アカギ 感想


アカギを全巻読んだ。当然ネタバレ注意。


 や~~~んび~~!!

 マジ、おもしれ…おもしれ…

 恐山さんのnoteでアカギの多少のネタバレを見て「おもしろそ~」と思って読み始めたが最後、全巻読んでしまった。「今ここで…もう300…血を抜け…サービス……」のコマが読みたすぎてな…アレはマジで天才的な一コマだった。


 まともな思考回路を持った私なら「36巻もある漫画なんて、ハマってしまったら万単位で払うことになるから手を出さないよ」と心の扉を固く閉ざしているのだけど、そこに「キンリミで最初の10巻無料」という鍵が刺さり、心が動いてしまった。

 アカギという作品、私の財布から一万円以上持っていきやがった。忌むべし。作者を。


・運ゲー

 読む前は「麻雀って結局のところ運ゲーなんだから、作者がアカギに苦悩させたかったら悪い牌を持ってきて、アカギに勝たせたかったら良い牌を持ってくればいいだけなんだから、そんなご都合が介在する余地がありすぎる漫画なんてどう頑張っても面白くならなくないか……?」と思っていたのだけど、読んでみたらビックリ。全くそんなことはなかった。全ての偶然も必然で動いているし、アカギは運の悪さも機転(と、たまにイカサマ)でひっくり返し続けていたのでやべーなと思った。アカギって運が良くても悪くても勝つ奴だわ。

 麻雀という運ゲーであそこまでご都合展開なしの漫画が描けるのか……

 完全に物語終盤のラスト一局、実力ではどうしようもない運ゲーだったんだけど、それまでに積み上げに積み上げて複雑に絡み合った運命的ななにかが運勢を引っ張っていったので、「作者のご都合で動いてるな」という感想が全く湧かなかった。

 定期的に同じことを書いてしまっているのだけど、私は「なんの財力も権力も超能力も筋力もない丸腰の一般人が、知恵と機転だけでやべー大事件を解決してしまう話」が大好物なのよね。「私も同じことをやろうと思えばできうる」と思うと感情移入がしやすいし、あとそういう丸腰の一般人って作者のご都合主義でどうこうしづらいという点もよい。

 その点、アカギは最高だった。私の好物ドストライク。アカギは麻雀でもそれ以外においても、まず普通の人間では選ばないような選択肢をグイグイと選択していって、結果的にその非合理的に見えた選択肢こそが合理であり、勝負に勝ち続けていっているというのが面白い。作中にIT機器が全然出てこないのもお話の幅を広げていてよかった。

 作中で、やべー選択判断をしたアカギに対して周囲から「まさに鬼才の所業…!」「鬼か悪魔か…?」「狂人としか思えない…」という視線が向くような描写がマジで何度も何度も、しつこいほど出てくるのだけど、全然そういう描写はしつこくは思わなかった。それどころか、毎回新鮮に「アカギってやべーやつだな」とさえ思わされた。それくらいお話に情報量が多くて面白い。

 鷲巣は命と金の懸かった麻雀に葛藤し、苦悩し、一喜一憂しているのに対し、アカギは判で押したようにずっと同じ無表情のままなので、一人称視点がずっと鷲巣だったのは面白かった。物語的には鷲巣という人間は大悪党なんだけど、演出的にはアカギの方が敵みたいで、つい鷲巣を応援してしまう回も多々あった。


・演出

 ひたすら今の緊張している状況をヘビに例えたり、荒波に例えたり、狩猟に例えたり、垂直な壁に例えたり、とにかく色んな色んな例え話を絵としてたくさん出していたので、緊張感にもメリハリがあった。

 しかしそういう緊張感のある描写は「引き延ばしがひどい」ともとられるらしく、「鷲頭麻雀編は中盤でダレるよね」という読者の声も複数見かける。

 アニメドラゴンボールとかアニメワンピースにも似た引き延ばし演出があるな~とは結構感じたけど、それも作者の描きたかった演出の一環なのだろうな。

 もうそういう引き延ばし描写を読み過ぎてストーリーの「フォーマット」が見えてきてしまった。

①一人称視点が、劣勢である誰かに移る
②別の誰かがイベントを起こす(リーチや鳴きをするなど)
③そいつの手牌を洞察する
④ここで勝ったらどういうメリット、負けたらどういうデメリットがあるのか再確認する
⑤現在の持ち点について再確認する
⑥葛藤している心理を何かに例えたコマが挟まる(蛇や荒波、狩猟など)
⑦決断し、大ゴマで行動を起こす
⑧結果がわかる(実は待ち牌だと思っていたものは待ち牌でなかったことが判明する、ロンされる、など)
⑨ぐにゃーんってなって狼狽える(多くの場合、一人称視点の人間が不利益を被る)
⑩どこをどうしていたら勝敗が変わっていたか、他のキャラが振り返って地の文で解説する(精神論であることも多い)
⑪強キャラがどれだけ強いかを何かに例えたコマが挟まる
⑫今一度状況を整理する

 みたいなフォーマットをループしている。多い時では一局で3回くらいこのループがあるので、早く「お話の大筋」が読みたい読者からしたらその辺は冗長的に見えるだろう。でもたぶん作者はお話の大筋とは別にそっちの麻雀の駆け引きの方に力を入れたかったのだろうなとも思う。


・オチ

 オチが……オチがあまりにも良かった……鷲頭麻雀、どう転んでも悲しい結末になりそうだったのに、あそこまで綺麗にまとまるとは思わなかった……

 読んでくれ。みんなも。


・おわり


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