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コミック市場大盛況と実感

◉自分が出版社の編集者だった頃、1995年前後は漫画市場は全盛期で、そういう意味では良い時代を経験させていただきました。でも、そこからは坂道を転がり落ちる感じで、特に雑誌がダメになりました。ただ、書籍自体はずっと安定して強く、要するに雑誌不況や単行本不況で右肩下がりだった訳です。ところが2015年に電子書籍市場が生まれて、これが一気にコレまでの下がった分をカバーし、過去最高に押し上げちゃいました。

【2020年コミック市場は紙+電子で6126億円、前年比23.0%増と2年連続急成長で過去最大規模に ~ 出版科学研究所調べ】HON.jp

 公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所は2月25日、2020年のコミック市場(紙と電子合計)が推計6126億円と、1978年の統計開始以来過去最大の市場規模になったことを発表した。2017年は前年比2.8%減、2018年は1.9%増だったが、2019年は12.8%増、2020年はコロナ禍による巣ごもり需要もあり23.0%と2年連続で急成長している。

 紙のコミックス(単行本)は、社会現象化した『鬼滅の刃』のヒットなどにより大幅プラス成長で2079億円(同24.9%増)。紙のコミック誌は627億円(同13.2%減)。紙の市場合計は2706億円(同13.4%増)。電子コミックは3420億円(同31.9%増)なので、コミック市場における電子の占有率は55.8%となった。

なぜこんな状況になったのか? もちろん『鬼滅の刃』のメガヒットはあるでしょう。映画は、このコロナ禍で自分ですら映画館で観た本数が半減する中、メガヒット。一昨年のアニメから漫画の最終回、そして映画の流れもタイミングが良かったのでしょう。でも、それだけではないでしょうね。

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■電子書籍の利点■

まず、単行本を買う人にとって、本好きであればあるほど、買った本の置き場に困るわけで。自分のように、数千冊の本を持ってると、もう置き場でイッパイイッパイ。ところが、電子書籍だとiPad ProやMediaPad M5の小さなボディの、さらに親指のツメほどのmicroSDXCに5000冊から7000冊が入ってて、1TBのカードなら1万冊近く入るでしょう。普通なら、四畳半が本で天井まで埋まる量です。

本好きが昂じて日本文学科を出て、出版社の編集になった自分に、印刷書籍の良さをレクチャーしてくる釈迦に説法マンがよく出現しますが。自分ほどの蔵書がある人はだいたい、本の置き場に困って電子書籍という人が多いですね。あと、電子書籍は面白そうと思ってから読めるまでの時間が圧倒的に短い。本屋に行く必要もなく、配送を待つ時間もダウンロードの時間だけですからね。

■連載引き延ばしの変化■

もう一点、ジャンプは『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』など、むやみに単行本の引き延ばしを辞めて、切りの良いところで連載終了という、キレイな終わり方をするようになりましたね。その嚆矢は、意外と早く『デスノート』から。が…大場つぐみ先生は『バクマン。』でも、主人公のライバル新妻エイジに自分の作品打ち切りを主張させるなど、その姿勢は一貫していますね。

最初期のヒット作『男一匹ガキ大将』の頃から、連載引き延ばしはジャンプの悪癖でしたが、そこを転換できたのは大きいです。単行本は20巻前後が買いやすいですから。で、ジャンプはがも…大場つぐみ先生の影響を受けている若手作家が多く、編集者もその考えを共有できているのでしょうね。後は『HUNTER×HUNTER』を打ち切るか、雑誌を移籍させるか、奥さんの主戦場の講談社に送り出すだけですね(毒)。

■第三の波に期待■

自分自身は、印刷雑誌が弱くなった分、ウェブ雑誌に期待しています。流通販売という点で、書店での本との出逢いは素晴らしいですが、それって人口30万人以上の県庁所在地レベルの話で、地方の本屋は貧弱なモノです。でも電子系なら、全国に同時流通可能ですし、リスクも減らせますからね。本屋は映画館と同じく、贅沢な存在になるでしょう。ウェブ雑誌も玉石混淆ですが、自分は期待したいです。

もう一点、インディ・レーベルというか、個人出版による市場の拡大を期待します。雑誌を通さない作家は、基本的な製版のルールとか疎くなりますが。それは雑誌の編集も、かなりいい加減になっていますし。そこら辺のノウハウはある程度は共有されるので、大丈夫に思います。縦スクロールは一定の市場を形成するでしょうけれど。小規模だけど食える市場の出現に期待ですかね。この本↓はそのための実験でもありますが。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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