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呉座勇一氏が日文研を提訴
◉歴史学者で国際日本文化研究センター(日文研)の助教だった呉座勇一氏が、人間文化研究機構を相手取って訴訟を起こしました。そもそもの処分に対して、重すぎるという批判や疑義はTwitter上でも畳み掛けたのですが、当人が訴訟に踏み切りました。裁判の行方はわかりませんが、過剰な自粛や過剰な処罰は、日本人の悪い癖だとは思います。裁判によって適性なラインが明らかになるかはわかりませんが。行方を見守りたいです。
【ベストセラー「応仁の乱」著者が日文研を提訴 SNS不適切発言で「准教授取り消し」巡り】京都新聞
会員制交流サイト(SNS)上で不適切な発言を繰り返したことで無期雇用資格を取り消されたのは不当だとして、国際日本文化研究センター(京都市西京区)の助教だった呉座勇一氏が29日までに、同センターを運営する人間文化研究機構(東京)を相手取り、無期雇用の地位にあることを確認する訴えを京都地裁に起こした。
呉座氏は、ベストセラー「応仁の乱」などで知られる若手研究者。公開範囲を限定した個人のツイッターアカウントで、特定の女性研究者をおとしめるような投稿を長期にわたって続けていたことが3月に発覚。9月に同機構から停職1カ月の懲戒処分を受け、現在は非常勤の機関研究員となっている。
ヘッダーの写真はnoteのフォトギャラリーより、五色塚古墳だそうです。
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■そもそも日文研の存在意義とは?■
『応仁の乱』は従来の歴史の通説や俗説を覆した著書で、歴史関係の書籍としては異例のベストセラーになりました。自分も、多少歴史は好きな部類なので、楽しく拝読しました。通説が覆されていく面白さを、感じられる名著だと思います。ただ、実際にあったことがある人などの意見では、かなり癖がある人物なのは事実のようですが。自分も、日頃の発言自体はかなり棘があると言うか、割とストレートな物言いがあったので。でも、それ自体はそこまで問題視すべきなのか?
旧来の学説を覆すような学者というのは、孔子が言うところの狂か狷の人であって、他人が馬鹿にしてやらないことをやって突破したり、異常な頑固さがあるもの。それは白川静博士や岡田英弘博士などもそうで、世間の常識とか批判に屈しない、過剰なエネルギーや偏屈な部分がありましたが。それは当然です。「角を矯めて牛を殺す」という言葉がありますが、元々は国際日本文化研究センターは、こういう癖のある研究者を育てる部分もあったのに。
■備忘録として:識者たちの御意見■
それでは、Twitter上で見かけたいろんな意見を、Togetter的にまとめますかね。元々自分は、noteは自己Togetter的に使っていたので。まずは中田大悟教授の意見を。
これまでの業界内の構造的な問題を、呉座先生に押し付けるような形で(少なくとも引き合いに出して)議論してしまったことは疑いないだろう。結果として、呉座先生が自身でやってしまったこと以上の罪業を背負わされて、吊るされてしまった可能性は大いにあるはずだ。↓
— 中田大悟 NAKATA Daigo (@dig_nkt_v2) October 24, 2021
日文研の判断が、呉座先生の失言内容に応じて妥当なところで決まっているのならば理解できるが、もし、このような、彼自身のコントロールの効かない、批判のアイコン化とされていく中での炎上を根拠にして処罰されたとしたら、それはあまりに妥当性を欠いた判断ではないか。↓
— 中田大悟 NAKATA Daigo (@dig_nkt_v2) October 24, 2021
炎上してけしからんということで罰したとすれば、学術機関である日文研が感情的に研究者を処罰したに等しい。よもや日文研がと思いたいが、今回の裁定内容はそれを疑わせるような重さだ。また、繰り返すが、処分の妥当性を明確にせねば、炎上した研究者は停職相当と全国の大学等の基準とされてしまう。
— 中田大悟 NAKATA Daigo (@dig_nkt_v2) October 24, 2021
アカデミズム内部の事情はワカランですが、鍵アカウントの内容を引きずり出して、炎上させるのは問題じゃないのかと、門外漢は素直に思いますけどね。これに対して、弁護士でもある法学者の玉井東大教授の意見がこちら。
一般的な準則になりうるのかどうか。私は疑問ですが、一般化されうるならば、国会で追及されるべきですね。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) October 24, 2021
そして、問われるキャンセルカルチャーに対する、アカデミズムの問題点。たぶん、これで呉座先生の首をとったぜと浮かれていた人間は、下手すればこれが一種の判例となって、今後は自身にブーメランや火の粉が降り掛かってくる教授が、ボロボロでてきそうですね。
あちこちの学会研究会の抗議声明は、呉座氏に対する処分を正当化する証拠として国際日本文化研究センター側から確実に裁判所に提出されるので、処分が重すぎると考えるなら、その旨も表明すべきでしょう。 https://t.co/Wpbf7kjLzN
— 山口貴士 aka無駄に感じが悪いヤマベン (@otakulawyer) October 29, 2021
そして、池内恵東大教授が、構造的な問題を指摘。人間文化機構が、色々と問題をはらんでいそうですね。知らんけど。これも、文系学部への圧迫になるのか?
いい子ぶって声明出して人事介入許してほっかむりかっこ悪いね https://t.co/B7Q4J5Vue5
— Satoshi Ikeuchi 池内恵 (@chutoislam) October 29, 2021
何度も言うが、こうなることを分かっていなくて騒いだ人たちは軽率で洞察力がなく、こうなることを分かっていて騒いだ人たちは労働者の敵です。彼らこそ大学から去るべきと個人的には思う(が去らせる手段がない方が良いと思う) https://t.co/hnIOg7XQfx
— Satoshi Ikeuchi 池内恵 (@chutoislam) October 29, 2021
もともと独立していた日文研の上部に、文科省が置いた「中抜き機関」のような人間文化研究機構があって、そこが本来は日文研が決めた人事を承認する形式だけの人事権を持っていたのが、この問題で虎視眈々と狙っていた人事権の行使に出たのではないかと疑われる。
— Satoshi Ikeuchi 池内恵 (@chutoislam) October 29, 2021
学術会議問題では「首相は学術会議が選挙して推薦した会員の任命を拒否できない」と騒いだ教員たちが、日文研が決定した人事を、文科省と日文研の間になぜか挟まっている人間文化研究機構なるお役所が引っくり返すのを支持しているのは、低劣の極みというしかない。全て無くしてしまうといい。
— Satoshi Ikeuchi 池内恵 (@chutoislam) October 29, 2021
これは当人は生活の糧もあるだろうし研究を続けながら裁判では徹底的に争ってもらった上で、文科省と日文研の間に中抜き機関のように存在する人間文化研究機構の関与の解明と、組織の性質や実態の解明、その存在意義の国民的議論、必要なら改廃を求める運動を起こすべき。政治家に働きかけましょう。
— Satoshi Ikeuchi 池内恵 (@chutoislam) October 29, 2021
門外漢には良うわからんですが、学術会議の問題と絡んできそうな予感。再び、玉井教授のご意見を。
「呉座氏のパーソナリティはいろいろ課題があると指摘されていますが、それとは分けて考えないと、われわれ被雇用者自身の首を絞めてしまうかもしれません」。これは当然で、皆に好かれる人の権利ならば、わざわざ法に照らすまでもなく守られる。嫌われる人、嫌がられる発言にこそ、表現の自由が重要。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) October 30, 2021
同じく、大学からの解雇と解雇と戦う大月隆寛氏の意見も。政治側の思惑も、見えてきますね。
日文研その他共同利用研統括しとる「人間文化研究機構」ってこれやで。
— king-biscuit (@kingbiscuitSIU) October 29, 2021
平川南がシャッポやがな。
「歴史学」界隈は(∩ ゚д゚)アーアーキコエナーイ 確定やわな。 pic.twitter.com/bBOPGnS56b
「懲戒」&「テニュア剥奪」「降格」処分がこのたてつけでどういう「政治」で決定されていったのか、どこまで裁判で明るみに出してゆけるか、やろなぁ、勝負どころは。
— king-biscuit (@kingbiscuitSIU) October 29, 2021
所属機構の意向が主導したのか、それともこの人間文化研究機構の役員会なり何なりで大筋決められていったのか、それらの過程で文科省の意向なり示唆なり何なりがどの部分でどういう具合に働いていたのかいなかったのか、などポイントはいくつか考えられるわな。
— king-biscuit (@kingbiscuitSIU) October 29, 2021
こりゃ国立大に根を張っとる領域、歴史学や考古学やいずれその界隈の、いまどき本邦人文系アカデミアw≒「学閥」「学匪」の内側から、何かまともに声があがったり、支援なり何なりの動きはまず出てきようがないだろうな、申し訳ないが。
— king-biscuit (@kingbiscuitSIU) October 29, 2021
んまぁ、そうでしょうね。事なかれ主義ですし。いつも参考にさせていただいている、小森健太朗先生の御意見も。
大学の、特に人文系の研究者は、呉座氏の不当な処遇に対して、学会名などで抗議すべきでしょう。池内先生のご指摘によれば、学術の人事権の独立が侵され、日文研の決定人事が外部の力で覆されたらしい。
— 小森健太朗@相撲ミステリの人 (@komorikentarou) October 29, 2021
呉座さんの処遇問題と学術会議の人脈による圧力問題が連動しているような気はしていたが、池内先生の御発言でそれが裏付けられた感じ。
— 小森健太朗@相撲ミステリの人 (@komorikentarou) October 30, 2021
そして、鴈琳氏の諦念も含んだツイートも。
学術会議問題と呉座さんの不当な処分の問題で、人文系マジで統廃合されて潰れるかもな。一回更地にでもなれば良いんだ。土台、図書館にきちんと本さえあれば大丈夫な世界なのだから。
— 雁琳(がんりん) (@ganrim_) October 30, 2021
実はこれまでも、人文社会科学系だと「保守系だから」「右翼だから」大学に就職出来ない(つまり、内部で採用に強硬に反対する連中が出てきて話が流れる)という事例なんかは、表面に出てこないだけで結構あるんですよね。 https://t.co/ckpdikErkA
— 雁琳(がんりん) (@ganrim_) October 30, 2021
大学の世界における「右派」「保守派」の扱い、殆ど差別に等しいものがありますからね。左派の中には酷いものになると、口を利かない、名刺を受け取らない、研究会などで同席しないようにするなんていう人もいる。これ差別以外の何物でもなくないですか。 https://t.co/pjGxf0E2qw
— 雁琳(がんりん) (@ganrim_) October 30, 2021
某国立文系単科大にいましたが、凄かったですよ。保守的、自国に肯定的なことを少しでも言えば村八分状態でした。精神的に追い詰めて離職させるのが定番でしたね。私の同僚も病んで辞めてしまいました。「外国人を十把一絡げに弱者扱いするのはおかしい」と発言しただけでだったのですが。 https://t.co/bLP7Or1nus
— Yoshida Masah (@yoshidamasah) October 30, 2021
小人閑居して不善を為す。アカデミシャン閑居して反政府活動をなす。そして、自分の子分をポストにつけてやることで、強固な学閥を作っていく。バカバカしいですね。学問の體をなしていない学問は、一回潰れたほうが良いのかも。不利なデータを隠すとか。
■ブーメランはマスコミがガード?■
繰り返しますが、鍵垢で発言した内容をスクリーンショットで外部に持ち出して、それって問題ないのかという問題がありますけれどね。自分は当人から削除要請があったものや、個人情報がうっかり混入したものなど以外は基本的に削除しない主義ですが、鍵垢はそもそも公表するのを前提としていませんしね。語刺しに問題がなかったとは言いませんが、名誉毀損で訴えてもいいとこ10万円か多くても50万ぐらいの事例だと思うんですけれどねぇ。
先に、こういう動きは結局ブーメランになるのでは……と危惧を書いた理由は、批判された側の過去の発言にも、問題が多々あったからですしね。この件についてのネットでの批判は疑義は、こちらにまとめておきました。この人達は左派マスコミが守ってくれるので、自分たちは燃やされないと思ってるのなら、大きな間違いだと思うんですけれどねぇ。自分はもうアカデミズムとは距離を置いてますが、成り行きは見守りたいと思います。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ