見出し画像

中華文化と民主主義

◉毒をもって毒を制する……中華文明のある側面を表した言葉ではあります。やはり、太古より巨大な人 口を 抱え、広大な土地、複雑な地形……周辺には強力な異民族もおり、戦乱が絶えない国ですから。それを束ねようとしたら、強権を持って統制しないと難しい。つまり、中央集権制度と独裁制度。東アジア型専制君主国家=皇帝制度が、中華文明の本質と言えます。秦の始皇帝以来、2000年以上続く政治体制。それは民主主義とは相容れない面が多々あります。元記事が面白かったので、個人的な雑感をつらつら書いてみます。

【中国人が大好きな「悪いカリスマ」では、民主国家には変われない】Newsweek

<その巧みな話術で人々を惹きつける「自称・自由闘士」郭文貴は逃亡先のアメリカでも詐欺容疑で逮捕された。中国人が魅了される「毒をもって毒を制する」ことの限界とは?>

https://www.newsweekjapan.jp/satire_china/2023/03/post-95.php

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、天安門広場の写真ですね。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■皇帝と大統一幻想■

中華の歴史を見ると、どうやら南方系の民族と北方系の民族が、黄河の洛陽盆地の辺りで交易を始めて、これが初期の都市文明を生み出したようです。夏王朝は伝説であり、学問的にはその実在は証明されていませんが。河南省偃師県の翟鎮二里頭村で発見された二里頭遺跡が、夏王朝のモデルではないかとされます。しかし、夏王朝も実在が確かめられている殷王朝も、村落共同体の延長のような面はありますね。

有力な部族の連合国家のような側面があり、これは殷王朝を滅ぼした周王朝にしても同じ。中国は現在でも、山 ひとつ越すと言葉が通じないぐらいに、民族国家ですから。日本の20倍以上の国土面積ですから当然ですね。江戸時代の徳川将軍家と、藩のような関係と考えれば分かりやすいでしょうか。各藩は一種の独立国で、法律も違えば 組織も違う。独自の軍隊を持ち、藩札という形で独自の通貨さえ持っていましたからね。

この状況を変えたのが、春秋戦国時代の戦乱の世を経て、秦の始皇帝による全国統一です。秦は、史書を見る限りでは文化も風俗も異なる、異民族です。黄河流域の中原と呼ばれた地域から見れば、西戎と呼ばれた西方の蛮族。しかし法家思想を元に、強力な軍隊と大きな経済力、そして合理的なシステムを持って、中国を統一することに成功します。ある意味で、中華文明はずっとこの始皇帝を理想 モデルとし、皇帝 制度の呪縛にとらわれているとも言えます。

■民主主義と合議制■

国土面積的には中国とほぼ同じ アメリカが、50の州による連邦国家であるように。中国もまた、本来は何十個かの国に分割して統治すべき存在でした。ところが、始皇帝が全国統一を成し遂げ、中華文明とは伝説の黄帝から受け継がれた統治の正統性が、歴代皇帝に継承されてるという文明観・歴史観を持ってしまいました。なので、三国時代や五胡十六国時代、南北朝、五代十国時代など分裂の時代があっても、統一しようとする力が働きます。

韓国が、李氏朝鮮時代500年に回帰したがったり、日本人が 江戸時代に強い経宗の思いを持つように。中国人にとって 皇帝制度というのは2000年以上も続いた、生理的にしっくりくる文化なのでしょうね。しかし皇帝制度というのは一君万民の社会であり、常に対人関係を上下で測る社会です。ここら辺は、日本の文化にも強い影響を与えていて、日本人は無意識に相手を自分より上か下かを判断し、適切な敬語を使うことが求められます。

ただ、敵対する勢力は九族皆殺しの族誅が当たり前の大陸文化に比較して、小さな島国で徹底した殺し合いはできない 日本は「和を以て貴しとなす」の文化も、同時に発達した面があります。隋や唐の制度を真似て中央集権を志向しても、なかなかその形にはなりませんね。鎌倉幕府の評定衆は、源頼家の独裁政治を掣肘するために始まった、十三人の合議制が原型ですし、江戸幕府の老中も老中首座はいても、複数の人間が月番で政務を担当する合議制でした。

■独裁者を好む文化■

日本の場合は、江戸時代の惣村も合議制で、明治維新以降に急速に西欧の民主主義が浸透したのも、独裁者による専制を嫌う体質があります。日本の歴史を見ても、独裁的な政治を行おうとする人間は暗殺されたり、排除される傾向が顕著です。蘇我入鹿、平清盛、源頼家、足利義満、足利義教、細川政元、織田信長、大久保利通……ほとんどが暗殺か不審死を遂げていますね。江戸時代の殿様でも、家臣に押し込められた人は数知れず。

ジャッキー・チェン氏が、「自由になりすぎると、今の香港のようになってしまう。混沌としているのです。台湾も混沌としている……徐々に、中国人は規制や支配をされたほうがいいのではないかと考えるようになっています。コントロールされないと、何でもやりたいことをやってしまう」と発言し、批判されましたが。この発言 自体には中国人の本音が、かなり 含まれている面はあるでしょうね。アメリカとほぼ同じ国土面積でありながら、人口は4倍もある国ですから。

中国に民主化を促すならば、現在の共産党支配の体制を打破した上で、各地の言語に沿って13ぐらいの国に分割し、10年から20年ぐらいの占領統治期間をかけて、教育からやり直すしかないでしょうね。でも、日韓併合の足掛け36年でも、韓国の事大主義の文化は変わらなかったように。100年200年ぐらいのスパンをかけないと変わらないのでしょう。これは、日本人が1000年以上経っても 言霊信仰や穢れの意識を変えられないのと一緒です。

■言論の自由の意義■

ロシア連邦も、プーチン大統領を批判する人たちでも結局は、その手腕を評価してしまうように。帝政ロシアのピョートル大帝やエカチェリーナ2世、スターリンなど、文化的に独裁者を好む部分が濃厚にあるわけで。実際、優れた独裁者は、圧倒的なスピードで劇的に社会を変えてしまいますから。しかし同時に、独裁者はだいたい最後は破綻してしまいます。民主主義は、遅遅として改革が進まない弊害 もありますが、大失敗もし辛い面も。

ただそのためには、教育によって国民の民度を常に高めていく不断の努力が必要です。またそのためには、教育者が特定の主義主張宗教に絡め取られて、子供達の思想や人格に影響を与えてはいけません。マスコミニケーションが言論の自由を尊重し、言論統制には断固反対し、性格な情報を平等に大衆に伝える役目を果たさなければなりません。残念ながら日本もアメリカも、アカデミズムとマスコミに大きな歪みがありますが。

インターネットの出現によって、マスコミュニケーションによって抑え込まれてた言論が、かなり自由になった面はあります。ただ同時に非科学的な言説や、デマが拡散しやすくなった面もあります。しかしそれでも、昭和の閉塞感のある言論空間に比べれば、はるかにマシになったと自分は思います。中国ではまだまだ、言論の自由がかなり制限されていますが、珍論奇論が流れることではなく、それに理知的に反論できる環境が大事。万機公論に決すべし。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ