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Apple M1チップの10年

◉AppleがApple Aシリーズを世に問うたのが、A4の2010年から。でも、たぶんプロトタイプのA1やらA2もあったんでしょうね。アメリカの企業は四半期ごとの決算に拘るというイメージがありますが、実際は10年以上かけて、こういう高性能のチップを独自設計して、ついには垂直統合の極みに至ったわけで。性能的には、圧倒的なんですが、そこに至るまでの長い道のり。

【「M1チップの高性能の追求は10年前から始まっていた」元アップルエンジニアが解説】Engadget Japanese

アップル独自開発のM1チップは高いパフォーマンスが証明され、インテルが株主に「即時行動」を求めるほど追い込まれる事態を作り出しています。
そうしたM1チップの高性能は、約10年前からアップルが積み上げてきた技術的な努力の賜物という説明を、元アップルのエンジニアが語っています。
元アップルのカーネルエンジニアであるShac Ron氏が語り始めたきっかけは、「M1チップの性能はArm(アーキテクチャ)のためじゃなく、キャッシュのおかげだよ」というツイートに対する反論でした。

元々Appleは、CPUには悩まされ続けました。HONDAのエンジンを積んだポルシェ、なんて自虐していた時代もありました。それが、PowerPCで未来が開けたと思ったら、今度はノート型の時代には低消費電力で低発熱で高性能が求められ、不倶戴天の敵であったIntelに移行したのが2005年。そう、Appleは、Intelに移行する時点で既に、自社設計のCPUに踏み出していたわけで。

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■ムダでも布石を打つApple■

シナリオとしては、2005年のIntel移行の段階で、Intelに移行するだけで良いのか、という検討はあったはずです。IBMだろうがIntelだろうがAMDであろうが、他社に金玉を握られてるのは同じ。であるならば、自社でCPUを作るのが、最適解。ただ、メーカーになるのはリスクも多いですから。そこで、設計だけして製造はメーカーに任せるという方式に。これなら、Appleの垂直統合には支障は少ないですし。

そもそもAppleは、最初のMacOS Xの頃からPowerPCにもIntel製のx86系にも対応できるように、研究だけはしていたんですよね。Appleのラボでx86系で動くMacを観たという風評は初期からありました。もともと、OS Xの元になったNeXT STEP自体が、プラットフォームに依存しないOSを目指していたので、当然なんですが。でも、無駄になるかもしれない研究も常に同時に進める。

薄っぺらい選択と集中理論では、こうはいきませんからね。けっきょく、M1チップの成功も、先ずはiPadから始めてiPhoneにというステップを踏み、最終的にはMacにも使えるという地平を目指したわけで。結果的に、とんでもない高性能で低消費電力低発熱のCPUになってしまったんですが。じっくりと10年以上かけて、つまりコレもスティーブ・ジョブズの先見の明なんでしょうね。

■次の一手にも期待■

ただ、ジョブズが稀代のゼネラリストであったことは間違いないですが、彼も技術的なことは専門家には敵わないわけで。その専門家の意見を聞いて、コレは伸び代があると見抜く力がスゴかった。まぁ、外したことも数多いんですが。そもそも、OS Xの元となったDarwinのフリーBSDも当初、問題のあるOSと研究者に指摘された記憶がありましたが、今となってはこれもジョブズの選択が正しかった訳で。

けっきょく、記事にあるように、ARM系のアーキテクチャも、64ビット対応で先んじる訳で。ジョブズが悪目立ちしていますが、倒産寸前のAppleが不死鳥のように復活できたのは、ジョブズがNeXT社から連れてきた技術者達。開発言語のswiftを開発したりと、地味ながらも相当にスゴい人材を抱えていたわけで。ただ、管仲と鮑淑牙の『管鮑の交わり』の故事ではないですが、優秀な人材も抜擢する人がいてこそ。

ジョブズが亡くなって、Appleももう終わりと言われましたが。ジョブズが追放されてた間も、Appleは魅力的な製品を作ってきたわけで。そこは、企業文化。ジョブズが去って後も、その遺伝子は息づき、M1チップで大輪の花を咲かしたと。そこが重要。Appleの次の垂直統合は、microLEDによるディスプレイの可能性が高そうです。まだまだ、Appleは楽しませてくれそうです。


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