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太陽光励起レーザーに再挑戦

◉一時期話題になり、自分もかなり期待したんですが。その後、ぱったり聞かなくなりました。太陽光の弱い力でもレーザー光線を効率的に生み出し、それで海水を蒸発させて真水を得る、という部分がスタートで。それをさらに応用して、海水中のマグネシウムを取り出し、これを燃焼させて火力発電の燃料に使うという、画期的なもの。そうやって燃焼されたマグネシウムは、再び太陽光励起レーザーで、還元してまた燃料に使えるというマグネシウム循環社会、そういうエコロジカルな面でも期待されたのですが。東京工科大学が、再び取り組むようです。

【太陽光をレーザー光に直接変換、東京工科大が世界に再挑戦】日刊工業新聞

 太陽光を励起光源として利用する固体レーザー装置は、「太陽光励起レーザー(Solar-Pumped Laser:SPL)」と呼ばれ、世界で開発競争が起こっている(図1)。太陽光で直接、水を分解して水素(H2)を発生させる「太陽光水素生成」と同様、将来的に研究が進めば、太陽光発電システムで太陽光を電力に変換し、その電力を用いてレーザー光を発生させるよりも高いコストパフォーマンスが得られる可能性がある注1)。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02552/092000010/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、シンガポールのマリーナベイサンズの夜間イベントのレーザーだそうです。

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■まずは真水の生成を■

太陽光を大型レンズで集光し、レーザー結晶を励起状態にして、レーザー光線を生み出す太陽光励起レーザー自体は、東海大学関西大学などでも研究していて、これ自体は多くの研究が進んでいるんですよね。マグネシウム循環社会まで行くのはハードルが高いですが、真水の生成という点では、こちらの方が実用的ですし、現実に必要とされる部分でしょう。世界的には、水資源ってとても大事ですから。それこそ、内陸国の砂漠の緑化とか、海水をパイプラインで送り込んで、太陽光励起レーザーで蒸発させて安価に、大量に生産できれば、砂漠化の問題にも対応できますしね。

内陸国で、塩分の調達が難しい地域ならば、水と塩の両方を調達できますから。砂漠緑化ということで言えば、日差しが強いので真水さえあれば、植物はよく育つんですよね。日本の大学が研究した、点滴栽培ならば、使用する水の量はすごく減らせますし、土壌に紙おむつに使われるキュレート剤を混ぜ込むと、ホス期間も長くなりますし。広大な地域の一部が緑化できれば、それだけでも生産性が上がりますし。まぁ、現在は緑の革命で、昔ほど食糧生産の必要性は叫ばれていませんが。地球温暖化とか別の面で、二酸化炭素を吸収する植物が増えることは、悪いことではないですしね。

■問題は変換効率の壁■

レーザー光線自体は1917年、アルベルト・アインシュタインの論文『Zur Quantentheorie der Strahlung(放射の量子論について)』にて、レーザーとメーザーの理論的基礎を確立したとのこと。さすが、天才ですね。そういえば、昔の東映の怪獣映画では、メーザー光線という名称が、頻発しましたね。『サンダ対ガイラ』とか。マイクロ波を増幅するのがメーザー、可視光線や赤外線、紫外線ならレーザー。実際に、レーザー光線が実際に実用化されたのは、かなり後なんですが。アインシュタインの天才的な理論が、実際に役に立つには、数十年かかるんですねぇ……。

 その壁を破ったのが、上記の矢部氏、そして、現在は東京工科大学 工学部機械工学科 准教授の大久保友雅氏を含む東京工業大学の研究グループだった(図2)。2007年には変換効率を約1.9%と約2倍超に改善した。さらに2012年には同3%にまで向上させた。レーザー光の出力自体は120Wと、たいていの板金加工ができる水準にまで高まった。

やはり、問題はエネルギーの変換効率、ということになるようで。太陽光自体は、トータルで見たら膨大なエネルギーなんですが、単位面積あたりの密度は、必ずしも高くはないんですよね(自分が太陽光発電に懐疑的な理由でもあります)。こういう研究は、新素材の発見で一気に効率が上がったりしますから。ソーラーパネルも、シリコン系の素材発見で、電卓にまで使えるほど、普及しましたし。変換効率は1%から2%、2%から3%と地道に上がって言って、どうやら海外勢が、4%を超えたそうで。こうなるとまた、新たな道が拓けるようで。

■多様なエネルギーを■

そう考えると、豊田中央研究所が人工光合成セルで、太陽光変換効率7.2%を達成したってのは、改めてすごいことなんですねぇ……。もちろん、ギ酸を生み出す人工光合成と、太陽光励起レーザーで海水を蒸発させて真水を作るのでは、単純な変換効率で語れるものであないのですが。ソーラーパネルには期待しない自分ですが、こういう研究は期待します。日本自体は国土面積も狭く、世界的な平均値よりも日照量が低くて、あまり向いていませんが。他国での利用で、大きく貢献するでしょうから。もっと未来では、養生での利用とか応用できるかもしれませんし。

【実用サイズの人工光合成で植物の太陽光変換効率を超える】豊田中央研究所

当所では、地球環境問題の解決に向けて、工場などから排出されるCO2を回収し再資源化するシステムの実現を目指しています。特に、太陽光エネルギーを用いて水とCO2で有用な物質を生成する「人工光合成」に2000年代から取り組んでおり、今、実社会への適用に向けたさらなる一歩を踏み出そうとしています。今回、これまでよりも大きい36センチ角の人工光合成セルで、太陽光変換効率7.2%を達成しました。2030年ごろの実用化を目標に、基盤技術の確立に向け研究に取り組んでいます。

https://www.tytlabs.co.jp/presentation/case-11.html

2030年ごろの実用化を目標に、というところが、堅実というか、地道ですね。2030年頃となると、第四世代原子炉の高温ガス炉がアメリカやイギリスでは前年に稼働している予定で、日本でも期待されるタイミング。第四世代原子炉・人工光合成・太陽光励起レーザーと、なにやら自分たちが『ドラえもん』で夢見ていた未来が、ぐっと近づきましたね。リニア中央新幹線も動いているでしょうし。自分は、科学は失敗もあるが着実に改善されるものだと、そう思っていますので、その未来に期待します。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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