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戦艦大和のコスパ論

◉ココで出てくる〝昭和三大馬鹿査定〟とは、田谷主計官の発言で「昭和の三大馬鹿査定、と言われるものがある。 それは戦艦大和・武蔵、伊勢湾干拓、青函トンネルだ」というもの。そういう意味で、大和型戦艦の大和と武蔵は、無駄の象徴と言われることが多いです。でも、話はそう単純じゃないようで。ある意味で、結果論の側面もありますから。

【世界最大の戦艦「大和」をコスパで考える 「バカ高い」「税金の無駄使い」は本当か?】乗り物ニュース

「昭和三大馬鹿査定」の一つにも挙げられた世界最大の大和型戦艦は「高い買い物」だったのでしょうか。当時のほかの艦艇や航空機、空母と比較すると、戦艦「大和」「武蔵」の「コスパ」が見えてきます。

詳しくはリンク先を読んでいただくとして。自分も、大艦巨砲主義を時代遅れ・時代の変化について行けなかった象徴の意味で使うことは多いですが。あの時点での選択肢としては悪くなかったんですよね。

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■空母機動隊の画期■

空母打撃群を中心とした機動部隊による有効性自体が、日本の真珠湾攻撃で始めて実証された部分があり、逆に言えばそこに気付いた山本五十六の先見の明は、百年後には冷静に評価されるでしょう。アメリカ自身も、自国が攻撃されてようやく気付いたわけで。それから70年以上、ナチスドイツが実証したミサイルによる長距離攻撃と合わせて、戦後長らく戦術に中心にあります。

日本も、実証されたら空母戦略に比重を置き、大和型三番艦信濃は空母に改造され、大日本帝国海軍は意外と柔軟に現実に対処してるんですよね。むしろ、アメリカの方が戦後まで、戦艦を作っている。週刊空母と呼ばれるぐらい、ガンガンに空母を作りつつ、戦艦による大艦巨砲主義のドグマは、簡単に捨てられないのが現実なんでしょう。逆に言えば、空母の活用はそれぐらい画期的だったわけで。

■聯合艦隊解散之辞の危険性■

思うに、日本は日露戦争での日本海海戦という世界の軍事教科書に載るような大勝利の成功体験によって、大艦巨砲主義に陥ったわけで。長嶋茂雄さんの名言「失敗は成功のマザー」は同時に、「成功は失敗のファーザー」でもあるわけです。その点に関して言えば、名文とされる『聯合艦隊解散之辞』に、すでに精神主義と失敗の萌芽を、自分は見ちゃいます。

而シテ武力ナル物ハ艦船兵器等ノミニアラズシテ、之ヲ活用スル無形ノ實力ニアリ、百發百中ノ一砲能ク百發一中ノ敵砲百門ニ對抗シ得ルヲ覺ラバ、我等軍人ハ主トシテ武力ヲ形而上ニ求メザルベカラズ。

訳文:戦力というものは、ただ艦船兵器等有形のものや数だけで定まるものではなく、これを活用する能力すなわち無形の実力にも左右される。百発百中の砲一門は百発一中、いうなれば百発打っても一発しか当たらないような砲の百門と対抗することができるのであって、この理に気づくなら、われわれ軍人は無形の実力の充実すなわち訓練に主点を置かなければならない。

一見するとヨサゲに見えますが。百発百中の砲を百発二百中にすることは不可能ですが、百発一中の砲を百発二中にすることは簡単ですから。「アメリカには物量で負けただけ」というのは、一番みっともない言い訳で、負け惜しみ。物量で負けたってのは、戦争でもっとも大事な部分で負けたということ。項羽に連戦連敗の劉邦が、最後に覇者になれた理由ぐらい、歴史に学べと言いたいです。

■おぢいさんのランプ■

日本も、過去の成功体験に拘泥する人がいます。元dadaのbibibi氏も、繰り返し昭和の時代は良かったを繰り返しますが。でも、もう昭和にも明治にも江戸時代にも戻れない。時代は移り変わる。ブルーギルが入ったために小魚が激減した湖沼から、ブルーギルを完全排除したら元に戻るかと思ったら、今まで繁茂しなかった水草が異常生長して、小魚は増えないという状況になったように。

自分は保守派を自認しますが、国粋主義者でもないし、守旧派でもないです。少なくとも、そうならないように気を付けています。『ごん狐』で知られる童話作家新美南吉の名作『おぢいさんのランプ』の精神を、大事だと思うが故に。歴史好き故に、そういう懐古趣味的回帰運動は、ことごとく失敗しているのを、知るが故に。大和は結果論では大失敗ですが、結果論ほどくだらないモノはありません。

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