特定行為の商業化

・1500強


 「自分のセキュリティが甘いかどうか知りたいので、誰か試しに自分の個人情報を特定してみてくれ」という人間がいた。面白い。いつか悪意ある人間に特定されないよう、悪意のない人間に特定させてみるとは。予防接種のようなものか。

 ちょっとだけ…ちょっとだけ試してみよう…と思って30分かけてしまった。自分のそういう所が嫌いだ。なんだろうな。得た個人情報をどうこうしてやろうという欲なんて当然ないのだけど、それとは別腹で「探偵ごっこをしたい欲」はあるのだ。というか、ネットに蔓延る特定厨の目的なんてみんなそんなもんだろう。彼らは危害を加えるために特定していると思われがちだが、実際は逆で、特定祝いに危害をかけているだけの場合の方が多いとは思う。プロ野球のビールかけと同じ。(一応弁解しておくと、私はそういう迷惑行為に手を染めたことはない)

 一見、個人情報が含まれていないように見える趣味アカウントにもヒントはたくさん散らばっていたりする。そういう「個人情報ではないが、個人情報にたどり着くために使えるたくさんの小さなヒント」のことをネットでは「パズルのピース」と形容するらしい。言い得て妙だ。

 ネットでは、「あの趣味の持ち主」という情報だけでは同じ人間がごまんといるが、「あの趣味とこの趣味の持ち主」という情報だとぐっと個人が絞られてくるかもしれない。そうして少しずつ絞っていくのだ…

 あと、IDで検索したり、アイコン画像で画像検索したりしたら”別垢”が出てくる可能性があったりする。

 私は中学くらいの頃、「ネットでひたすらクラスメイトの特定をしたくなる時期」があったな。もちろん得た個人情報をどうこうするわけではなく自己満足に留まっていたが、一歩踏み間違えれば「ネット上の悪意のある彼ら」と同じになっていたな…


 本題。

 キャバクラって、説教したい人がお金を払って説教する場所じゃないですか(ド偏見)。

 あんな感じで、特定したい人がお金を払って特定する場所を作ったら儲かるかもな。パズルのピースを埋める快感って、ミステリ作品で犯人の居場所を特定する場面を読む快感に近い。リアル脱出ゲームみたいな感じでリアル特定ゲームを作ったら一部のオタクに受けるかもしれない。

 部屋に入るとPCが一台用意されており、ちょっとした有名人のSNSアカウントが表示されている(それは、運営が用意した実在しない有名人のアカウントである)。そしてPCの手前にはペーパーテストがあって、「この人物の住所は?」「この人物の身体的特徴を8つ以上述べよ」「この人物と最速で確実に会うには、何曜日にどこに足を運ぶ?」「この人物の別垢を3つ以上記せ」みたいに書いてあんの。運営によって、その人物のmixi、ameba、Pawoo、facebook等の垢が作られているの。場合によっては「投稿が削除されてるけど、Googleキャッシュや魚拓サイトにギリ残っている」というヒッカケもある。

 しかしそれだと、回答者が出題者の想定を上回ることが起こらないだろうし、なんか用意された個人情報ってどうしても不自然さが出てしまうのだろうな。

 こういうシステムではどうだろうか。特定されてもいい人間が運営に自分のSNSアカウントを全て売り渡す。特定者は娯楽として金を払って運営に「特定してもいいアカウントリスト」を貰い、誰か一人を特定する。特定できたらその特定手順を運営に報告する。その特定技術の高さや特定された人数に合わせて、「特定してもいいアカウントリスト」に「難易度」が設定される。まだ誰にも特定された事のないアカウントは難易度Sである。

 特定ってマジで定石がなくて自由形なので、運営は毎日「こんな特定手順があるのか…!」と戦慄することになりそうだな。


・何の話だよ



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