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白土三平先生死去

◉ああ、みなもと太郎先生、さいとう・たかを先生に続いてまた、巨匠が一人……。今年は悪い意味で、戦後漫画の節目になってしまいましたね。星野架名先生とか、まだお若かったのに。白戸先生は89歳ですから、大往生は大往生なんですが、やはり寂しいですね。自分は生まれる前の直撃世代ではないですが、子供のものと思われていた漫画を、大学生も読むようになったのは、まちがいなく1964年の『カムイ伝』の影響は大きいですから。

【漫画家の白土三平さん死去 「カムイ伝」「サスケ」―89歳】時事通信社

 「カムイ伝」「サスケ」など忍者が主人公の作品で知られる漫画家の白土三平(しらと・さんぺい、本名岡本登=おかもと・のぼる)さんが8日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため東京都内の病院で死去した。89歳だった。葬儀は近親者で済ませた。

 プロレタリア画家の岡本唐貴を父に東京都で生まれた。終戦後、紙芝居制作や人形劇団の活動を経て貸本漫画を手掛け、1957年に「こがらし剣士」でデビュー。59年から忍者を主人公にしつつ、抗争に明け暮れる戦国大名ら支配層に農民らが一揆であらがう壮大な歴史劇「忍者武芸帳―影丸伝―」を刊行。後に映画化された。

ヘッダーの写真はnoteのAmazonのDVD用パッケージ写真より。

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個人的には、『カムイ伝』を階級闘争史観漫画とか、唯物史観漫画という形で評価するのは、好きではありません。それは作品自体の面白さとは直接関係ない、思想的・政治的な評価ですから。その思想や政治的主張が間違っていたら、その作品までが間違っているという評価になってしまいますからね。実際、カール・マルクスの共産主義思想って、キリスト教に改宗したユダヤ人の家系という宗教コンプレックスを抱えたマルクスが、ユダヤ・キリスト教の千年王国思想を焼き直した疑似科学だと、バレています。

これは呉智英夫子も、『はだしのゲン』にはしばしば稚拙な政治的主張が登場するが、それ故に評価するのは間違いだと、指摘されていますしね。作品の面白さは、人間が描けているかが大事で、そこに稚拙な政治的主張が入っていても、逆に高度に哲学的な思想が込められていようとも、それ自体は何処まで行っても枝葉なんですね。『カムイ伝』も『カムイ外伝』も『サスケ』も、漫画として面白い。それで充分ではないでしょうか。それが最大の称賛です。

 小学館によると、「カムイ伝」シリーズなどの作画を手掛けた弟で漫画家の岡本鉄二さんも、白土さん死去から4日後の12日、間質性肺炎のため88歳で亡くなった。

なんと、4日ズレで弟の岡本鉄二先生も亡くなるとは。漫画家は、あんがい兄弟姉妹で漫画家になる人が多いのですが。有名なところではちばてつや先生とあきお先生と七三太朗先生、細川智栄子先生姉妹など。室山まゆみ先生も、姉妹のユニットですからね。白戸先生の妹さんは絵本作家の岡本颯子さんと、父親のプロレタリア画家の岡本唐貴氏も含め、芸術家一家だったという感じです。まぁ、父親の経歴から、共産主義思想と絡めるのは、仕方ないですが。あまり言及されんでしょうから、あえて書いておきます。

白土三平先生のご冥福をお祈りします。合掌

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