拠に基づいて対応することが重要だという認識で一致しました。

今回、日本を含め19か国の首脳等が参加した島サミットですが。参加国は日本・オーストラリア・クック諸島・ミクロネシア・フィジー・仏領ポリネシア・キリバス・ナウル・ニューカレドニア・ニュージーランド・ニウエ・パラオ・パプアニューギニア・マーシャル諸島・サモア・ソロモン諸島・トンガ・ツバル・バヌアツの各国。中には、中国と関係が深い国もあるのですが、そこを引き入れて力による一方的な現状変更の試みに強く反対することが明記され、さらに処理済み水の海洋放出も、認識が一致。これが国際政治であり、ドンパチは政治の延長に過ぎないのですが、わからん人が多くて。

■女系の島サミット■

日本……というか中華文明の影響が強い東アジアでは、政治は男性主導で女声は関わらせない部分がありますが。欧米の文化だと、国家元首の夫人は、重要な政治的パートナーであり、外交の一端を担う部分があります。そういう意味では、岸田首相夫人の裕子さんのこの、配偶者のおもてなしは、国際政治的には妙手。政治とは畢竟、人間がやること。こうやって、日本文化を紹介し、文化的なアピールや物品のアピールをするのもまた、重要な役割。ところで、この太平洋の島の多くは、ポリネシア系の文化なんですよね。ポリネシア系の文化って、女系文化なんですよね。

【「太平洋・島サミット」岸田裕子夫人が夫人外交で各国首脳の配偶者をおもてなし】日テレNEWS

「太平洋・島サミット」の最終日となった18日、岸田首相夫人の裕子さんが各国首脳の配偶者を「おもてなし」しました。
(中略)
主催した裕子夫人は「今回のプログラムを通じて、皆様との友情が深まれば」と挨拶しました。プログラムで参加者は、漆で絵や文様を描き、金粉などを付ける日本の伝統工芸、蒔絵(まきえ)を体験しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/862cadeb422b9002476359a9a8b4d163a8aa39cd

女系文化は、女性が財産権を握っていて、遺産は相続される部分があります。日本にもこの影響は強く残っていて、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤヒメ)と石長比売(イワナガヒメ)の神話も、女系相続の文化の影響ではないか、という指摘もあります。そういう意味では、この〝おもてなし〟は、女性の側の政治力の連帯という点で、良い方法論。日本の文化とポリネシア系文化は通底しますから、馴染みやすい部分もあるでしょうね。バイデン大統領に、輪島塗のコーヒーカップを贈ったり、岸田総理は商売人としても、なかなかに優秀です。

■被災地への心配り■

蒔絵は、言うまでもなく輪島塗の重要な技法のひとつ。記事では明言されていないですが、たぶん平成六年能登地震の被災地に寄り添った、心配りです。最後にもう一点、その被災地への寄り添いという点で、晩餐会のメニューは能登の名産をできるだけ使うという、これまた素晴らしい寄り添いです。もちろん、江戸前の握り寿司とかも定番として入っていますが、能登牛や打木の甘栗や加賀味噌など、もう意図は明らか。太平洋の要人の会合で、最大限アピールする。これ見よがしのアピールはしていませんが、素晴らしいです。

晩餐会メニュー、能登の食材てんこ盛りなのに…
こういうことが記事にならなくて残念

https://x.com/0210rinrinrin/status/1814303906840940877

思えば、日本の野党や左派マスコミや文化人は、福島についても政府批判の具にするばかりで、とても寄り添っているとは言えない態度を、取り続けています(現在進行系)。社民党の福島瑞穂党首と大椿裕子副党首とか、ほんと酷いもんですが。安倍晋三元総理は、福島の物産を積極的にアピールし、桃を食っちゃジューシーを連発し、英国首相まで一緒になってアピールして。けっきょく、日本の野党は批判ばかりで、そういう部分は薄く。たまにボランティアなんかやれば、やっぱり政府批判のためにする行為だったりで。

「第10回太平洋・島サミット(PALM10)」の成果です

https://x.com/kantei/status/1814133837242536249

個人的には、大筋でも細部でも、今回の島サミットは、大成功だったと思います。


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