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落ち葉のワルツ

コランダ地方ハロウィン交流🎃

お借りした方
・ザクロくん、エムくん
・アルヴァちゃん、リルケくん

こちらの流れをお借りしております。




イエローチームはサポート担当のチーム。だから、バトルは基本的には無し。
そんなチームを、幼馴染のアルヴァが選んだと知った時、セラヴィーは残念に思った。
競い合えるライバルが、一人減ってしまったから。けれど、アルヴァが選んだことなら仕方ないと、あまり残念そうな顔を見せないようにした。
そして、もう一人の幼馴染のザクロにバトルを仕掛けてはしゃいだ。

「何かアル、変じゃなかった?」
ザクロがセラヴィーに問う。
「んー?言われてみれば……?」
元気にロトムドローンを借りに行ったアルヴァ。その元気さの中に、僅かな違和感。
「僕の勘違いならいいんだけど」と呟くザクロの隣で、セラヴィーは「きっと勘違いじゃないんだろうな」と目を瞑る。

アルヴァが戻ってきた後、ザクロはセラヴィーのバトルを受けると宣言した。
「で!次はアルだからね」
「な……!?何言ってるの……?」
ザクロの言葉に、アルヴァは面食らった。

「あ、ザックだけずるいぞ」
「じゃあ勝った方がアルとバトルするってことで」
話を聞かない男子たちに、アルヴァは頭を抱えた。
ザクロはアルヴァの方をくるりと向いて、悪戯な笑顔を見せる。
「ジョーダンだって~…あ、でもアルとバトルしてみたいのはセラも僕もホントだからさ~」
「そうだぞ、ザックに勝ったらバトルしてくれよ」
本当は、このハロウィンでバトルする気満々だったんだからさ。
グリーンアップルの瞳も、レッドアップルの瞳も、目の前の少女を映していた。

***

「へー、言うじゃん?僕達だって負けないぜ?」

ザクロはモンスターボールから、メッソンのエムを繰り出した。今日は狩人の仮装に身を包んでいる。
少し怯えた様子を見せていたが、ザクロが撫でると落ちついたようだ。

「エムが相手か。リリー、いけるよな」
「あしゃっ」
アシマリのリリーは、目の前のエムをじっと見つめた。今日のリリーは、赤ずきんの仮装をしてやる気十分だ。

「2人とも、準備出来た?」
「オレは大丈夫」
「僕もオッケー」

「じゃあ……バトル、はじめ!」
アルヴァの合図を聞いて、セラヴィーがリリーに指示を出す。
「リリー、はたく!」
リリーの攻撃が、エムに直撃する。
「…エム、ダメそうなら無理しなくていいよ」
エムはゆっくりと起き上がって、涙を流しながらも『まだ、頑張れるよ』と言っているように鳴いた。

「…わかった、エム」
ザクロは、そんなエムの様子を見て、彼に指示を出す。
「反撃だエム!しめつける攻撃!」

「来るぞ!リリー!」
エムの長いしっぽが、リリーを捕らえた。リリーは何とか逃げようとじたばた動いた。
「リリー、チャームボイスだ!」
至近距離からチャームボイスを放たれて、エムは思わずリリーを離した。
リリーは少し体力を消耗したものの、まだまだ元気そうだ。

「やるなぁ、じゃあこっちも!エム、なきごえ!」
「ぴゃああっ!」
エムは可愛らしい鳴き声を響かせる。それを聞いたリリーの攻撃力が下がった。

「あしゃあ…」
「だいじょーぶ!こんなことじゃ負けねぇから!」
心配そうなリリーを、セラヴィーは大きな声で励ました。
「リリー、みずでっぽう!」
勢いのよい水が、エムに命中する。
「こっちも、みずでっぽう!」
ザクロの声を聞いて、エムは体勢を立て直し、みずでっぽうを放った。
「かわして、もう一度みずでっぽう!」
リリーがかわすと、勢いのよい水が地面に当たって、落ち葉が宙を舞った。エムのみずでっぽうをかわした後、リリーは再びみずでっぽうを放つ。

「エム、かわして!」
先程はみずでっぽうをくらってしまったエムも、今度はかわすことが出来た。リリーのみずでっぽうで、さらに落ち葉が舞う。
そうしてしばらく、みずでっぽう合戦が続いた。リリーとエムのみずでっぽうが地面を打つ度に、赤や黄色の落ち葉が舞い上がる。
その様子はまるで、落ち葉がワルツ踊っているようだ。

「綺麗ね……」
審判をしているアルヴァが、ぽつりと呟く。そばでは、イーブイのリルケがニコニコ笑っていた。
魅せるバトルなんて専門外。だから、この美しいバトルは単なる偶然。

(まあ、こういうのも悪くないか)
リリーの楽しそうな様子を見て、セラヴィーはそう思った。
いつまでも続けたいくらい楽しいバトルだけど、そろそろ決着をつけて、ポケモンを回復させて、次の場所へ向かわなければならない。
(そろそろ、リリーもエムも体力が限界だろうしな)

***

リリーは嬉しかった。研究所では外の世界を怖がっていたエムが、今は一緒に旅をして、バトルまで出来るようになったのだから。
『たのしい!』
きらきらな水しぶきと、くるくる舞う葉っぱ。エムは、このバトルをどう思っている?少しは、楽しいって思ってくれていると良いのだけど。
リリーがそう思っていると、セラヴィーの声がした。

「おーい、リリー。そろそろ終わりにしようぜ」
残念ね。でも、せっかくのハロウィンだものね。色々な人とバトルして、楽しまなきゃね。わたしも、エムも。

終わらないと、新しいことがはじめられない。そんなことは、わかっているのよ。でも、やっぱりちょっと寂しいな。
ねぇ、狩人さん。このバトルをいつまでも、覚えておいてよね。

「アクアジェット」


リリーは水を身に纏い、目にも留まらぬ 速さでエムに迫る。バトルの決着がつくまで、あと少し。


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