中尾彬さん急逝
◉昭和の名優が、また一人……。
俳優として、映画で最後に見たのが2019年の『翔んで埼玉』で、東京都知事の壇ノ浦建造役でしたか。やはり、貫禄があるので政治家やヤクザの親分などの役が、晩年は多かったですが。若い頃は、金田一耕助役も演じておられるんですよね(高林陽一監督版『本陣殺人事件』)。平成ゴジラシリーズでは、『ゴジラvsメカゴジラ』から『ゴジラ FINAL WARS』まで、司令官や政治家や艦長などの重鎮役で、ずっと出ていた印象です。北野武監督作品の常連で、『アキレスと亀』での主人公の父親役や『アウトレイジ ビヨンド』でのヤクザの幹部役、『龍三と七人の子分たち』でのコミカルな演技も、印象深いです。
中尾さんといえば、元は画家を志していたため、武蔵野美術大学油絵学科を中退し、フランス留学もされているそうで。俳優や歌手などが絵画を始めるのはよくあるのですが、美大に入るとは本格派ですね。そのため、芸術への造詣も深く。そういう美術系の番組にも出演されていた記憶が。というか、御本人もオシャレでしたからねぇ。個人的に印象深かったのは、薩摩焼の沈壽官窯を訪れ、そこで手捻りの皿を作られたのですが、これが素人目にもなかなかの出来で、当代の沈壽官さんも感心されていましたね。やはり芸術的なセンスは、他の分野でも発揮されるんですねぇ。
落語好きとしては、昭和の名人・古今亭志ん生の孫娘である、池波志乃さんの旦那さんというイメージも強いです。志ん生の長男が十代目金原亭馬生、次男が古今亭志ん朝。この馬生の長女が池波志乃さんで、ドラマでは祖母の役を演じたことも。二つ目の落語家・金原亭小駒さんは、馬生の次女の息子。志ん朝師の息子は落語家にならなかったので、美濃部家の血脈は繋がっており、中尾さんも十代目馬生のイベントとかには、よく顔を出されていた印象です。2000年に志ん朝師匠が亡くなってから、ある意味で古今亭一門の、外せない縁者でした。
中尾彬さんの御冥福をお祈りします。合掌
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