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宝田明さん急逝

◉ああ、世界に名を知られた俳優が、また一人……。なにしろ世界的には、初代ゴジラの出演者というだけで、「そりゃすごい」と映画人関係者に言われるそうですから。いわんや、宝田明さんは押しも押されぬ主役ですからね。志村喬さんや平田昭彦さん、大河内桃子さんに続いて、最後の一人が。昭和も遠くなりにけり、ですね。自分らの世代には、品のいい知的な役柄が多かった印象です。

【宝田明さん急逝、87歳 10日舞台あいさつに登壇も13日容体急変 映画「ゴジラ」など出演】日刊スポーツ

映画「ゴジラ」や、ミュージカルなどで知られる俳優宝田明(たからだ・あきら)さんが急逝したことが17日、分かった。87歳。1953年に芸能界入りして以来、さまざまな作品に出演した。今月10日には、映画「世の中にたえて桜のなかりせば」(三宅伸行監督、4月1日公開)の完成披露舞台あいさつに出席し、映画制作への飽くなき意欲を明かしていたばかりだった。

ヘッダーはWikipediaのフォトギャラリーより、初代ゴジラのポスターより。

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■初代ゴジラの主演■

初代ゴジラは三角関係を描いた、恋愛映画でもありました。平田昭彦さん演じる芹沢博士と、大河内桃子さん演じる元婚約者の山根恵美子と、宝田明さん演じる尾形秀人の、三角関係。怪獣映画の金字塔でありましたが、多様な要素を含んでいましたからね。ゴジラファイナルウォーズで、宝田明さんと大河内桃子さんが出演されていたのは、初代ゴジラに間に合わなかった世代としては、嬉しかったですねぇ。

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年齢的には大抜擢に近かったのでしょうけれど。これ一足で世界的な俳優に。山根博士薬王、映画で知られるこれまた世界的な俳優である志村隆さんが演じられていて。訃報が世界的に報じられるような名優となると、もう仲代達矢さんが最後ぐらいでしょうかね。志村喬さんはニューヨークタイムズをして「世界一の俳優」と評されましたが。『七人の侍』と『ゴジラ』が同じ1954年に公開されたのは、偶然ではありません。

■万能型トップ俳優■

宝田さんは満州から帰ってきた過去もあります。それどころか、ロシア兵に銃で撃たれてそれが肩に残り、摘出された弾丸が、ダムダム弾であったと。また、日ソ不可侵条約を一方的に反故にして満州に攻め込んできたソ連兵による日本人女性への強姦も目撃したため、ソ連に対しては終生批判的であったとか。チン大統領によるウクライナ侵攻のこのタイミングで、急逝されたのもなにかの縁でしょうか……。

俳優としての宝田明さんは、二枚目で身長も高く、後にミュージカルなどの舞台でも活躍されるように、歌も上手く。70年代から80年代はミュージカルの方に力を入れておられたので、田舎者の自分には残念ながらその舞台を見る機会はありませんでしたが。自分らの世代だと、90年代以降は、伊丹十三監督の映画で常連だった印象が強いですね。知的な雰囲気があったので、悪役でも知能犯の役柄もこなせ、コミカルな役もこなせた万能型の印象があります。

■作品を愛した俳優■

ゴジラに関しても、特撮映画をバカにする俳優も多かったですが、宝田さんはゴジラ他、出演された特撮映画をとても大切にしている旨の発言を、されていました。俳優として、こういう姿勢はとても大事だと思うんです。金のために仕方なく出演してました……みたいな発言を俳優にされると、その映画を見た感動が汚される気がするんですよ。特撮作品に、あえて出なくなったりする人もいますが。

でも、志村隆さんもそうでしたが、『生きる』のようなヒューマニズム溢れる作品にも主演すれば、『七人の侍』のようなアクション作品でも主役を張れる、『ゴジラ』でも存在感を示すのが、本当の名優だと思うんですよね。『ゴジラファイナルウォーズ』でのまばたきをしない演技とか、実に不気味でした。昭和のトップスターが、また一人。寂しいですね。レジェンダリーのゴジラにも、カメオ出演でもいいので顔を出して頂きたかったです。だってそれは文化を受け継ぐ儀式ですから。

宝田明さんのご冥福をお祈りいたします。合掌

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