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浅田彰氏、舟に刻みて剣を求む

◉『構造と力』で一世を風靡し、ニューアカの旗手とされた浅田彰氏も、もう66歳ですか。昭和天皇が病に倒れ、皇居に向かって病気平癒を願って伏し拝む一般大衆を「土人」呼ばわりし、オウム真理教の犯罪が明らかになった時、中澤新一氏を対談で無理筋な擁護していたあたりで、この人は人間として信用できないなと感じたのですが。軍事費増大について、何か言ってるようです。

【この国はどこへ これだけは言いたい 軍備増強は「静かな危機」 批評家・浅田彰さん 66歳】毎日新聞

(前段略)
 1980年代に主著「構造と力」や「逃走論」でニューアカデミズムの旗手とされた批評家で京都芸術大教授(思想史)の浅田彰さん(66)は、岸田首相が推し進める軍備増強路線を「静かな危機」と呼ぶ。
 「安倍晋三元首相は戦後レジームからの脱却を主張し、日本を国際秩序の担い手とするため本格的な再軍備を進めようとした。それに敏感な人たちが反対した」。だからこそ、ハト派の宏池会から岸田政権が誕生した当初は、リベラルへの揺り戻しに期待する世論もあった。「ところがふたを開けたら、政権維持…

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https://mainichi.jp/articles/20230526/dde/012/040/004000c

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、

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■憲法9条平和教■

有料記事ですので、内容については引用しませんが。浅田氏が言ってるのは、要するに「軍備があると攻めてこられる・非武装ならば他国は攻めてこない」という、ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻以来、左派が口にするようになった謎理論を言ってるにすぎません。謎理論というか、昭和の時代の日本社会党の非武装中立論の言い換え にすぎないのですが。謎理論ではなくバカ理論ですね。

ロシア連邦のプーチン大統領が、ウクライナに要求したのが非武装化と中立化ですから、そんな理論はとっくに破綻してるのですが。憲法9条教とお花畑平和論が破綻したのに、情報をアップデートすることもできず、さりとて新たな理論を構築することもできず、十年一日 どころか半世紀一日のごとく、天動説に縋り付くしかできない。せいぜいが、「憲法9条は盾ではなく枷だ」とか、言い出したぐらいで。

「憲法9条は(他国の攻撃から日本を守る)盾ではなく(プーチン大統領のような独裁者を出さないための)枷だ」ってことですが。ならそんな素敵な憲法がある日本で、なぜ土井たか子社会党党首は「自民党の一党独裁打破!」と昭和の時代に叫び、平成令和のリベラル勢は安倍晋三元総理大臣を独裁者呼ばわりしたのでしょうかね? 憲法9条があれば 独裁者なんか出ないはずです。矛盾も甚だしい。

■言霊と穢れの日本■

昭和の時代のリベラルが主張した非武装中立論は要するに、言霊思想という日本の呪術的な発想に過ぎません。まさかの時に備えて保険に入るのに、保険に入ると病気を呼び込むという奇妙な連想。戦争に備えて軍隊があるし、病気に備えて医者が必要なのに、軍隊があるから戦争が起きる→だから軍隊をなくせば戦争が起こらない、という発想の飛躍。不吉な未来を考えれば 実際に 不吉な未来が実現してしまう、という発想です。

死穢や血穢という考えが、日本にはあります。死を連想させるものや関係があるものを穢れと認識し、それに近づくと実際に死んでしまうという発想です。博多祇園山笠 などでも、黒不浄・赤不浄・白不浄という考え方があります。近親者に葬式が出た人間は黒不浄、生理中の女性は血の穢れがあるということで赤不浄、出産した女性はこれまた 血の穢れがあれがあるということで白不浄。

単なる連想ゲーム なのですが、日本人の思考の深い部分に無意識に食い込んでいて、かなり厄介です。被差別部落の問題の、根本的な原因の一つです。何しろこの発想のせいで、日本とアメリカが戦争したら確実に負けるという冷静な分析を、都合の悪い未来として排除してしまい真珠湾攻撃を強行。結果的に日本中を焼け野原にされて、原子爆弾を2発も落とされて敗北し、国が滅びかけたのですから。浅田氏にも、この思考が。

■残酷なパラダイムシフト■

さて、この件について、Hori弁護士がこんなツイートをしています。

どちらが正しいか、それはロシア連邦が敗戦するかどうかが言えないのと同じ意味であって。浅田氏の思考の飛躍は、指摘できますけどね。

Hori弁護士は遠回しに語っていますが、浅田氏が無意識に、前提としている意識がズレてしまっていると指摘しているわけです。これはもうパラダイムシフトが起きているのに、それに気づかない怠惰な知識人……と言ってるも同然なんですが。
 ・ソビエト連邦→ロシア連邦
 ・中華人民共和国
 ・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)

左派が平和勢力と呼び、米帝と対峙する正義の側と呼んでたモノが、核兵器保有の軍事独裁国家だったと、バレちゃったンだから。考えるまでもないです。

(日本の)軍備増強=危険 は軍事独裁国家にとって都合がいい、利己的な理屈ですから。軍事費の状態を問題視するならば、中国の近年の軍事費の増大の方がはるかに 日本よりも莫大で、危険視すべきなのは当然なのに。日本のリベラルはその点は 問題視しないという ダブルスタンダードを、平気でしてきましたし。そのことについて疑問視する若い世代を、説得できる ロジックも何一つ構築できていないわけで。

■昭和の断末魔■

「そういう疑問自体が、日本を戦争へと導く危険な考え方だ! おまえはネトウヨだ!」とレッテル貼りで逃げ、疑問に答えようとしないわけです。正確には答えられないと言った方がいいのかもしれませんが。「軍備があるから攻められる、軍備がなれば攻められない。非武装中立万歳! 憲法9条は世界にひとつの平和憲法!」なんて糞ロジックが、ウクライナ侵攻で崩れ。

ロシア側がウクライナの非武装化と中立化を求めた時点で、憲法9条教とお花畑平和論はどの国にとって都合が良いか、大衆も理解した。なのに、知識人のつもりの浅田彰氏は、多分に言霊思想とか穢れの思想という純和風の呪術的発想の影響がある、軍備があるから戦争が起こる論についての、反省がないんです。んなもん、80年代から一部の保守派は疑問を呈していましたし。 福田恆存に至っては、1954年に『平和論の進め方についての疑問』を発表しています。

マスコミとアカデミズムという防御壁に守られてきた、日本の左翼知識人の知的怠惰が、双方向性のインターネットの出現とスマートフォンの普及によって、急速に瓦解しつつあります。でも、元京都大学准教授にして現京都芸術大学教授の浅田彰氏と、毎日新聞という昭和の残滓がこのような記事を出す。令和のように とても象徴的な気がします。当人たちが無自覚なのがとても痛々しいですが。

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