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養殖ウナギ放流でも増殖は困難

◉勘違いしている人が多いですが、養殖ウナギは卵から育てたものではなく、海から川に遡上するシラスウナギという仔魚を捕獲して、それを養殖場で育てただけで、元は天然ウナギです。その部分養殖ウナギを、ある程度育ったところで川に放流し、天然ウナギの資源量を回復しようという試みがあるのですが。どうやら、そうやって放流されたウナギは甘やかされて育ったため、野生では生存率が低いようです。なかなか示唆的な研究ですね。

【養殖ウナギ、天然に負ける…研究者「競争力低く放流で増殖困難」】毎日新聞

 河川に放流した養殖ウナギは天然ウナギに負ける――。中央大や東京大などの研究チームは、貴重な資源を増やそうと全国で実施されている養殖ウナギの放流の効果に疑問を投げかける研究成果を発表した。

 ウナギは海と川を行き来する回遊魚。食用で流通するウナギは、国産も輸入品もほとんどが天然の稚魚を養殖したものだ。

https://mainichi.jp/articles/20220712/k00/00m/040/003000c

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、ウナギの写真です。

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■ウナギの生態と生活史■

いったん部分養殖した魚を放流するのは、鮭でも行われているのですが。コチラに比べて、ウナギの方は定着が難しいようで。そもそも、鮭は孵化した卵を河川に戻してから生みに戻り、また川を遡上して産卵するまでの成熟期間が、早ければ1年から長くて6年と、個体や種でばらつきがあります。これに対してウナギはオスで3年から6年、メスだと4年から13年もかかります。水温が低い地域だと、6年から43年という報告もあるとか。そりゃあ、サバイバルは大変そうです。

ウナギを卵から育て、そこで成熟した親ウナギが卵を生み、それを養殖するという完全養殖は、近畿大学などの研究がかなりがんばって、研究所レベルでは成功しているのですが。ウナギのメスは約300~700万粒もの浮遊卵を産卵します。マンボウほどではないですが、それでもかなりの産卵数。これはつまり、卵から親まで生き残るウナギが、いかに少ないかということです。サメとか、数個しか産まない、あるいは卵胎生で一匹しか産まない種類もありますからね。

■完全養殖ウナギへの期待■

そもそも、ウナギはどこで出産するかも長年の謎で。ヨーロッパウナギはバミューダ・トライアングルのあたりで産卵するのが知られていましたが、ニホンウナギはこれがマリアナ諸島近くで幼体のレプトセファルスが大量に見つかり、卵が見つかって産卵場所と判明するまで、80年ほどもかかったとか。それだけ、謎多き魚だったわけで。現在も、仔魚から大人にに生育させるのはイロイロと課題が多いようですが。逆に言えば、完全養殖の技術が確立すれば、かなり有望です。

日本のウナギの消費量は年間約3億匹だそうですが。約300~700万粒も産卵するので、メスのウナギが43匹から100匹もいれば、全需要を賄えることになります。これは机上の空論ですが、それこそ卵からシラスウナギに育つ比率が50%とかになれば、200匹も入ればいいということになります。25%程度でも、かなりの効率が望めます。ただ、わが故郷の隣、志布志市の研究所でも、まだまだ課題は多いようです。個人的には、とても期待しているのですが。

■鹿児島のウナギ養殖に期待■

それこそ、大学の後輩のアメリカ人にしても、インド人やアフリカ系の人にしても、うなぎの蒲焼って美味しいというんですよね。自分はお好み焼きと蒲焼は、世界に通用する日本食だと思っています。それこそ、完全養殖技術が確立されて、資源量を気にせず済むようになれば、牛丼やラーメン以上に、アメリカやヨーロッパ、アフリカ、インドで需要が高まるでしょう。個人的には、そこに期待です。10年掛かるか20年掛かるかわかりませんが、研究の進捗に期待です。

鹿児島県はウナギの養殖が盛んで、田んぼの中に養殖池を見かけることは、けっこうあります。前述の志布志栽培漁業センターもありますし、なにしろ名字でウナギさんがいますから。確か、お笑い芸人にもいますね。一族の掟で、ウナギは食えないそうですが。そういう意味では、過疎地の農業県としても、期待の持てる産業なんですよね。また養殖マグロのほうも、奄美大島の海域で研究がされていますし。近畿大学水産研究所には、ホント期待していますので。

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