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漫画とデジタル化の話

◉このnoteを書こうと思った発端は、ナガテユカ先生のこちらのツイートでした。漫画のデジタル作画はすっかり一般的になりましたが、アナログオンリーの専従アシスタント(アシプロ)には、コロナ禍の在宅ワーク推奨も重なって、仕事を減らしたり失う人もいるでしょう。せっかくの高い技術を持っていても、ちょっとした知識が無くて食い扶持を失うのは、もたいないと思うのです。

先ず自分は、デジタル作画が上だとか下だとか、そういう話をするつもりはありません。デジタル作画にはデジタル作画の問題点やデメリットもありますしね。ただ、よくわからないままに感情的に反発するのも、逆に過剰に賞賛するのも、どちらも問題だと思いますので。なので、デジタルに尻込みするベテランの漫画家さんや、パソコンを持っていないスマホオンリーの若者に向けて、書けることをいくつか。

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■デジタル化には段階がある■

まず、デジタル作画と言っても、幾つかの段階があります。知り合いの還暦の漫画家さん、パソコンはからっきしです。なので、本人は今でもアナログ作画です。でも、奥さんがパソコンに強いので、漫画家当人が描いたアナログ原稿を、スキャンしてデジタル化して、アシスタントが描いた背景などをパオコン上で合成し、スクリーントーンを貼って、効果線を加え、仕上げでデジタル原稿にしています。

こういう形なら、デジタルに詳しくなくても、デジタル入稿ができます。漫画家本人は、昔ながらのアナログ作画でも問題ない。人間、手慣れたやり方が一番。漫画家さんも、家人が詳しければそれで充分。ただ、家族も詳しくない人もいるでしょう。そういう時に、デジタルに詳しいアシスタントは、重宝されるでしょう。特に、アナログ作画オンリーのベテラン漫画家さんならなおさら。

この場合は、パソコンの基本的な操作方法と、AdobeのPhotoshopなどのフォトレタッチ用アプリケーションの操作方法を学べば良いでしょう。Photoshopはとても高性能で多機能なアプリケーションですが、漫画で必要な操作は色調補正や選択範囲の各種操作、レイヤーマスクなど、そこまで多くありませんので。社会人向けの短期5-10万円ぐらいのパソコン教室で充分でしょう。

■デジタル化のメリット■

漫画家さんにもデジタル化のメリットはあります。知り合いがデジタル化して、アシスタントを募集したら、全国から応募がきたのですが、これがベラボウに上手い人が多い。話を聞くと、家業を継ぐために田舎に帰ったが、元はプロの漫画家とか、そういう人が多い。家業とは別に、空いてる時間で背景描いて、そこそこの副収入になるならと、やってる人が多いんですよね。東京にいなくても、アシスタントはできるので。

デジタルアシスタントに移行した結果、それまでの通いのアシスタントには交通費と飯も2食出して、飲み物やオヤツも出していたのが、これが全部不要に。加えて、それまで仕事場に借りてたアパートを引き払ったり、あるいは仕事用の部屋が1部屋余分にある物件でなくても良くなったので、年間の経費が100万円以上浮いちゃったとか。デジタル化にはこういうメリットもあるので。

ただし、デメリットとして対面での微妙なニュアンスが伝わらないこともあるので、指示出しは正確に、入念に、資料や具体例を用意してやる必要はあるそうです。アシスタントとの集団ミーティングや個別ミーティングの機会も、月1回は必要のようで。これが、作家によって個人差もあるでしょうから、自分にとって良いスタイルを模索するのが良いでしょうね。

■フルデジタルに移行するなら■

もうちょっとデジタル化を進めると、描くのも直接デジタルと言うことに。これは、セルシス社のCLIP STUDIO PAINTを使っての、デジタル作画。プロなら、EX版が無難ですが、廉価なPRO版で、先ずは試しても良いでしょう。iPad Proなどなら、無料トライアル期間もありますし。こちらは、専門の講座もありますが、Photoshopを使えるレベルなら、本を読んで後は試行錯誤でもなんとかなるでしょう。

ただし、これは機材がけっこう初期投資として必要になります。当たり前の話ですが、高性能なパソコンであればあるほど、処理はサクサクになります。高価で画面が広い液晶ペンタブレットなら、数十万にもなりますからね。自分のオススメは、ワコムの液晶ペンタブレット。最初からCLIP STUDIO PAINTがインストールされていて、お得です。Windowsパソコンと一体型もありますので、下記リンクを参照してください。

デジタル化のメリットとして、スクリーントーン代が年間30-60万かかっていたのが一気に減った、というのもありますね。また、ベテランで視力が衰えた人が、パソコンのズームアップ機能で、細部まで描けるというのを挙げてもいました。平田弘史先生も、それが理由でしたね。目を酷使する商売で、虫眼鏡片手や大型ルーペを使う漫画家さんもいますからね。ブルーライトという別の問題はありますが、試す価値はあります。

■詳しい人に聞く、が基本■

実は、斉藤むねお先生は『通潤橋物語』執筆に当たって、ノーアシスタントで月刊連載ができるか、という裏テーマを持っていました。実際、デジタル機器を駆使することで、それは可能でした。そして、フルデジタルで全部作家1人がやった結果、背景もトーンの仕上げも効果線も、タッチが全部が統一されたというメリットもありました。本人がやるから、当然ですよね。こういう作家も、ますます増えるでしょう。

まとめるとデジタル移行のデメリットとして、以下のような感じに。

・パソコンを覚える手間と時間
・独学では時間が掛かり、教室はお金が掛かる
・初期投資の額がけっこうある
 →パソコン本体の費用
 →専用アプリケーションの費用
 →スキャナーや液晶ペンタブレットの費用
 →ケーブルTVや光ファイバーなど通信網の整備
 →サーバなどのランニングコスト
・アシスタントとの意思疎通の難しさ
・データ消失の危険性

逆にメリットは以下のような感じに。

・アシスタント費用の圧縮(交通費・食費)
・地代家賃の圧縮
・スクリーントーン代の圧縮
・アシスタントのレベルアップ
・近眼&老眼対策
・データが常に手元に残る
・過去データの使い回しの簡便さ

それぞれ、メリットもデメリットもありますので、詳しい人に相談するのも良いでしょう。ウチでも、需要があれば質問講座を開きたいですが。なお、このnoteは思いついたのをザッと書いただけですから、思い出したことなど、随時追加修正していきます。こんあ面もあるよという人や、疑問質問がある方は、コメント欄にどうぞ。答えられる範囲なら、答えますm(_ _)m


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