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防衛装備の第三国への輸出解禁問題

◉なんか、岸田総理の政治倫理審査会殴り込みやら大谷翔平選手結婚やらで、すっかりこの話題も吹っ飛んでしまいましたが。防衛装備──もっと具体的に言えばF-3次期戦闘機なんですが。この動きも、日本の今後を考えれば、非常に重要な事案です。下手したら、自民党と公明党が、連立解消する可能性もあります。個人的には、そちらのほうが両政党にとって、良い選択と思います。武器輸出=死の商人、みたいなイメージがありますが、安全保障ってそう単純なものではなく、軍事という金食い虫は、無くしてしまえばいいというものではないですしね。

【次期戦闘機、輸出容認への調整前進 公明「距離縮まる」】日経新聞

自民党の渡海紀三朗、公明党の高木陽介両政調会長は28日、国会内で他国と共同開発する防衛装備の第三国への輸出解禁についての協議を開いた。日英伊3カ国で共同開発・生産する次期戦闘機の完成品を巡り、日本からの輸出容認に関する調整が前進した。

高木氏は終了後、記者団に「互いの認識や問題点の整理などを含めてだいぶ距離が縮まってきたのは確かだ」と述べた。「いくつかの点でなかなかまだ合意できていない。速やかに合意を目指したい」と話した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA278J40X20C24A2000000/

ヘッダーはF-3戦闘機のイメージ図です。

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■単独開発は困難■

現実問題として、兵器開発はもう、一国では難しく。世界の軍事費の半分を一国で賄うほどのアメリカでも、F-35の開発は単独では無理で、共同開発でした。日本では、石原慎太郎氏などがF-2戦闘機は日本単独で素晴らしい戦闘機が開発できたのにアメリカの横槍で潰された云々……という〝神話〟が流布しているのですけれど、んなことはないです。三菱のリージョナルジェットの大混乱と失敗を見ればわかるように、それは単なる国試主義、夜郎自大に過ぎません。日本はIHIがようやくXF9-1エンジンを開発できましたが、アメリカから30年は遅れています。

現在、イギリスとイタリアとで共同開発中の次期戦闘機も、昔の区分なら支援戦闘機で、あくまでも主力戦闘機の補助的な役割。F-4とF-5、F-15とF-16のようなもので、第5世代のステルス機であるF-35の補助的な役割で、でも日本はアメリカのような潤沢な予算がないので、対艦攻撃とかいろいろ出来る、マルチロール機にせざるを得ないのであって。戦闘機の開発では実績があるイギリスやイタリアと共同で、開発するしかないのが現実。ただ、アメリカ完全依存から、ちょっと独自性が高まった感じですかね。

アメリカとしても、自国で独占的に研究開発するよりは、同盟国や友邦で独自開発した技術を共有するほうが、けっきょくは研究開発費全体のパイは大きくなりますし。F-35という絶対的な主力戦闘機は握っていますし、支援戦闘機は逆に友好国に研究開発させて、その成果を共有したほうが、良いですからね。アメリカが軍事強国とはいえ、やはり大陸国と島国では、戦術が違いますから、日英伊の島国と半島国家にあった支援戦闘機のスタイルがあり、また費用対効果だって違いますからね。

■輸出が産業の鍵■

武器の開発には金がかかり、それを自国の軍隊だけに売っていたら、儲けは薄いです。国産単独開発ならば、確かに防衛上の安全性は高まります。例えば、アメリカがいきなり「F-35など、今後日本には輸出しない」と宣言されたら、日本の防衛能力は一気に落ちてしまいます。でも、単独開発では研究開発費がペイしないことが多く、実際に防衛産業から部分撤退する企業もあります。外国に輸出して、利益を確保するのは必須です。共同開発ならば、武器の融通面でも、プラスになりますしね。

加えて、日本の防衛装備に関しては、アジア各国の期待もあると思うんですよね。戦闘機とか、メンテナンスは欠かせませんし、実際にF-35の整備とか、韓国は日本ではやりたくないと駄々をこね、アメリカかオーストラリアしか選択肢がない状況です。次期戦闘機に関しても、東南アジア各国は、ただ購入したら終わりではなく、メンテナンスを考えればイギリスやイタリアに出すのは大変、日本が近いので購入しても安心感があるでしょうし。上手くすれば、将来的には日本からの技術移転で自国の航空産業立ち上げも、期待できますしね。

日本の場合、輸出できる武器は、やはり潜水艦ですね。原子力潜水艦は、原子炉周りの冷却装置とか止められないので、どうしても静粛性で限界がありますが。日本のソウリュウ型は、その点で優秀。日本は二次大戦でアメリカの潜水艦に、散々やられましたから、潜水艦は力を入れてきましたし。潜水艦とセットで、対潜哨戒能力の高さも。あとは、市街地で10式戦車はコンパクトで、動きが良さそうですが。いずれにしろ、軍用品は性能が高く、民間ようへの技術転化もできますから、民需産業にとっても大事。

■公明党の立ち位置■

20代の若い人にはピンとこないでしょうけれども、昔の公明党はかなり左寄りで、有権者の生活重視の福祉政党という側面が強かったんですよね。もちろんそれは、創価学会の信者の生活にも直結していますし。その意味では、毀誉褒貶ある池田大作第三代会長もまた、戦後民主主義の価値観を強く持ち、戦後の平和主義を称賛していた部分があります。福祉の党と平和の党という、二枚看板はずっと変わっていないですし、むしろ防衛装備に関してはまずは反対するのが、党としての一貫性からは必要です。

多分にこれは、「公明党の支持者が納得する説明を、自民党側からやってくれ」というシークレットメッセージであって。ある程度のところで矛を収めるのではないかと、自分は推測しています。こちらの駐日英国大使の動きも、公明党向けの外堀を埋める行為で。イギリスがこう言ってるのだから、公明党も納得してくれという遠回しな動き。これは自民党の暴走ではなく、国際的かコンセンサスなんだよというのは、公明党の昔からの国際協調主義とも、合致しますしね。池田会長は、他国の勲章が大好きでしたし。

しかし、さすがに外交ではアメリカを圧倒するイギリス、駐日大使にこういう切れ者をちゃんと配備されてるんですね。X(旧Twitter)で流れてきた動画を見ると、流暢な日本語で難しい問題もわかりやすく説明され、「対等なパートナーシップ」と日本を立てつつ釘を刺す。ここらへんは、安倍晋三元ソウルの開かれたアジア太平洋地域の理念と戦略を、英国も評価したがゆえ。インド・オーストラリア・ニュージーランドと、旧英連邦の国も多く、コミットしやすいですしね。次期戦闘機の共同開発は、絶妙な一手でした。


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