見出し画像

【1/8】賭博黙示録カイジ 感想

・1600字強


・カイジ、良かった。十三巻中、最初の三巻はキンリミ(私はKindle unlimitedのことをそう呼んでいます)でタダ。


・「カイジ三巻分がキンリミでタダじゃ~ん、読も~」と思ったが最後、気づけば4000円を持っていかれているのである。

 キンリミ月額980円とは表の数字。実際は初回の数巻だけタダで読ませて残りの全巻を買わせようという恐るべき搾取システムなのである。私はそれにまんまと引っかかり、カイジ全巻を購読してしまった。いや~おもしろかった。

 以下、平凡な感想文。


・やはりお話を作るのが上手い人は「金」というアイテムの使い方も上手い。ただ動機を用意するためだけに主人公の目前に金をぶらさげておくような適当な使い方ではない。金というファクターが人生や社会において何を意味するのか、カイジたちのような底辺人間にとって何を意味するのかがきっちり説明されているし、ちゃんと共感性が高い。

 チェンソーマンの感想を書いた時も似たような文を書いたけど、読者にとっては本来フィクションの中で金が動こうが命がどうなろうが他人事なんだよね。作者が「はい金です、欲しいですよね」「はい命がけです、怖いですよね」「はい二分の一の確率で日本国民が全滅します、ハラハラしますよね」と適当に描いても、読者としては「別に…」となってしまう(ここでいう読者というのは、私のような面倒な読者のことを指す)

 そこでいかに読者の共感を煽り、没入させて「金…ッ!欲しい…ッ!」「勝ちたい…ッ!」と思わせられるかが、技量の問われる領域だと思う。

 その点カイジという作品はよかった…

 (チェンソーマンも見事だった)



・カイジという作品の見どころは①人生哲学と②頭脳戦のギャンブルの二点に尽きると思う。アカギも読んでる途中だけど、アカギの見どころもそう。②なくして①だけ描く方法はない。面白味自体は②にあるのかもしれないけど、作者が語りたいのは①だと思っている。


①人生哲学

 賭博黙示録カイジという作品内で一貫しているメッセージは「社会の負け組というのは負け癖がついていて、勝とうとしない。自分の人生をどこか他人事だと思っている。困れば助けて貰えるし、リタイアしたければできると思っている。質問すれば答えが返って来ると思っているし、その答えを疑うこともない。だからいつまでも搾取される側なのだ」みたいな感じだ(作中ではもっと複雑な人生哲学が語られているが、まあ私の解釈で要約したらそんな感じ)。

 ギャンブルが「人生の縮図」とか「人生の直喩」になっているのがよい。実際にはギャンブルという短い時間の小さな世界しか描いていないのに、人生や社会という大きなお話が見えてくるからすごい。

 それはアカギもそう。目先の金の損得の話がいかにつまらないか、命のかかった人間がいかにつまらない選択判断をしているか、そうして得た寿命をいかにつまらなくちまちまと費やすかという人生単位の話がテーマなので、実際には麻雀という短い時間の小さな世界しか描かれていないのに、スケールの大きい話に見える。なんかこの感想文を書いてたら涙が出て来たな。あまりにもお話として上手くまとまりすぎている。

 関係ないけど「寄生獣」もそれに似ている。寄生獣という作品の舞台は市内、県内くらいの小さな規模の話しか描かれていないのだけど、人類全体の社会実験でもしているかのようなイベントばかり起こるので、結果的に「人類のありかた」「人類の強さと弱さ」「人類の身勝手さ」みたいな大きなメッセージが背後に見える良い作品だった。

 「創作」ってこういうことを言うんだよな…



②頭脳戦のギャンブル

 メトロノームのように勝ちと負けの間を揺れ動き続けるお話なので、武者震いでガタガタしながら読んでいた。私の財布から4000円持ってっただけのことはある。ネタバレになるのであまり言う事はなし。面白い。


・おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?