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高温ガス炉再稼働と失われた10年

◉高温ガス炉──超高温ガス炉という呼び名が一般的ですが、鮟鱇と戦車で有名な茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構の、高温工学試験研究炉(HTTR)が10年振り、今月末に再稼働する見通しとのこと。中国では今年、商用実証炉の稼働も計画される超高温ガス炉ですが。メルトダウンしづらい構造で安全性が高い第四世代原子炉の、再有望株がが、ようやく日本でも再稼働です。ほんと、ようやく。

【高温ガス炉再稼働 失われた10年を取り戻せ】産経新聞

 わが国のエネルギー問題の解決につながる新展開として期待したい。
 日本原子力研究開発機構の「高温工学試験研究炉(HTTR)」(茨城県大洗町)が今月末に再稼働する見通しだ。
 HTTRは「高温ガス炉」と呼ばれるタイプの次世代小型原発だ。
(中略)
 1998年に運転を始めたHTTRは、高温ガス炉の開発で世界の先頭に立っていたのだが、福島事故で国内の他原発同様、長期停止を余儀なくされていた。

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■民主党政権が奪った未来■

悪夢の民主党政権の中でも、戦後最悪の宰相と評しても過言ではないのが菅直人元総理大臣でしょう。少なくとも、自分はそう思っています。何の法的根拠も強制力もない「首相の要請」という形で原子力発電所を止め、エネルギー問題という国家の一大事を歪めたわけですから。日本が無謀な日米開戦に踏み込んだのも、石油を巡るエネルギー問題でしたし、ロッキード事件の背後にも、日米のエネルギー外交の対立が囁かれていますが。

民主党政権は三年ほどでしたが、その時の愚策が今もこうやって、日本にダメージを与え続けている部分があるから、歴史修正主義者があの時代を美化しようとも、否を突きつけられるわけで。原発を止めたことで火力発電のために失われた国富はもちろんですが、未来の技術研究も奪ったわけで。事業仕分けでの予算削減で失われた未来と併せて、悪夢は今も続いているのです。間違いなく。

■日中の超高温ガス炉比較■

民主党政権批判はコレぐらいにして。記事で《1998年に運転を始めたHTTRは、高温ガス炉の開発で世界の先頭に立っていた》というのは大袈裟でなく。超高温ガス炉はその名のとおり、超高温を発するのが特徴ですが。日本の超高温ガス炉は、中国のそれより高温です。日本のHTTRで採用されているのはブロック型超高温ガス炉で、中国の高温ガス炉実験炉HTR-10で採用されているペブル型超高温ガス炉と、形式に違いがあります。

ドイツの協力を得た中国の清華大学核能・新能技術研究院のペブルベット型試験炉HTR-10が、2003年1月に原子炉出口温度700℃を達成しました。一方、日本のHTTRは2004年3月に高温試験運転を開始、同年4月に原子炉出口冷却材温度950℃を世界で初めて達成。さらに2010年3月に出口温度950℃で50日間の連続運転を達成。少し古い情報ですがこうやって見ると、日本の研究はとても順調だったのがわかります。

■なぜ超高温が必要なのか?■

なぜ温度が大事かと言えば、超高温ガス炉は発電自体ももちろん重要なんですが、この超高温を利用した水素製造も期待されています。しかし高効率に水素を製造するためには、950℃もしくはそれ以上の熱が必要なんだそうです。日本は高温に耐える素材研究も含めて、1000℃を目標にしていたのですが……戦後最悪の内閣総理大臣の独断で、失われた10年に突入してしまったわけです。

この超高温を利用しての原子力石炭液化や、原子力製鉄も研究されています。鉄の融点は1538℃ですから、千数百度の温度があれば、製鉄も可能なんだそうで。水素の製造や石炭液化自体は、クリーンエネルギーの確保や、燃料の複数確保という点でも、重要でしょう。無煙炭や瀝青炭など質に違いは有れど、石炭は化石燃料としてはかなぁ〜り豊富ですから。原発が水素発電や石炭発電とも、密接という。

■これからの10年に期待■

小型モジュール原子炉(SMR)であり、現在の第三世代原発の3分の1程度しか出力がないですが、そのぶんメルトダウンしづらい構造。冷却材にヘリウムを使うので、空焚きが起きない構造ですしね。結果的に、第三世代原発に必須の硬く古く安定した岩盤と、冷却用の水が不要なため、砂漠でも高山でも地盤が軟弱な沖積平野でも、建築が可能ですから。反原発団体の「東京へ原発を」の理想が、実現可能に。

アメリカでは2029年に商用炉が稼働予定。日本は失われた10年が本当に痛いのですが、今さら嘆いても仕方がないですね。菅直人元総理大臣の愚行は、今後も教訓として言い続ける必要はありますが。これからの10年で、より安全性や超高温が実現できることを、切に期待します。日本で再生可能エネルギーは、地熱発電ぐらいしか有望株はないですから。第四世代原子炉の研究が鍵かと。

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