見出し画像

本屋は儲からない

◉大手書店グループの有隣堂が、本屋が儲からない現実を吐露されています。会員限定記事ですが、本屋の苦境はわかります。自分も出版業界人の端くれ、本屋が減ることはそのまま、利益に直結しますから。自分が出版業界に入った頃から半減かそれ以上、1万5000店舗は廃業していますから。しかし、本は文化・本屋は文化のハブだ・本屋を守ろう・本屋を優遇せよと言われると、素直に賛成はできない部分もあるんですよね。だって、そういう人が想定している本屋って、恵まれた都市部の人間がイメージする書店でしかないですから。

【本屋が儲からない!出版業界を襲う深刻ジレンマ 有隣堂社長に聞く「鬼滅バブル」でも笑えぬ窮状】東洋経済オンライン

紙の出版物の市場縮小が止まらない。
2020年の推定販売金額は、コミックス『鬼滅の刃』(集英社)の大ヒットもむなしく、16年連続で縮小。ピーク時に2万店を上回った書店数も1万店を割り込み、2019年度は9242店となった。
約40店の書店だけでなく、飲食店やアパレル、理容店などと書籍販売を組み合わせた複合店舗も展開する有隣堂。創業家出身で2020年9月に第7代社長に就任した松信健太郎社長に、出版業界が抱える構造問題について聞いた。

ヘッダーのイラストはnoteのフォトギャラリーより、青い本棚ってのがこのnoteの内容にあってるな、と。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■90%の地方の現実■

自分が電子書籍の可能性を語ると、必ず紙の本の良さを力説してくる人がいます。本好きが昂じて出版社の編集者になり、ついにはそこそこ良かった給料を捨てて作家になってしまった自分に、釈迦に説法してる自覚がないのでしょうね。んなこたぁ百も承知二百も合点で、素人に教えていただかなくても全部知っていますんでm(_ _)m Kindleに入ってる本だけでも9000冊を超えていますんで。だいたい、本屋には出会いがあるとかいう人は、東京とか大阪の大都市の大型書店を想定して言っていますからね。

うちの田舎とか、自分がガキの頃は大きな書店は両手の数なく、文房具屋と兼用の、10坪ぐらいの小さな書店が大半。大きめの本屋でも、売り場面積が池袋のジュンク堂の1階分ぐらいしかないんです。それでも、ウチの田舎は市町村合併もあって人口はギリギリ10万人を超えており、鹿児島県でも3番目か4番目に人口が多いんです。全国の市町村は、792市743町183村に東京23区を加えた1741自治体で、10万人以上はわずか284自治体。16.31%に過ぎません。それでもこんな状態。

■時代の必然を見据える■

うちの田舎を本屋で検索すると、本屋は9店舗しかなく、それもブックオフを加えてですからね。去年は10店舗あったのに。自分が高校の頃は古本屋なんかなかったですから。そんな小さな本屋に置いてる本は、売れ線の本しかなく。有隣堂や紀伊国屋、ジュンク堂などのような大型店舗であるような出会いなんて、ほとんどないんですよ。伊是名夏子社民党常任幹事と同じ、恵まれた都市生活者の視点でしかないです。ハッキリ言えば、10%の都市生活者の、無自覚な傲慢です。

それでも、離島の徳之島とかの友人に言わせると、本屋があることがどれだけありがたいかと言われます。Google Mapで〝徳之島 本屋〟で検索してみてください。文房具屋の一角にある地方の本屋とか、本屋でもない雑貨屋がズラズラ出ますから。2万2000人ほどの人口だと、そんなもんです。友人に言わせると、子供の頃は漫画誌はジャンプとりぼんしかないと思ってたとか。彼の故郷の近所の雑貨屋には、発売から数日遅れで、それしか入ってこなかったんですから、当然ですよね。うちの田舎でさえも、サンデーは2日遅れで発売でした。

■電子書籍の利点■

でも、そんな田舎の離島でも、電子書籍なら欲しい本が手に入るわけです。福岡ほどの地方都市でも手に入らない、東京の洋書屋でしか手に入らないような本が、ド田舎の僻地でも離島でも、発売日に手に入る。そりゃあ、電子書籍に走るよね、ということです。で、本屋と取次の囲い込みシステムが参入障壁になり、優れた才能でもロク日本を出せない現実を、自分は内側から見てきましたから。外側から、それもごく一部しか見ていない人に説教されるいわれはないんですよ。

よく言いますが、明治時代には寄席が400軒もあり、江戸時代の最盛期には1200軒もあったとか。それが今は都内に4軒しかないわけで。でも、その頃より落語家の数は多く、しかも収入は遥かに良くなってる人が多いわけで。自分は寄席は好きですよ。でも、ゼロになっては困るけれど、400軒あった時代に戻そうとも思いませんしね。だって、映画とか娯楽が多様化する中で、淘汰されて現在があるんですから。本屋倒産時代は時代の必然で、そこを無理に延命させるのは却って、北朝鮮を延命させるのと同じでは、と思うのです。

■販売より流通が変わる時代■

本屋は売れ線の本だけ売りたいし、取次会社は1冊の注文になんか応えたくない。都内の大型店舗に100冊卸しても、地方の書店100軒に1冊ずつ打っても、売上は同じでかかる手間暇経費人件費は、桁違いになって、儲けは薄くなるんですから。それが地方や僻地や離島なら、なおさら。そうやって、地方や個人のニーズを切り捨ててきたくせに、苦しい苦しいと言われても……。故鍋島雅治先生は出版社の営業や経理でもあったので、取次で弱小出版社がどんなにケンモホロロな扱いをされたか、語っておられましたが。

むしろ、そういう少部数配本をAmazonが引き受けるなら、それは一人勝ちも当然でしょうね。加えて、Amazonは1冊からのオンデマンド印刷にさえ対応してきました。たぶん今後、本はネットで出会い、電子書籍を書い、傑作ならコンビニでオンデマンド印刷で書籍を手にするスタイルになるでしょう。都市生活者は相変わらず、本屋での素敵な出会いを享受できるでしょうけれども。流通革命はネットから始まり、紙の本にも波及し始めています。

■必要なのはプラットフォーム構築■

日本の書店や取次は、AmazonのKindleに対抗できるプラットフォームを作らねばならないのに、そこはおざなりですしね。そりゃあ、勝てませんよ。それで、Amazonは税金を収めていないとか、批判しても消費者は注文して一ヶ月も待たされる印刷書籍より、電子書籍を求めますよね。そこの、根本的な戦略なしで、何をやってるのやら。それこそ、入稿用PDFを取次に渡せば、電子書籍にも紙日本にも対応して出すようなシステムづくりも含め、急務でしょうに。日本の出版流通は、まだこんなレベルです。

【「本の物流王」じり貧の出版で生き残る秘策の全容 広がる直取引にちらつく大手商社・丸紅の影】東洋経済オンライン

2021年5月、総合商社・丸紅が出した1本のニュースリリースに出版業界がざわついた。
出版最大手グループである講談社や集英社、小学館と組み、出版流通における課題を解決するための新会社設立を協議すると発表。その構想に出版流通において「要」(かなめ)となる「取次(出版業界の卸売業)」の2強の名前がなかったのだ。
出版社は取次を通して書籍や雑誌を書店に配本している。その出版流通において日本出版販売(日販)とトーハンは売上高ベースでシェアの過半を握っているとみられる。
長年にわたって「出版流通改革」を掲げ、高止まりする返品率など業界の課題に向き合ってきた取次大手。出版社・書店の流通パートナーとしてのプレゼンスは揺らぎつつあるのか。取次2強の一角・日販の奥村景二社長を直撃した。

寄席に行かなくてもラジオで、テレビで演芸が見れるなら、そこは淘汰されるのは必然。個別の事例は悲しく同情しても、それは時代の変化とはまた別の議論。長谷川幸延の小説『冠婚葬祭』に描かれた心情の問題と、新美南吉『おぢいさんのランプ』の問題は、常に古くて新しいのです。オンデマンド印刷の技術や設備がどうなるか、まだわかりませんが。コンビニに紙の本の出力器を置くほうが、結局は本の文化に益するような。この推測は10年後に、わかるでしょう。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ