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太陽光で高温を生み出す技術

◉ちょっと前のネタですが、興味深い内容でしたので、ご紹介。チューリッヒ工科大学が、太陽陽エネルギーを人工水晶に集約して、1000℃以上の高熱を得ることに成功したそうです。太陽光 自体は、トータルとして地球に降り注ぐエネルギー量は莫大なのですが、面積あたりのエネルギー密度は、決して高くないんですよね。だから、メガソーラーなんてものが必要になるのですが……1000度って凄いですね。

【もう化石燃料に頼らなくてすむかも。画期的な技術が開発中】ギズモード・ジャパン

スイスのチューリッヒ工科大学で画期的な技術が開発されつつあります。

科学誌『Device』に掲載された論文によれば、地球に降り注ぐ太陽エネルギー135個分(*)を人工水晶に注ぎこんで、1000℃以上まで熱することに成功したそう。

なぜ画期的って、ガラス・鉄・セメント・セラミックなど、現代文明を支えているさまざまな資材を製造するのには1000℃以上の熱が必要なんです。しかし、これまでの技術では太陽熱を反射鏡などを使って集めたとしてもそこまで温度を上げられなかったため、モノをつくるための材料を得るにはどうしても化石燃料を燃やすしかありませんでした。

しかし、この新技術をもってなら、未来の産業プロセスをグリーンに変えていける可能性があります。はたして脱炭素化への大きな一歩となるでしょうか?

https://www.gizmodo.jp/2024/06/extreme-heat-solar-energy-clean-energy-solution.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■製鉄可能な高温■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。ちなみに、鉄の融点は1538度(1811K)ですから、製鉄ができます。鉄鉱石から鉄を作る時には、400度から800度もあれば、充分なので。高炉製鉄では2000度以上の超高熱で、融点まで持っていき、鉄鉱石に含まれる酸素を取り除きますが。木炭を使った、昔ながらの「たたら製鉄」だと、1200度前後でも砂鉄から鉄(玉鋼や包丁鉄)が作れるんですね。

いざ水晶の外側から、地球に降り注ぐ太陽エネルギー135個分と同等のエネルギーを放射したところ、水晶の表面は温度が450℃までしか上がらなかったのに対し、一番奥にあるシリコンの円盤は1050℃まで上がりました

原理はよく分かりませんが、太陽光でそこまで高熱が発生するとは、驚きですね。マグネシウム循環社会の話題で一時期、話題になった太陽光励起レーザーは、太陽光を集約して1000度になるそうですが。太陽光と水晶という、地球上でありふれたもので、ここまで高温になるというのは、確かに画期的です。記事にもあるように、製鉄以外でも高温を必要とする作業は多く、大規模化できれば、それこそ海水の炭水化にも、応用できそうです。

■海水の淡水化にも■

反原発やエコロジー思想をこじらせて、ベースロード電源になり得ない太陽光発電に、よくわからないまま過剰な期待をし、結果的に樹木を切り倒してまでメガソーラーを敷き詰め環境破壊を肯定してしまっている人々を、自分は支持しません。こういう技科学術や発見、発明を専門家でもないのに紹介するのは、少しでも考えるヒントにしたいからという点があります。note的にはあまり人気はないですが、アクセス数のためにやっているわけでもありませんからね。

カサティ教授は「我々の研究により、サーマルトラップ効果は低温度だけでなく1000℃以上の高温でも有効なことが実証されました。今後この技術が社会実装していける可能性を示すのにとても重要でした」とも話しています。

マグネシウム循環社会の話題は、すっかり聞かなくなってしまいましたが、太陽光励起レーザーの可能性には期待していますし、この研究も製鉄 だけではなく、海水の炭水化プラントや、石炭の液化、水素の生成などにも応用できるのではないかと、期待しています。というかむしろ そちらの方が本命ではないかとさえ思っています。それには理由があります。

■高温ガス炉と合せ技■

前々から、しつこく書いていますが。より安全性が高い 第四世代原子炉の、研究開発が進んでいます。その中でも、有望なのが高温ガス炉。中国では一昨年、商用実証炉が臨界に達しましたし、アメリカやイギリスでは2029年の商用炉の稼働を、目標に置いています。日本でも、アニメ『ガールズ&パンツァー』で知られる茨城県大洗町のHTTRが、順調に研究が進んでいました(無能な方の菅元総理のせいで10年間も停まってしまいましたが)。この、高温が大事です。

 地球温暖化対策が叫ばれるなか、あらためて高温ガス炉が注目されています。これは、高温ガス炉技術が、その優れた安全性と、水素製造をはじめとする950℃を超える高温熱の活用により、カーボンニュートラルに貢献することを期待されているからです。

https://www.jaea.go.jp/04/sefard/ordinary/2022/20220331.html

そう、高温ガス炉は950度以上の超高温が出るため、これを利用しての原子力製鉄や、石炭の液化、そして水素の生成などに利用が期待されています。チューリッヒ大学の今回の研究は、それと同じぐらいの高温が出るわけですから、研究や技術や装置の流用などが、期待できるかもしれません。エネルギー問題は、核融合発電さえ達成できれば万事解決……とは行かないものですから。

5年後に実用化するのか 30年後に実用するかするのか、わからない核融合発電よりも、具体的な運用目標が設定されている高温ガス炉の方が、現実的ですからね。で、チューリッヒ大学の研究をうまく応用できれば、石炭の液化や水素生成など、火力発電に重要な燃料の生産が可能になりますから。自分はむしろ、そちらの可能性の方に、驚きと興奮を覚えました。今後の技術検証に期待したいです。


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