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鈴木邦男氏死去

◉新右翼の、代表的な人物でした。福岡での浪人時代、鹿児島の田舎では絶対に本屋にないエスエル出版会の本で出会い、大学時代はけっこう読んでいました。と言っても思想的な本ではなく、プロレスや格闘技関係の本でした。ご自身もソビエト連邦の格闘技であるサンボをたしなまれ、ソビエトまでわざわざ練習に行かれたりされており。その体験を綴った本やエッセイは、とても楽しく読ませていただきました。

三島由紀夫の割腹自殺に衝撃を受け、その精神を継承するために作られたのが一水会でした。第一水曜日の勉強会から一水会と名がついたのですが、「世界は海洋を通じて一衣帯水である」という意味もあると。ご本人は、人気ドラマ『太陽にほえろ』で竜雷太さんが演じた石塚誠刑事役のゴリさんに似ていたので、一部の人にはゴリさんと呼ばれていました。格闘技会場にもよく出現されておられたので、挨拶をすると気さくに返してくださる方でした。

大学時代の友人は一水会に短期間だけ籍を置いていましたが、自分はこのnoteやTwitterで何度も書いてるように、保守派であっても右翼ではないという自己認識ですので。一水会の思想に共感することはありませんでしたが。自分が社会人になってからは、鈴木氏の思想もどんどん左傾化してしまった部分があります。元々がインテリですから、西部邁氏などと同じで、本質は左翼だったのかなと思う部分はあります。

大学時代のアルバイト先の引っ越し屋の社長は、後で知ったのですが、元々は右翼団体を率いていた人物で。でも手首まで刺青がありましたし、どちらかといえば思想系のヤクザという感じだったのでしょうか。山口乙矢の獄中自決に思うところあって、ヤクザや右翼を辞めた人間の受け皿として、引っ越し屋を始めて。大型の免許や牽引の免許を取らせて、自立させようとしていました。その社長は、インテリの新右翼とは距離がありましたね。

のりこえねっと共同代表など、近年の左傾化には疑問でしたから。そもそも新右翼という活動自体が、新左翼の出現によって生み出された鬼子だったのか? 河合塾の講師時代は、牧野剛氏とも仲が良かったそうなので。近年は三島由紀夫が再評価され、ソ連の後継国家であるロシア連邦がウクライナ侵攻をやらかし、憲法9条の欺瞞が国民にも共有され、安倍晋三元総理が暗殺された翌年に、新右翼の代表的人物が去るという。これも時代の節目なのでしょうね。

自分が大学の頃に、ベルリンの壁が崩れ、中国は天安門事件を起こし、ソビエト連邦が崩壊し。その頃鈴木邦男氏は、反響と言う目的を失った右翼団体は、穏やかな民族主義に移行して行くだろうと語っておられた記憶がありましたが。現実は違った訳で。平成の時代を超えて、令和の時代になってようやく、中露朝の崩壊の兆しが見え始めていますが。自分が生きてるうちにそれを見ることができるかどうかはわかりません。

日本思想史における新右翼の位置づけとか、ここら辺に関しては、戦後思想史をちゃんと研究された方が、そのうち本にされるかもしれないですし。かつては関係の深かった鹿砦社辺りから、追悼本なども出るかもしれないです。それを持ちたいです。北朝鮮や中国が崩壊した時、新右翼とその母体としての震災奥の時代も、終わるのかもしれません。それが戦後レジームからの脱却なのかどうかは、非才の身には予想できませんが。

個人的には、プロレスや格闘技のコラムニストとしての鈴木邦男さんは、好きな書き手でした。第2次 UWF ブームとその崩壊を、リアルタイムで言語化されていましたし。後に、FMWのノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチや、みちのくプロレスやDDTの楽しいプロレスを観戦して、鈴木さんがおっしゃっていた「夢格闘技、プロレス」という言葉が、現実になったなと思ったものです。その意味では、堀辺正史師範ともども、物書きとしての影響は大きいです。

鈴木邦男氏のご冥福をお祈りいたします。合掌

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