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石炭アンモニア混焼発電・IHIの小型原子炉の話題
◉エネルギー関連の記事はあまり人気はありませんが、ロングテールでは意外と呼ばれている部分があるので。朝日新聞も、こういう内容を報じるようになりましたね。原子炉夢発電についてももうちょっと勉強してくれると助かるのですが。
【石炭とアンモニア混焼し発電 大型商業炉で初実証へ】朝日新聞
東京電力と中部電力の火力発電部門を統合したJERAと、重工大手のIHIは24日、石炭火力発電所でアンモニアを混ぜて燃やす実証実験を6月に始めると発表した。二酸化炭素(CO2)の排出が抑えられるとされ、大型商業炉での本格的な実証実験は世界初という。
国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の助成を受ける。JERAの愛知県にある碧南火力発電所の4号機(100万キロワット)で、2024年度にアンモニアを約20%混ぜて2カ月間燃やす「混焼」をめざす。40年代にはアンモニアだけで燃やす「専焼」を実現したいとしている。
石炭とアンモニアを混ぜる混合燃焼に関して言えば、他にも水素などと混ぜての燃焼などが研究されており、自分は割と期待しています。なにしろ石炭は埋蔵量が石油よりも豊富とされていますからね。
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■まだまだ石炭火力発電は有効■
石炭火力発電自体は、二酸化炭素の排出量が多いということで、何かと批判の的になっていますが。確認埋蔵量の豊富さなどからも、発展途上国においてはまだまだ有効な発電のための燃料だったりしますから。水力発電や原子力発電においてもかなりの発電量を誇るアメリカですが、石炭火力発電もなかなかの量。例のグレタさんは、中国の石炭火力発電に関しては、ほとんど批判していませんが。理想だけで現実は回らないのも事実ですから。
であるならば、石炭からの炭素や硫黄などの有害物質の発生を除去する、あるいはかなりの程度抑える技術開発と研究が、現実においては重要になります。日本の石炭火力発電技術はその点で、かなり優秀です。中国の石炭火力発電所を、日本製に置き換えるだけで、ずいぶん削減できるとも言われる程度には。アンモニアとの燃焼となると、記事にもあるように、さらなる窒素酸化物系の有害物質も増えますが、この研究も進めねば。
■IHIの次の方向性■
もうひとつの話題はIHI──旧社名石川島播磨重工──の原子力発電所用小型原子炉参加のニュース。石川島播磨重工と言えば、ジェットエンジンの開発で、有名ですね。国産ステルス機心神ことX-2に搭載されたXF5-1や、次期支援戦闘機に搭載する高性能エンジンXF9も開発していますし。大型海水淡水化装置建設などでも、作ってる会社。イギリスのロールスロイス社や、アメリカのゼネラルエレクトリック社など、エンジンと原発を開発してる会社は、普通にありますから。コレも自然な流れでしょう。
【IHI、小型原子炉に参入 米新興に出資】日経新聞
IHIは次世代の小型原子力発電事業に参入する。米新興のニュースケール・パワーに出資し、まず米国での小型原発プロジェクトに中核機器を供給する。ニュースケールには日揮ホールディングス(HD)も出資している。原発は電力に由来する温暖化ガスの排出削減につながるとして、国際連携を通じ新たなノウハウを確保する動きが日本企業に広がってきた。
小型原子炉、SMRがいよいよ日本でも本格的に、現実的になってきたと。原発関係で強かった東芝がボロボロになってる現状、重厚長大産業の一方の雄であるIHIが、コチラに踏み出すのは、必然かも。ガスタービンやエネルギープラントも、造ってますし。アメリカが、2029年に第四世代原子炉を稼働させるので、それまでにIHIも第四世代原発関連のノウハウを、貯めておきたいのでしょう。
■追記■
TwitterにFlyingZebra氏の良い解説があったので、リンクしておきますね。
原子力発電の電源としての特性についても説明しておこう(過去に何度もしている話なので古くからのフォロワーさんはスルーしてね)。電源としてはかなり大型、つまり発電容量が大きい。最終的にタービンを回して発電しているので特性は火力に似ている。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
石炭火力と並んでベースロード電源、つまり需要に合わせて出力を調整するのではなく100%出力で運転し続けるという使われ方をする場合が多い。その理由は、簡単に言うと燃料が安いから。出力を絞ってもあまりコストが安くならないので、だったらもっとコストが下がるところ絞った方がいい。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
出力を絞ってもコストが安くならないという点では太陽光発電などの再生可能エネルギーも同じだけど、決定的に違うのが安定性。ずっと同じ出力を期待できるので、しっかりしたベースロード電源があると供給計画がすごく立てやすくなる。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
もう一つ、少し専門的だけど周波数安定についても触れておこう。我々が使っている電力は50Hzとか60Hzの交流で届けられる。この周波数とか、電圧とかが乱れると機械が正しく動かず、今だと例えば貴重なワクチンを保存している冷凍庫が止まっていまったりすることになる。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
周波数を一定に維持するには回転同期発電機の回転数を一定に保たなければならないんだけど、大きな質量のタービンを持つ大型の電源はこれにすごく強い。需要側の変動で負荷が増えたり減ったりしても、はずみ車の仕組みでかなりの部分を「慣性」で吸収してくれるからだ。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
原子力をベースロードで使うことが多いのはこのような経済的合理性によるものだけど、調整運転ができないわけじゃなくて別の理由があれば負荷に合わせて出力を調整しながら使う例もある。例えばフランスでは原子力比率が高く、他に調整できる電源があまりないので原子力で負荷追随している。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
原子力は日本だけでなく他の国でも非常に厳しい安全規制がかけられている。他の電源に比べると定量的な「リスク」(「ハザード」の大きさ×発生頻度)に対してアンバランスな、単純に合理性から言えば「過剰」な規制になっていることがほとんどだ。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
これもある意味自然で、過去に何度か過酷事故を起こしているし、その「ハザード」が極めて大きいために実際の「リスク」以上に認知としては「危険」に感じられる。恐怖というのは人間の本質的な感情の一つであり、人間は感情を持つ生き物なので合理性だけでは片付かないのだ。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
もう一つ大きな理由は、合理性から逸脱した過剰な安全規制をかけてもなお、十分にコスト競争力があったからだ(少なくともこれまでは)。現在の日本の環境はそうでもなくなってきているが。コストを下げるのは大変だけど、上げる方はその気になれば無制限にいくらでも上げられる。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
最近はSMRのような出力の小さな原子炉が注目を集めているけど、出力を小さくすることが技術的に合理的というわけではない。SMRは元々は北極圏のように他の需要地と電力網が接続されておらず、需要がそれほど大きくない場所を想定して開発されたものだ。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
既に十分な容量の送配電網が整備されている先進国の都市部であれば大型の方がスケールメリットで容量当たりのコストは安くなるし、系統安定の面でも使いやすい。ではなぜ今SMRが注目されているかと言えば、それは主に社会的な理由だ。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
運用コストに直結する規制が、リスクの大きさではなくハザードの大きさで決まりがちなのは人間の感情によるものなのである意味仕方がない。出力が小さければ必要な需要を満たすにはそれだけ数が必要になるけど、一つ一つの設備はハザードが小さいので社会に受容されやすい。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
なお、原子力発電のリスクというのは供用中の事故によるものだけでなく、運転すれば必ず発生する放射性廃棄物の処分や、寿命を終えたプラントの廃止措置に伴うものもある。こうしたリスクも当然評価されているのだが、事故のリスク以上に理解されにくいのが実情だ。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
我々や我々の子孫が安全で快適な生活を送る上で今や電力は欠かせないものだが、その電力を産み出す発電はどんなものでもそれぞれにリスクがある。それでも電力そのものが不足するリスクに比べれば十分に小さいので、十分な電力を確保するのは間違いではない。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
未来を予見することはできないので、将来はどうしたってどこか不確実なものがある。その中で人類が生き延び、快適に暮らせる確率を少しでも高めるためにはバランス良く複数の技術を組み合わせてリスクをヘッジするしかない。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
原子力の利用にリスクがあるのは当然だが、そのオプションを排除することで将来の社会に遙かに大きな別のリスクをもたらしてしまうのだとすればそれは許されることではないだろう。唯一の「正解」があるわけじゃないけど、ちゃんと考えないのは極めて無責任な態度だと思う。
— Flying Zebra (@f_zebra) May 30, 2021
これが、常識的な議論でしょうね。半ば宗教と化している反原発派には、届かないでしょうけれども。福島第一原子力発電所事故で、被爆によって直接亡くなった方はいないけれど、マスコミや反原発派があおり立てた不安や恐怖によって、命を失った人は……。自分たちは正義のつもりで反原発を煽る人は、冷静に評価できるようになった未来において、ジャッジされるでしょう。
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
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