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鈴木健二さん死去

◉ああ、また昭和を飾った人が、またひとり。しかし95歳ですから、大往生ですね。実兄である鈴木清順監督が、2017年に亡くなられていますが、もうあと3ヶ月ちょっとで94歳でしたから、兄弟で長寿ですね。個人的には、ベストセラー『気くばりのすすめ』で語られるには惜しい、豪快な人生を歩まれた方で。学習研究社というお硬い出版社から1977年に出た『ビッグマン愚行録』には、学生時代の夜這いの失敗談や大酒の飲み比べ、番台の経験、海外での猥談などなど、実に興味深い話が満載で、江戸っ子の落語家の話を読むかのような面白さでした。

【NHK元アナウンサー 鈴木健二さん死去 95歳】NHKニュース

NHKの元アナウンサーで、「歴史への招待」や「クイズ面白ゼミナール」など数々の番組の司会で知られた鈴木健二さんが、3月29日に老衰のため亡くなりました。95歳でした。

数々の番組で司会を務め、「歴史への招待」では“鈴木講談”とも言われた、よどみない解説が人気を集めたほか、「クイズ面白ゼミナール」では、幅広い知識を生かしながら、柔らかい笑顔とユーモアたっぷりの語り口で番組を進行し、国民的なアナウンサーとしてお茶の間に親しまれました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240403/k10014411391000.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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思えば、鈴木健二アナウンサーを知ったのは、NHKの『歴史への正体』でした。自分はそれほど歴史好きではなかったのですが、この番組で歴史の面白さに目覚めた気がします。Wikipediaの番組一覧を見ると、1981年5月16日放送の『説教強盗帝都を揺るがす 昭和4年』や、1981年9月19日放送の『水雷艇「友鶴」謎の転覆 昭和9年』、1981年11月21日放送の『双葉山70連勝ならず 昭和14年』あたりが最古の記憶でしょうか? 再放送で見たものも加わって、ややゴッチャになっていますが。特に双葉山のエピソードは、鈴木さん自身が当時の両国国技館にいたため、まさに迫真の語りでした。

今となっては、新学説や新資料の発見で、放映できない回も多いでしょうけれども。個人的には全部を見返したいぐらい、面白そうな話が多く。特に水雷艇友鶴の転覆事件が、実は日本軍の神風願望とも、密接につながっていることを知り、驚いた記憶が。トップヘビーな設計になっていた水雷艇友鶴は、戦隊の幅と同じ波が起きた時に浮力が大きく減り、転覆事故を起こしてしまったのですが。これは、米軍に知られてはならない機密事項で、この設計の問題を知らない米軍艦隊が、嵐の中で日本軍と戦うと、転覆事故を起こす可能性があったのだと。それが、神風願望と重なる面白さ。

また『クイズ面白ゼミナール』の前口上「知るは楽しみなりと申しまして、知識をたくさん持つことは人生を楽しくしてくれるものでございます」は、自分にとってはとても大事な言葉になりました。自分は雑学屋でしかないですが、そもそも知るという行為の面白さを、功利主義を超えたところで楽しむことの大切さ。酒飲んで女抱いてヒャッハー!の人生も否定はしませんが、新しい知識を得ることで、人生が楽しくなる。そういう意味では、歴史を教養のベースにすべきと語った小谷野敦氏の言葉とも繋がって、歴史解説番組の面白さで、鈴木健二アナウンサーで、見事につながった感じです。

鈴木さんは、若い頃はかなりの酒豪で、大学時代の酒豪の後輩との飲み比べの話や、麻雀がめちゃくちゃ強く、友人と打つときにはイカサマができないように小指を縛って卓を囲んだ話とか、実に面白く。ギャンブル全般に強く、ポーカーも研究して必勝法を見つけたと語っておられましたね。真面目なNHKのアナウンサーというイメージですが、実際は阿佐田哲也先生の『麻雀放浪記』よろしく、戦争未亡人の家に夜這いを仕掛けたり、艶っぽい話も満載で、『ビッグマン愚行録』は傑作でした。この中の、インドの話とかも猥談満載で、大笑いでしたが。

知ることの楽しさ、歴史の面白さを教えてくださった鈴木健二さんの、御冥福をお祈りします。合掌



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