「セクシー田中さん」報告書に書いてほしかったことと書くべきではなかったこと

普段の記事とはまるで違った分野の話だが、私も漫画好き・ドラマ好きの端くれなので。

日テレと小学館の報告書が出ましたが、予想通り炎上しています。特に日テレの報告書。この報告書を出すことで何をどうしたかったのか、さっぱり分からない。中を見ると、「そりゃぁ燃えるよね」という記事が満載なので、問題の鎮静化を企図したものではないでしょう。調査して報告しますと言った手前、やむなく作りましたということか。あるいは、もっと真っ当な報告書を作ってたんだけど、いろいろ調整していくうちに収集付かなくなったとか?なんて邪推してみたくなるくらいです。

SNSをざっと見渡すと、大勢の感情は怒ったり悲しんだり、否定的なものが多いようです。では、何について腹を立てているのか。多いと思ったのは以下のような意見でした。

  1. 原作は改変して当然というドラマ制作側の姿勢

  2. 脚本家に対して

  3. 別紙3の在京各社元ドラマプロデューサーのコメント

  4. 原作者を「難しい人」と呼んでいること

  5. プロデューサーの行動姿勢(特に嘘をついたこと)

  6. 原作者と脚本家以外の関係者が匿名で書かれていること

  7. 目的が「ドラマの原作者、脚本家、出演者、制作者等が、より一層安心して制作に臨める体制を構築するため」で「本件原作者の死亡原因の究明」ではないこと

  8. 契約書が無いこと

  9. 「最終的な脚本は全て本件原作者の意向が反映された」と書いていること

私が書きたいのは1と3と9についてです。

1.原作は改変して当然というドラマ制作側の姿勢

これに腹を立てている人が一番多い印象です。

例えば、1〜3話の脚本完成までの経過について、日テレの報告書はあっさりしていて深刻さが感じられないのに対し、小学館の方を見ると、この時点で原作者がかなり疲弊していることが読み取れます。ドラマ制作側の原作の改変に対する考えの軽さが反映されているように思えます。

このあたりの「本音」の部分が、ストレートに書かれていないように感じます。「原作をそのまま映像化することは無理」という考えが行き過ぎて、「原作を改変するのが当たり前」「改変しなければドラマ化する意味が無い」くらいの考えになっちゃってませんか?という本音の部分が語られていないので、「言い訳に終始している」という意見が出てくるのだと思います。

日テレの報告書では対策として「契約書の文書化」や「サポート体制の充実」などを挙げているけど、もし「原作は改変するのが当たり前」という意識があるのなら、これを変えないと何も変わらない。だから、ここをはっきりさせないと報告書の意味が無いと思うのです。

3.別紙3の在京各社元ドラマプロデューサーのコメント

これまでどういう考えでドラマを作ってきたかがよく分かったという意味では載せてくれてありがとうという感じですが、報告書に本音が書いてないので、元Pさんたちのコメントを日テレの本音と捉えてしまう人が多いような気がします。以下「キリトリ」です。

  • 漫画、小説、そういった紙に書かれたものと、映像になっているものは全然違うものである

  • 「セリフを変えるな」は無理

  • 「原作に忠実に」とおっしゃるけれどもそれはあり得ない

  • 白紙委任状をください

  • 違うものを作るのだ

  • クリエイティブな件に関して契約書にするべきではない

  • 確認し合う取り決めというのは契約書ではない

  • 安全にドラマを作る方法なんてない

  • まず第一に社員を守ることが仕事

繰り返しますが、これは「キリトリ」です。でも、こういう文章をわざわざ載せるということは、これが「本音」なのではないかと思えてしまうのです。

9.「最終的な脚本は全て本件原作者の意向が反映された」と書いていること

似たような文章をドラマのホームページでも読むことができます。

2023年10月期の日曜ドラマ「セクシー田中さん」につきまして
日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら
脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。
本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております。

https://www.ntv.co.jp/tanakasan/

おそらく、ドラマのことを原作を勝手に改変したものだと勘違いして抗議する人が多かったのでしょう。「ドラマの内容は原作者の意図通りのものですよ」と言いたいのだと思います。

でも、ここからは原作者に多大な負担を掛けたことに対する謝罪と反省の念は全く感じ取れないので、それが怒りを招く原因になっていると思います。

さらに、報告書に関してその目的は「ドラマの原作者、脚本家、出演者、制作者等が、より一層安心して制作に臨める体制を構築するため」だったはず。「全て本件原作者の意向が反映された」ことと「安心して制作に臨める体制」の関係が分からない。結果、怒りを招くだけのものになってしまっていると思います。


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