原子力機構が毎時100Lの水素製造試験装置を公開
◉毎時100リットルの水素、ですか。24時間で2400リットル、年間で87万6000リットル。この量が多いのか少ないのか、自分には分かりませんが。試験装置としてはここからスタートライン、2040年あたりの商用装置での水素生産を想定しているようですね。高温ガス炉がアメリカやイギリスでは2029年の稼働が目標ですから、今からこういう形で研究を進めておくのは必然。というか、第四世代原子炉の超高温ガス炉を利用しての、水素生成の研究自体はずっと前から始まっていますしね。
【毎時100リットルの水素を連続製造、原子力機構が試験装置を公開】日経XTEC
日本原子力研究開発機構(JAEA)は2021年12月24日、大洗研究所(茨城県大洗町)で研究を進める「連続水素製造試験装置」を公開した(図1)。現在の水素の製造能力は1時間あたり0.1m3(100リットル)。2030年代に高温ガス炉(HTGR)を熱源とした水素製造技術の確立を目指す。
(中略)
JAEAは21年7月、大洗研究所内にある高温ガス炉の試験炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」の運転をおよそ10年ぶりに再開している。水素製造設備とHTTRを安全に接続するための技術検証を進め、40年ごろまでに1時間あたり100~1000m3の水素製造を目指す。その後、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、民間への技術移転を進める考えだ。
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■キーワードは水素■
欧州はなぜか、EV車に前のめりですが。TOYOTAはEV車にも対応しつつ、基本的には水素エンジン推しなんですよね。高効率の人工光合成による蟻酸の生成も、水素を取り出すためですから。TOYOTAの量産燃料電池自動車MIRAIは、一回あたり3分程度の水素充填時間で、走行距離は約650kmという数字を叩き出していますから、着々と動いてる感じ。なお燃料電池と言っても、水素と酸素の電気化学反応により発生した、電気を利用しますから、水素大事。
アニメ『ガールズアンドパンツァー』で知られる茨城県大洗の高温工学試験研究炉(HTTR)で、第四世代原子炉の高温ガス炉の研究が進められていて、副産物の高温を利用しての原子力製鉄や水素生成の研究を進めていたのですが……ここでも水素で一本に繋がっていますね。ちなみにTOYOTAは内燃機関も見切ってはおらず、水素エンジンと二本立ての研究開発。ここらへんは、期待したいです。だって日本の自家用車、充電しようにも車庫が対応できないでしょうし。
■進んでいた日本の研究■
記事では高温ガス冷却炉 (HTGR:High Temperature Gas-cooled Reactor)となっていますが、超高温原子炉(VHTR:Very High Temperature Reactor)の中の高温ガス炉のこと。高温ガス炉は小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)と用法が混乱していますが、第四世代原子炉はいろんな形式が研究されていて、その中でも小型で建設が楽なタイプを小型モジュール炉と呼んでいます。大洗のHTTRは10年前は、世界トップクラスの高温を実現していました。
ところが、東日本大震災が起きると、無能な方の菅元総理大臣が、全国の原子炉を勝手に止めてしまいました。結果、メルトダウンしづらくより安全な第四世代原子炉を研究するHTTRも10年間ストップすることに。そして、ドイツから技術供与を受けていた中国の高温ガス炉は、今年9月に商用実験炉が臨界に達しました。愚かなトップが科学を蔑ろにし、かえって安全を阻害した例として、100年後でも200年後でも、研究対象にしていただきたいです、ええ。
■エネルギーは国の大事■
高温ガス炉は、さらに石炭の液化にも益する研究だったんですよね。原子炉から出る超高温を利用して、石油より豊富な石炭を液化することで、不純物を取り除き、環境負荷を減らすこととセット。バラモン左翼の言うような、空理空論の脱炭素社会なんかより、よほど現実的です。現実的には、脱炭素社会を目指そうとしたドイツは、原子力発電大国のフランスから電気を買い、ロシアから天然ガスのパイプラインを敷き、死命を制されています。
日本だって戦前、事前のシミュレーションで奇襲で緒戦は優位に立てても必敗と出ていた無謀な日米決戦に打って出たのも、石油禁輸でアメリカから喉元にナイフ付を突きつけられたから。エネルギー問題は外交と、外交は軍事と、密接に結びついています。石油が出ないわけではないですが、資源に恵まれない日本はエネルギー問題では多様なエネルギー源を保つ必要がありますから。水素生成の研究は、第四世代原子炉の研究とセットで、自分は期待しています。
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