見出し画像

note読書の秋2022 その②

◉noteの秋の企画、読書感想を募集する投稿コンテストですが。いちおう、プロの物書きですので、コンテスト自体には何の興味もなく。個人的にはおすすめの本を紹介する企画として、活用させて頂いております。それでは、本日のオススメ本を。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

『ブラウン神父の童心』

ギルバート・キース・チェスタトンの代表作。まぁ、古典っちゃあ古典ですし、ミステリー好きには今更の作品でしょうけれども、そういう人が、新規読者を拒む障壁になってるんですよね。すべてのジャンルはマニアが殺す。こういう古典、大事です。チェスタトンは『シャーロック・ホームズ』を生み出したアーサー・コナン・ドイルより15歳下で、ポアロとマープルを生み出したアガサ・クリスティより16歳年上。ちょうど中間。

推理小説の元祖と、推理小説が爆発的に発展した第2世代の、ちょうど中間の存在なんですよね。それ故の、過渡期の部分はありますが。キャラクター主義という点では、とても興味深い存在です。ドイルのシャーロックホームズがどうしても、小説の始祖であるエドガー・アラン・ポーの影響が強く。クリスティもその傾向はあったのですが、途中でワトソン役のヘイスティングを外すなど、第2世代ならではの工夫が見られます。

探偵役のキャラクターの立て方という点に関して言えば、このブラウン神父シリーズは非常に先進的で、小池一夫先生のキャラクターのにも通じる部分があるように思います。それを完成させたのは、クリスティたち第2世代の推理小説家ではあるのですが。チェスタトンはそういう意味では、1.5世代の作家と言えるのかもしれません。クロマニョン人こと現世人類に滅ぼされたネアンデルタール人が、部分的には現世人類よりも優れた面を多々持っていたように。

なお、アマゾン・プライムビデオでは、イギリスBBCのシリーズが鑑賞できます。字幕版ですが、さすがに母国の国営放送が、威信をかけて作ってるだけあって、出来がいいですね。そっちから先に見たほうが、入りやすいかもしれません。読んでから観るか、観てから読むか? 昭和の時代の角川書店のキャッチフレーズかっての( ´ ▽ ` )ノ

『半七捕物帳―江戸探偵怪異譚―』

そして、日本の推理小説の始祖。始祖だけに、本格的な推理小説とは言い難い面があります。それは、全推理小説の始祖であるエドガー・アラン・ポーが、ホラー小説と推理小説がまだ未分化な、渾然一体とした作風であるのと似ています。そして、小学校3年生の時にポーと出会い、その作風に魅せられた自分としては、岡本綺堂もまた大好きな作家の一人であります。

推理というものを突き詰めた、本格推理小説もういいのですが、自分はどうも折衷的な作品に惹かれます。それは編集者時代、少女誌でホラーやミステリーをかなり大量に担当したという部分も大きいのでしょう。そもそも、シャーロックホームズもホラー要素が多分に絡んだ、『バスカビルの犬』が一番面白いですし、横溝正史作品に漂うホラー要素が、他の推理小説よりも大衆に訴求した部分ではありますから。本格推理小説ファンは、そこが雑味に感じられるのでしょうけれど。

半七捕物帳の全作品は、とっくにパブリックドメインで、青空文庫にも入っていますから、無料でも読めます。しかし長短併せて全六十九編の中から、宮部みゆき先生が選んだ傑作集ゔぁオススメです。値段も安いですし、セレクトも上々。岡本綺堂の文章「まるで昨日脱稿したかのように瑞々しい」と評した、宮部みゆき先生の目利きですから。自分の目利きよりも100倍、1000倍は信用できると思いますので。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ