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ショートショート 1 仲良し3人組

   仲良し3人組
 正志と英吾、それから雄一の三人は誰もが認める仲良し三人組みだ。小学校から同じ野球チームで、地区で優勝したこともあった。正志と英吾はピッチャー、雄一はキャッチャーで活躍した。中でも正志は、スポーツ万能・成績優秀で三人の中でもぬきんでている。英吾と雄一は正志には何をやっても勝てなかった。しかし、英吾はいつかピッチャーとして正志を越してやる、俺だって実力がある、と思っていた。雄一は、自分は努力しないとレギュラーはとれないと自覚し、また、他の小学校からも実力あるキャッチャーが入ったこともあり、家でも人一倍トレーニングしていた。
 一年のときは、道具の後片付けやボール磨きをチームのみんなと協力してやっていた。しかし、プレーとなるとやはり正志は、他の一年生より実力は上だった。練習試合では、時々先輩たちに混じりプレーすることもあった。英吾と雄一は、友達として自慢でもあったが、うらやましさもあった。
 
 二年生になり、いよいよ自分たちでチームを引っ張るときがきた。部員の中で誰がレギュラーいりするか、できるか。部員たちは必死で練習していた。努力家の雄一はレギュラーどりに向けて、家でのトレーニングにさらに力を入れ始めた。家の近い英吾は中学に入ってから時々一緒に練習していたので、そのことはよく知っていた。
 
「雄一。おまえよく練習してるから、絶対レギュラーとれるよ。俺が保証する」
「あぁ、サンキュー、英吾。とれるといいんだけどな」
「何でよく練習してるって英吾が知ってんだよ」
 と正志が言った。
「時々、雄一の家の近くで練習してたんだよ、二人で」
「えー。俺ぜんぜん知らなかった。みずくせぇなぁ。俺だけのけもんかよ」と正志が言う。
「別にのけもんにしたわけじゃないけど、正志は学校の練習だけで十分じゃん」
 と英吾は正直な気持ちを言った。
「そうだよ。野球だけじゃなくて、スポーツはなんでもこいだし。俺なんか、毎日家で練習して、やっとレギュラーになれるかどうかだもん。正志はいいよなぁ」
「雄一の言うとおりだよ。正志は絶対レギュラーとれるよ。おんなじピッチャーの俺はびくびくもんだよ。控えに入れるかどうかさ」
 
「英吾も雄一も、いろんな人に絶対って言われる俺の気持ち考えたことあんのかよ」
 二人は意外な正志の言葉に、どう答えていいのかわからなかった。数日後新人戦の先発メンバーが発表された。思っていたとおり、ピッチャーは正志だった。しかし、正志は怖い顔をしたままだった。その後何日か三人の会話は途切れがちになってしまった。
 
 

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