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萩尾望都先生がアイズナー賞殿堂入り

◉アメリカはなんだかんだ言って映画の国ですから。どうしても作品の評価は、劇場公開用作品としてアメリカでも公開されたかどうかが、大きいようで。過去に合図の後で漫画殿堂入りしているのが宮崎駿監督と大友克洋先生であるというのが、非常に象徴的でしょう。もちろんお二人とも優れた漫画家ではありますが、日本の漫画界に与えた影響という意味では、萩尾望都先生の存在感は、別格ですから。

【萩尾望都さん、米漫画賞受賞で殿堂入り「漫画という文化を世界の人々が愛して下さり感謝」】読売新聞

 米国の権威ある漫画賞のアイズナー賞で、漫画家の萩尾望都さん(73)が、「コミックの殿堂」を受賞した。小学館が23日、発表した。
 同賞は漫画家の殿堂入りを認めるもの。小学館によると、日本人ではこれまでに手塚治虫さんや大友克洋さん、宮崎駿さんらが受賞しており、萩尾さんは7人目となる。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220723-OYT1T50225/

ヘッダーは、萩尾望都先生の『ポーの一族』の単行本カバーより。。

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■リアル・イグアナの娘■

日本ではまだまだ老人層を中心に、漫画に対する見下した部分があるのは間違いないでしょう。萩尾望都先生の親の世代にとっては、それが当然といえば当然でした。上尾先生の場合は両親、特に母親との確執が長らくあって。母親にとって娘のやっているのは仕事ではなく、遊びの延長の落書きだと思っていたようです。娘が文化勲章を受章しても、ピンと来ていなかったようで。

NHK の朝ドラで『ゲゲゲの女房』が放映され、全国的な朝の人気番組を見てようやく自分の娘が、朝ドラの主演となるような人物と同じ仕事をしていると、客観視できたようですが。それ以前は、漫画家ではなくせめて絵本作家になってくれないか……なんて話をしてたそうで。萩尾望都先生の母親にとっては、
 小説家>絵本作家>漫画家 
というヒエラルキーが、厳然と存在していたのでしょう。

■後世への影響■

多分将来的には萩尾先生をモデルにした、朝ドラが作られる可能性だって十分にあるでしょう。そうなった時、萩尾先生の母親は娘の才能や、これから日本を代表する文化の一つになる漫画の可能性に気付けなかった旧世代の人間として、悪役を割り振られる可能性が高いのですが。日本の文学の伝統を紐解けば、清少納言や紫式部、蒸し器部と言った女流文学の系譜の上で、語られるべき存在だと自分は思っています。

権威主義者は、漫画ごときを小説と同列におくなと言うかもしれませんが。いえいえ、萩尾望都先生の作品というのは、そういう存在なんですよ? 萩尾望都先生は24年組の出現によって、漫画家を目指す少女たちが大量に生まれ、現在の漫画家の総数の過半数、ちょっとしたら70%が女性ではないかという推計さえあります。『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴先生なども、その流れが生み出した才能。

■現代女流作家の雄■

新興の文化であった漫画界は、女性の才能をバカにせず受け入れ、育てていったわけで。日本の漫画で初めて単行本の初版100万部を超えた作品が、『キャンディ・キャンディ』であったように。『あしたのジョー』と入れ替わるように日本の漫画界を席巻したのは、『ベルサイユのばら』などをはじめとする少女漫画パワー。なのに、女性監督が少ない映画界の男ども───深田晃司監督や河村光庸プロデューサーらが、劇場版鬼滅の刃は映画界に貢献してないなどと、腐し始めたわけで。

もしも萩尾望都先生が24年組が、将来は映画監督になりたいという夢を持った時に、日本映画界にその受け皿があったら……。漫画界には大打撃だったでしょうけれど、日本の映画界にとっては女性監督が3割から4割ぐらいになっていたかもしれず。実際、萩尾先生より十歳ぐらい若い下の世代の女性漫画家で、本当は映画監督になりたかったという人は、自分の元担当でさえ複数名いますから。

残念ながら世の中には、萩尾望都先生が木原敏江先生などの作品を表現規制したい方々が、未だに大手を振っていますから。あの人たちは権威主義者でもありますから、「萩尾望都は別」とか言い出すでしょうけれど。本を焼くものは文化を焼くということで。警戒していきましょう。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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