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中国が溶融塩原子炉を計画

【中国が従来よりはるかに安全な溶融塩を使った原子力発電所の開発を計画】GIGAZINE

中国の研究者らが、ウランやプルトニウムといった固形の燃料棒の代わりに液体トリウムを燃料とする次世代の原子炉「溶融塩原子炉」の開発を計画していると報じられました。開発が成功した場合、従来より安全でクリーンな原子炉を水が少ない砂漠などでも運用可能になるとのことです。
Radioactive product analysis of a small molten-salt reactor in primary loop
http://www.j.sinap.ac.cn/hjs/EN/10.11889/j.0253-3219.2021.hjs.44.070601

Could China’s molten salt nuclear reactor be a clean, safe source of power? | South China Morning Post
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3141581/could-chinas-molten-salt-nuclear-reactor-be-clean-safe-source

ちなみにトップのイラストは、玄海原発だそうです。

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■第四世代原子炉の可能性■

日本の反原発派は、現在の原子力発電所に使われる各種技術や素材が、未来永劫変わらないかのようなイメージで語っていますが。現実には、技術は日進月歩で新素材が開発され、メルトダウンを起こしにくい第四世代原子の研究は、進んでいます。技術も素材も科学的な知見も、どんどん蓄積されてるんですから、当たり前ですね。中国が進める溶融塩原子炉に関しては、Wikipedia先生の説明がコンパクトで、わかりやすいですね。

溶融塩原子炉
溶融塩原子炉(ようゆうえんげんしろ、英: molten salt reactor, MSR)は、溶融塩を一次冷却材として使用する原子炉である。
多数の設計が行われたがそのうち少数が建設された。第4世代原子炉としてのひとつの概念である。
フッ化ウラン(IV) (UF4) など溶融状態のフッ化物塩を一次冷却材としてそこへ核分裂物質を混合させ、黒鉛を減速材とした炉心に低圧で送り臨界に到達させる。高温の溶融塩は炉心の外へ循環させ二次冷却材と熱を交換させる。燃料の設計はさまざまである。液体燃料原子炉特有の複雑な問題の発生を回避するため、溶融塩内に核分裂生成物を含まない構造の新型高温原子炉 (AHTR) も設計されている。

第四世代原子炉と一口に言っても、色んな種類が研究されています。現在のところ、稼働できそうなのが超高温ガス炉で、中国はこちらの商用実証炉も今年稼働を目指していますし、アメリカも2029年の稼働を目指しています。いわゆる小型モジュール炉(SMR)もこの超高温ガス炉のこと。出力は従来の原子炉の3分の1程度と低いですが、冷却水も固く古く安定した岩盤も不要で、ロケーションを選ばないのは溶融塩原子炉と同じです。

■トリウム232と溶融塩原子炉■

中国では、レアアース鉱石の精錬に伴って発生する金属のトリウム232を、溶融塩に溶かし原子力発電所の燃料として使用する計画があるんだそうで。天然に豊富に存在するトリウム232が、中性子を吸収するとトリウム233となり、これがベータ崩壊してプロトアクチニウム233となり、これがさらにベータ崩壊してウラン233になるんだそうで。中国のエネルギー政策としては、レアアース産業とセットで、かなり合理的な計画なんですよね。

なので、トリウム溶融塩原子炉という形で、セットで語られることが多いですね。これは逆に言えば、レアアースの中国依存を日本が目指すなら、レアアースの産出国にはトリウムも産出するわけで、そことの経済的な結びつきをさらに進めることにもなりそうですね。トリウムの主な産地はオーストラリア、インド、ブラジル、マレーシア、タイなどとのこと。あらあら、対中国包囲網の視点から言えば、日本の友好国が多いですね。

■今後の技術的課題■

とは言え、超高温ガス炉と比較して、まだまだ技術的な課題はあるようで、実現はまだ先。でもまぁ、こういうのは何十年スパンで研究するものですから。大きな問題としては溶融塩の侵食性などがあるようで、これもWikipedia先生から引用しておきますか。でもここらへんは、素材研究が強い日本だと、研究として貢献できそうな部分ですね。メルトダウンしづらい原子炉というのは魅力。

欠点として溶融塩の侵食性が高く、圧力容器や配管の腐食による脆化の対策が軽水に比べて困難である点があげられる。これに対して、東京工業大学の関本博が、タンク型高速溶融塩炉を発案している。これは大型の容器型の原子炉内で溶融塩を自然対流させる構造で、配管のような細い部分を高速で流れることがないため脆化対策や圧力容器破損時の対策が容易になる。炉内に熱交換器を設けることで原子炉を冷却し熱出力を得る。

現在の第三世代原発は、冷却水と安定した古くて硬い岩盤───理想は第三期以前の古い岩盤───が必須です。そういうロケーションは限られていますし、沖積平野で岩盤まで3000mもある関東平野は、そもそも原発を建てられない。「東京に原発を」というのは、無知からくる批判、あるいは解っていて信者を扇動するための方便でしょうね。大量のパイルを打てばできますが、費用対効果的に無意味。でも、超高温ガス炉や溶融塩原子炉なら、反原発派の理想が実現できそうですね(下衆な笑いを浮かべながら)。

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