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朝日新聞・論座の雑な反原発記事

◉朝日新聞の論座が、原発は温暖化対策になり得ないという記事を掲載しています。でも根拠となる数字の言及がなかったり、コストコストと連呼する割りに、発電の質についての言及がない、雑な内容ですね。

【原発は温暖化対策になり得ない】朝日新聞Web論座

 相変わらず温暖化対策として原子力発電を推す声がある。
 そのような声はバイデン政権の米国でもある。確かに、バイデン政権は、温暖化対策の一つとして「先進型原子炉(Advanced nuclear)」を選択肢とすることを表明している。
(中略)
 しかし、米国の多くの専門家は、「先進型原子炉は、コスト、スピード、公共の安全、廃棄物処理、運用の柔軟性、グローバルな安全保障の面で、温暖化対策の他の選択肢である、再生可能エネルギー(以下、再エネ)、省エネ、蓄電池などに対抗できない」と考えている。

明日香壽川東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授───肩書きは立派ですが、エネルギー問題の専門家でも、工学系の研究者でもない。都合の良い数字を寄せ集めて継ぎ接ぎした印象です。

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■前提条件を無視したコスト比較■

記事では、米エネルギー情報局(USEIA)は、毎年、発電エネルギー技術の発電コスト比較の2021年版では、原子力発電と石炭火力発電は、再エネよりもはるかに高いと言ってるのですが。石炭火力が72.78、原子力発電が69.39、風力発電が36.92、太陽光発電が32.79と。コストはそうなんでしょうけれど、そもそも風力発電は風が安定して吹かないとだめ、夜間に発電できない太陽光も同じです。

アメリカはカルフォルニアの沿岸部の年間日照時間は2900時間から3400時間もあります。ところが2019年の東京で1909時間、一番日照時間が長い山梨県で2391.3時間。最下位の秋田県が1526.2時間に過ぎません。そう、カルフォルニアの半分程度。日本の平均日照時間は世界平均の2500時間と比較しても、短いんです。太陽光発電のコストが半分以下でも、これではコストなんて相殺です。

■質が低いと量があっても無意味■

かつて、毛沢東が「鉄は国家なり」の言葉を鵜呑みにして、鉄鋼の生産量が国力だと増産を命じます。大躍進政策です。需要もないのに供給を増やしてどうする、本末転倒だと思うのですが。素人に良質な鉄鋼が作れるはずもなく。技術も鉄鉱石や耐火レンガなどの素材もなく、土法炉で作れる鉄の質は低く。1117万トン生産された鉄の60%がノルマを達成するための粗悪な銑鉄で、農機具を溶かしてまでノルマを達成しようとしたとか。

この東北大教授が言ってるコストも、この程度の話です。いくらコストが安くても、不安定な供給しかできない風力発電や太陽光発電はそもそも質が低い。しかも、偏西風が安定して吹く北欧と台風がたまに北海道まで到達する日本では、条件が違います。ドイツですら、緯度的には樺太とほぼ同じで最北端は樺太より北と、欧州は日本人の漠然とした想像よりずっと北にあるんですから。

■根拠を示さず断言する危うさ■

建設費に関する事例も、上手く行かなかった事例を継ぎ接ぎしていますね。ここで言及されてるのは、第三世代炉。一品モノの第三世代炉に対して、注目されている小型モジュール炉(Small Modular Reactor, SMR)はその名のとおり、構造をモジュール化する原子炉です。要するにプレハブ住宅のように規格化された部材一式を工場でまとめて生産し、現地ではこのモジュールを積み立てるように設置します。

小型モジュール炉の経済的競争力は全くない。原子炉のサイズを縮小し、多くのモジュールに分割すると、生成される電力のコストは上昇する。大量生産すれば価格は低下する可能性はあるものの、それをサポートするような需要は存在していない。

全くないと、断言する根拠が特に挙げられていないですね。論理が飛躍してる、しかも根拠を示さないときは、誤魔化しがあるときです。教授様は需要は存在しない、なんて書いてますが。実際は、イギリスではこの小型モジュール炉の大量生産ができコストダウンできる利点を活かすため、16基という大量の建設を、日本なら三菱グループにあたる大企業のロールスロイスが、進めています。

■温暖化対策への言及無し■

導入コストが安かろうが、ランニングコストが安かろうが、安定しない風力や太陽光では、主要な代替発電になり得ない。ここに答えていませんね。権威主義者の朝日新聞系列としては、東北大学教授という肩書きに飛びついたのでしょうけれど、残念ながら素人でも疑義が次々と湧くレベルですし、情報のアップデートはできていないし、第四世代炉についての知識も甘いと、断言せざるを得ません。反原発ありきの人には、これを受け売りしちゃう人も多いでしょうけれど。

こういう愚論が日本で流通する間、世界では第四世代炉の研究が進み、中国では商用実証炉が今年稼働し、アメリカも2029年の稼働を目指し、日本もそれに協力する形で、超高温ガス炉は動き始めていますから。出力が3分の1程度ですから、旧世代の原子炉の置き換え需要だけでも3倍の数が必要ですし。教授様が言う需要は、超高温ガス炉がいけるとなったら、普通に出現しますよ。

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