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原子力発電とグリーン水素

◉日経新聞が、アニメ『ガールズ&パンツァー』で知られる茨城県大洗町の高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor:HTTR)について、かなり詳しい記事を上げていました。このnoteでは繰り返し書いてきたことですが、全国紙でこういう記事が出るのは、マスコミの役目として重要ですね。東日本大震災に伴う福島第一原発事故から10年以上たち、もう冷静な議論ができないとおかしい時期です。ろくな科学知識もなく、恐怖を煽るだけの風評加害マスコミは不要です。

【原発が水素も量産 10年ぶり再稼働の実証炉が秘める力】日経新聞

日本の官民が原子力発電とグリーン水素の製造を同時にやってのけるハイブリッドプラントの開発に臨んでいる。原子炉から熱を取り出し、主原料の水を化学反応させて水素を生む。高温ガス炉(HTGR)と呼ばれる次世代炉の1つだ。水素は製鉄所や化学産業の脱炭素への貢献が期待される。一体どんなプラントなのか。肝心の安全性はどうなのか。2021年、10年ぶりに再稼働したHTGRの試験研究炉(HTTR)の開発現場からリポートする。
記者が向かった先は穏やかな海岸線が続く茨城県中部の町、大洗町。その海沿いに日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗研究所がある。
「この地下に高温ガス炉が埋設されています」。高温ガス炉研究開発センターの篠﨑正幸部長が案内してくれたのは、所内の一角にあるHTTRの建屋だ。1階にはオペレーション室しかない。原子炉は地下30メートルにわたって建造されている。

ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーから、大洗磯前神社だそうです。美しいですね。

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■再生可能エネルギーの限界■

脱炭素だ再生可能エネルギーだと言っても、現実的には太陽光発電や風力発電は密度が低く、夜には発電できないとか風が吹かないと発電できないとか、ベースロード電源としては使えません。そもそも、日本は世界の平均的な日照時間よりも短く、高温多湿な八雲立つ天叢雲の国ですから。また、ユーラシア大陸の東端の島国で、台風が多い国です。風力発電に適しているのは台風がめったにこない、安定した偏西風が吹く緯度の高い国で、日本ではほか綺堂の一部ぐらいでしょう。

世界的にも南北に長い国土で、亜熱帯から亜寒帯まである、非常に自然条件に差がある国です。そういう地域で、馬鹿な再生可能エネルギー幻想と、それを煽るマスコミに迎合して、無駄な金をドブに捨てるのは、賢いことだとは思いません。洋上風力発電の実証実験に600億円もつぎ込んだとか聞くと、そのカネを大洗のHTTRにつぎ込んでいれば、どんなにか研究が進んだかと思うと、残念でなりません。無能な方の菅総理が、強引に止めちゃったせいですけどね。

■世界は高温ガス炉推進へ■

日本の大手マスコミは科学音痴が多いので、高温ガス炉(High Temperature Gas-cooled Reactor:HTGR)と小型モジュール炉(Small Modular Reacto:SMR)の混同が見られますが。高温ガス炉は、第四世代原子炉に含まれる、新しいタイプの原子炉。この第四世代炉自体はかなりいろんな種類が研究されていて、高温ガス炉もそのひとつです。というか、第四世代ろはいろんな技術的・素材的ハードルがあって、実現可能なのは今の所高温ガス炉だけというのが現実です。

日本より遅れていた中国の高温ガス炉の研究は、この10年間で大きく前進し、昨年9月には商用実証炉が臨界に達し、ここでのデータを元に商用炉が稼働するのは数年の内でしょう。原子力研究のトップであるアメリカと、ロールスロイス社を要するイギリスも、2029年の商用炉稼働を目指しています。高温ガス炉は、建築に必要な諸部分をモジュール化して、現地で組み立てるので建設も早いんですよね。これが別名で小型モジュール炉と呼ばれる理由。第三世代炉は一品物で、建設に時間がかかるんですよね。

■アップデートできない反原発派■

こういうのは、自分のような典型的な文系でも、情報を漁ればなんとか分かる程度のないようなんですが、ジャーナリストを自称される志葉玲氏などは、まだこんな事を言ってるわけです。スピードだけで勝っても、意味はないのですけどね。例えば、物流には航空・鉄道・船舶などがあるわけですが、船舶はスピードでは飛行機や鉄道には敵いません。しかし、浮力を生かして大容量を安価な動力で大量に運搬できる。ベースロード電源という考え方が、これに近いです。

普通に情報を集めて、比較し、常識をもとに検討すれば、火力発電所と原子力発電所では二酸化炭素の排出量が違うとか、ベース電源として出力の大きさと安定度が違うとか、山林を切り払いパネル設置より今ある原発の再稼働が迅速だとか、再稼働を譲っても高温ガス炉は小型化とモジュール化で建設も早いとか、その第四世代原子炉は安全性も高い設計と構造だとか、わかるはずなんですが。

■マスコミの役割は情報伝達■

第四世代炉である高温ガス炉がなぜ安全だと言えるのか、この記事ではかなりしっかり解説していて、これこそマスコミの果たす役割だと思います。朝日新聞の三浦記者などのように、恐怖だけ煽って科学的な検証がおざなりでは、ただの活動家と大差がないですから。処理済み水を汚染水と呼び、特定の漁民の不安ばかりを強調して垂れ流すマスコミは、ただの風評加害者です。非常に重要な部分ですので、備忘録も兼ねて、以下に転載しておきます。

HTGRは、軽水炉という水を沸騰させて熱や蒸気を取り出す現行の原発とは構造が違う次世代炉の1つだ。電気出力は最大30万キロワットと軽水炉型原発の3分の1程度と小ぶりだが、安全性は極めて高いという。
なぜ、安全性が高いといえるのか。その理由は2つある。まずは溶融しない燃料棒だ。
現行の原発の燃料棒はジルコニウムという合金でウラン燃料を覆っているが、炉内温度が1200度を超えると燃料棒は溶け出してしまう。いわゆる「デブリ」への第一歩だ。他方、HTGRは黒鉛でウラン燃料を覆っている。その黒鉛被覆材にはセ氏2500度までの耐熱性がある。福島第一原発事故のときの2倍程度の温度でも溶け出さない。
ウラン燃料そのものも耐熱構造にしてある。燃料棒の中には高さ39ミリメートル、直径26ミリメートルの円筒容器が積み重なって入っているが、その容器に直径1ミリメートルのウラン燃料の粒子がびっしりと詰まっている。
この1ミリメートルの粒子は特殊なセラミックなど4層構造の耐熱素材で同心円状に覆われ、セ氏1600度に達してもウランの核分裂反応時にできるセシウムなどの放射性物質を閉じ込められる。
この多重防護によって「ウラン燃料が溶け出し、放射性物質が次々と漏れ出すリスクはほとんどない」(西原哲夫・高温ガス炉研究開発センター長)とされる。

ぜひ全文を読んでいただきたいですが、燃料と冷却材の両面で、高温ガス炉はメルトダウンしづらい構造が、かなり研究されているのがわかるでしょう。こういう部分に反論するなら、記者もまた科学的な知見を持ち、わからないところは専門家に聞き、その専門家がトンデモさんでないかを見分ける目が必要です。子宮頸がんワクチンでも、デマを言う医者とか科学者は、いっぱいいましたからね。そういう意見はオープンな場で討論するべきかと。万機公論に決すべし。

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