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西村京太郎先生死去

◉91歳、大往生と言えば大往生なのですが。残念ですね。トラベルミステリーの第一任者、という評価もちょっと残念。もちろんそれは疑いのないところであり、トラベルミステリーというジャンルをここまで大きくしたのは間違いないのですが。個人的には、トラベルミステリー以前の、普通の推理小説が好きだったので。聾唖問題を織り込んだ『四つの終止符』はもちろん、『七人の証言』などは今でも創作に行き詰まった時に読み返しますし、『名探偵が多すぎる』などのパロディ推理小説も、大好きでした。

【「十津川警部は分身」 俳優ら、西村京太郎さん惜しむ声】産経新聞

 トラベルミステリーの第一人者として知られる作家、西村京太郎さんが3日、肝臓がんのため死去した。西村さんの小説は映像化された作品も多く、ゆかりのあった俳優たちから惜しむ声が相次いだ。
 俳優の船越英一郎さんは「十津川警部シリーズをはじめあまたの作品でお世話になりました。サスペンスドラマに『トラベルミステリー』というジャンルを確立された偉業のおかげで、今日の私があるといっても過言ではありません。『君の芝居には刑事である前に人間が見える』と言っていただいたお言葉は私の糧であり宝物です」と話した。

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、東北新幹線の車両ですね。型番は知りません。

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西村京太郎先生との出会いは中学校時代。従兄妹のお姉ちゃんが大ファンで、面白いから読みなよと勧めてくれたのがきっかけでした。実際、面白かったですね〜。元々推理小説自体は、好きなほうでしたから。さらに近所のおばちゃんでミステリー好きの方が、読み終わった作品をポンポンくれたりもしたので、中学高校の頃はそこそこ以上に読んでいたんですよね。西村京太郎先生の作品以外にも、山村美紗先生の作品も多くて。

もちろん、トラベルミステリーの方も。旅情と言うか、やはり鉄道などを利用した各地を舞台にした作品は、鉄道ファンや旅行ファンなども取り込み、大きなムーブメントを引き起こしたのは事実です。そういう部分での貢献は、否定する気はさらさらないです。ただ個人的な好みとして、オーソドックスな推理小説が好きですし、その面でも西村京太郎先生は多くの傑作を残しているいるので。トラベルミステリーだけで語られるのが、残念というだけでして。

西村先生の作話法はキャラクター主義の部分があったので、自分は大きな影響を受けました。最近の投稿者はの作品を読んでいると、トリックは素晴らしいが人間が描けていない……と言った苦言を呈されることが、ちょくちょくありました。自分もまた、トリックの奇想天外さよりも、そこに描かれる人間性という部分に、惹かれるタイプだったので。架空のはずの登場人物が、自分の身近に実際にいる人間に思えるような、実在感。そこが素晴らしかった。

なのでトラベルミステリーが人気になるにつれ、十津川警部のキャラクター性が弱くなってしまったのが、残念でもありました。テレビドラマなどでも、十津川警部は司令官的なポジションで、例えば亀さんこと亀井刑事役の愛川欽也さんとかが、物語の主役になっていましたしね。テレビドラマの方も、テレビを見ていた頃には、大好きでしたけどね。あのドラマの成功が、多くの旅情ミステリー作品の映像化に貢献したのも、疑い得ないです。

西村先生自体は、時代小説も書けば海洋小説も書くなど幅の広い作家ではありましたが。ご本人がもともと多趣味なかたでもあったので、そこが生かされての作風だったとは思います。多い年では年間20冊の著作を書き下ろし、生涯に書いた作品は600冊以上。スカイツリーの634メートルを超える635冊の本を書くことが目標だったようですが。それらの全作品を手書きで書かれたという時点で、言葉を失う凄さです。

西村京太郎先生のご冥福をお祈りいたします。合掌

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