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さいとう・たかを先生死去

◉ああ、みなもと太郎先生に続いて、戦後昭和から平成を彩った巨匠がまた一人……。ちばてつや先生が昭和14年(1939年)生まれですから、さいとう・たかを先生より年上となると、藤子不二雄A先生やわたなべまさこ先生など、もう数えるほどですね。直前まで『ゴルゴ13』と『鬼平犯科帳』の連載2本を抱え、バリバリの現役だったというのも、すごいですが。ご本人にはパーティで数回お会いした程度ですが、存在感と風格が段違いでした。

【さいとう・たかをさん死去、84歳 24日に膵臓がんで「ゴルゴ13」継続】日刊スポーツ

「ゴルゴ13」で知られる劇画家さいとう・たかをさん(本名・齊藤隆夫)が24日午前10時42分、膵臓(すいぞう)がんのため亡くなった。84歳だった。29日、小学館のビックコミック編集部と、さいとう・プロダクション公式サイトで発表した。葬儀は新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、親族のみで執り行ったという。「ゴルゴ13」の連載は、さいとうさんの遺志のもと、スタッフと編集部が協力して今後も継続の予定だという。

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「オレは依頼があった仕事しかしない」と、プロフェッショナルに徹した作家でした。つまり、読者や編集部が望むエンターテイメント作品を、描き続けたわけで。それは、作家性を全面に押し出したタイプよりも評価が低くなりがちですが。自分はそれは違うのではないかと思っています。エンターテイメントでガッツリ稼いでくれる人がいるからこそ、実験的なものやニッチを狙った作品も存在できるわけで。王道を歩み続けた人生だったと。まさに、御自身がゴルゴ13でした。

さいとう・たかを先生、人間の内面描写は少女漫画のほうが優れていると、一時期は真剣に少女漫画家の転向を考えておられていたとか。実際、2本ほど少女漫画も書かれているんですよね。みなもと太郎先生の指摘で始めて知りましたが。そういう葛藤の末の、エンターテイメント路線への専念。プロフェッショナルと言わずして、なんと言うべきか。それでずっと売れっ子だったんですから。でも、エンタメに徹しながらも描いたジャンルは膨大。

『バロム・1』から『無用ノ介』など、多岐にわたりますし。個人的には、『サバイバル』は直撃世代で、実はこれが一番好きなさいとう作品かもしれません。完全分業制のプロダクション方式や、作家としては珍しくリイド社を立ち上げたりと、その面でも先進的でしたが、完全にさいとう先生の方式を踏襲できた作家がいないのは、それだけ稀有な存在だったということでしょう。この面においても、特異な存在でした。でも、ここらへんの評価も、未来ではもっと高まるでしょう。

そのマンガ論は、一部の書籍で確認できるのみですが、物凄くレベルが高いです。小池一夫先生にもたぶん、大きな影響を与えているでしょうね。自分も、直弟子や編集者から間接的にお聞きしただけですが、徹底的に漫画を考え、商売として食っていくことを誰よりも考えた人でしょう。それは、漫画という仕事をを生涯認めてくれなかった実母に対する、精一杯の存在証明だったのでしょう。多くが、口伝として消えてしまうのが惜しいです。できるだけ、次世代に伝えていきたいと思います。

巨匠さいとう・たかを先生のご冥福をお祈りします。合掌

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