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洋上風力発電、600億円のムダ

福島県沖の、洋上風力発電施設が、撤去の方針だそうです。600億円の巨費を投じて、この結果。でも、こんなの最初から解っていたでしょうに。偏西風が安定して吹くヨーロッパ、特に北欧ならともかく、日本で風力発電の好適地は北海道の一部ぐらいです。それ以外の地域は、台風が直撃する日本で、風力発電は厳しいです。日本だと、よほど大型で勢力の強い台風でないと、北海道まで上陸することは稀ですね。

【福島の洋上風力発電、全撤退へ 600億投じ採算見込めず】
共同通信

政府が、福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設を全て撤去する方針を固めたことが12日、関係者への取材で分かった。東京電力福島第1原発事故からの復興の象徴と位置付けて計約600億円を投じた事業で、民間への譲渡を模索していたが、採算が見込めないと判断した。経済産業省は、来年度予算の概算要求に撤去関連費50億円を盛り込んだ。再生可能エネルギー関連の産業を推進する福島県にも痛手となりそうだ。

逆に言えば、日本は沖縄から東北まで、多くが台風銀座と呼ばれる地域です。風力発電はそもそも、亜熱帯から亜寒帯の南北に長い島国に日本では、向いていない発電なんです。南仏ニースなんて言うと、温暖なイメージがありますが。ニースの緯度は北緯43度、札幌市と同じぐらいの位置です。ドイツの首都ベルリンに至っては、北樺太と同じぐらいです。ヨーロッパを持ち出して風力発電を論じるのは、前提が違いすぎます。

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■再生可能エネルギーの問題点■

そもそも、再生可能エネルギーの多くは、現時点では代替エネルギーにはならないです。水力発電はもう場所が限られていて、大規模に増やせない。琵琶湖の7.5倍のアスワン・ハイダムの発電力が泊原発と大差ないのですから。太陽光や風力発電は安定しない。地熱発電や潮汐力発電、海洋温度差発電は安定するけれど場所が限定される。波力は出力が小さい。どれも一長一短で、でも火力発電や原子力発電の代替には遠く及びません。

・水力発電
・太陽光発電
・太陽熱発電
・風力発電
・地熱発電
・波力発電
・海流発電
・潮汐力発電
・海洋温度差発電
・バイオマス(エタノール・メタンなども含む)
・アンモニア火力発電

けっきょく、ヒステリックな反原発運動によって、無駄に600億円もの巨費が投じられた訳で。いや、「ほらほら、こんなに巨額を投資しても、風力発電は現状の日本では、難しいでしょ?」と、言い訳するためのアリバイ作りだったのかもしれません。ひょっとしたら、素材開発による強度のアップなどで、風車の強度が上がるかも知れませんが、現状では無理。これは太陽光発電の素材開発でも同じですが。

■「東京に原発を!」の無知■

では、何が可能性があるかと言えば、実は原子力発電です。こう書くと反原発派は、ヒステリックに喚き散らすでしょうけれど。第四世代原子炉の研究は、かなり進んでいます。冷却材に冷却水を使わず、ヘリウムや溶融塩が使われ、メルトダウンが起きづらい構造になっています。第二世代や第三世代の原子炉は、固い岩盤と冷却水が必須でした。コンクリートと鉄の塊の原子炉は、古くて硬い岩盤の上に建築されています。

福島や福井、泊、愛媛、玄海、川内などの原子力発電所が、恐竜化石や貝化石の名産地の近くなのは、理由があるのです。だいたい、第三紀以上の古い岩盤があることが望ましいそうですが。勉強不足の反原発派は、貧しい地域に原発を押し付けていると言いますが。実際は、そんな岩盤がある地域は、農耕にも林業にも向かず、海岸は切り立った崖で漁港としても難しく、貧しい地域であるのは必然です。

これが理解できれば、反原発派の「東京に原発を!」という皮肉を効かせたつもりのスローガンのバカバカしさも、理解できるでしょう。火山灰や河野土砂などが堆積した沖積平野で、何百メートルも掘らないと岩盤にぶち当たらない関東平野には、そもそも原発は難しいのです。地中にパイルを大量に打ち込めば、できないことはないそうですが、費用対効果として無意味、予算オーバー。ところが、第四世代原子炉は違います。

■超高温ガス炉が本命か?■

なぜなら、冷却材に水を使わないため、福島原発事故のような水蒸気爆発が起きにくいのです。ただし、現在の原発に比較して、大型化が困難なので、現在の原発の3分の1から4分の1程度の出力だそうで。ただ、固い岩盤と冷却水が不要。反原発派の念願の、東京に原発が実現するかも、です。出力が低いぶん、複数の場所に設置できますから、むしろ停止による電力供給ストップのリスク分散のためには有効。

極端な話、砂漠でも設置できますし、大型のトレーラーに乗せて、移動型の原子力発電所も可能。現在は、高温ガス炉と呼ばれるタイプが、もっとも開発が進んでおり、中国は来年には実証炉を稼働するレベル。洋上風力発電に600億円もの巨費をぶち込むぐらいなら、第四世代原子炉開発に回していれば……とは思います。ちゃんと科学的に説得する努力を放棄した結果が、600億円のムダ。まぁ、反原発派は聞く耳は持ちませんが。

日本の高温ガス炉は中国のそれよりも高温が出せ、コレを利用しての熱化学水素生成や、製鉄などにも応用できる、とても応用範囲が広い原子炉です。反原発派は技術が今のまま止まっているという錯覚を持ちがちですが、技術は日進月歩です。地球温暖化などを言うなら、エコロジカルなのは原子力発電というのは、日本以外の環境活動家は普通に出る意見なんですけどね。日本では罵声を浴びせられるので、口にできませんが。

■アンモニア火力発電の可能性■

もうひとつ、興味深い発電を。それが、身近なアンモニアを使った発電。アンモニアって燃えるのかいなと思ったんですが、意外と燃えるんですね。ただ、安定した状態で燃やす保炎範囲が狭いんだそうで。ここら辺の研究は進んでいて、NHKの科学番組『サイエンスゼロ』でも特集されていましたが。アンモニアだけでなく、石炭といっしょに燃やしたり、補助的な燃料としての使い方もあるようで。

さらに、アンモニアの生成方法は、100年前に開発されたハーバー・ボッシュ法(HB法)が今も主流なんですが、コレを安価に生成できれば、一気に発電の燃料として躍り出てくるわけです。アンモニア自体は紀元前から知られ、現在も肥料などに使われる、非常に身近な存在だったのですが。東大の研究チームの論文が、科学誌ネイチャーに去年発表され、けっこう話題になりました。

さらに下記の記事のように、安価な触媒の開発など、東工大などでの研究も進んでいます。第四世代原子炉は高温ガス炉以外はまだまだ時間が掛かりますし、実証炉が稼働すれば、想定外の問題も見つかるでしょう。その点で、すでに知られた存在になっているアンモニアなら、あんがい補助的な発電用燃焼物質から、メインの燃焼物質になるのもスムーズかもしれません。そう考えると、意外なところから本命出現というか。

いずれにしろ、2011年当時の反原発派の狂乱も、少しは収まりましたし。もうちょっと冷静に考えてほしいものです。年端もいかない少女に大人の位相を吹き込んで、攻撃的な言動をさせ、それを左派マスコミが賞賛しても、現実は1ミリも変わりません。安易な物質文明否定も、ただの思考停止、思考放棄です。もう200年前には戻れません。科学文明を克服するにもまた、科学。科学に基づいた議論が不可欠です。
どっとはらい

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