ゲンロンSF創作講座2022第2回梗概感想

やはり、人に読んでもらい感想をもらうのは嬉しかった。
なので、僕なりに梗概の感想を書いていきたいと思います。
まとめファイルは、Twitterにあげたものと同じものです。感想書くにあたってリスト化してました。
どの梗概が一番選ばれているかというのも面白かったですが、最高得点獲得者に天沢時生さんが7回、5作品入っているのが印象的でした。六期生の仮想敵の可能性がありますね…

以下感想となりますが、僕なりに誠意を込めて書いています。
とはいえ、気分を悪くさせるようなことがあれば、申し訳ないです。
僕の梗概をプリントアウトして火にくべた写真をDMしていただければと思います。第1回の実作の倍の文字量になってる……


中川朝子 「風を痛む」

「風の正体が、ウイルスにも満たない有機体、飛翔を覚えた遺伝子の欠片」
と言われても、知識がないため、よくわからないけどウイルスよりも小さな遺伝子が悪さをしているということだなとなってしまい、SF的な意味でのポイントである、「赤砂の粒子→ウイルス→遺伝子」というところの凄さがよくわかなかった。わかれば、おお!となるような気がする。
風に対して人類は争うすべなくただ滅びを待つのみであることが判明した…痛みの中で痛みを分け合い慰め合うことしかできない。痛みは消えないのだ…ということか。
梗概の中では痛覚としての痛み、として表現されているが、ドラッグがその痛覚から解放し、幻覚に誘うように、アピール文で、さまざまな痛みがあるとしたように、痛覚以外の痛みも、この風が与えてくれれば、広がるのではと個人的にアピール文を見て思いました。
少し不思議におもったのは、アリョーナのフィールドワークも地面を踏み固めることなの?と思いましたが、読み違えていたらすみません。

ところで、麻薬、砂漠、土地という話を聞くと「DUNE」が想起されます。この作品は当時、石油産油国とそれを消費するアメリカ、ドラッグ文化、などを底にして、宇宙帝国とそれに搾取されるドラッグ≒エネルギー資源を巡って、帝国を追われた青年の貴種流離譚として描かれている。何かしらのインスパイアがあるのだろうか、なければ、映画も去年公開されているので是非。

伴場 航 「手先の器用なテントウムシ」

怪しい一家がやってきて、問題が発生し、そして追い出され、日常が帰ってくる。都市伝説的なお話になっていると思うのだが、僕には天皇であることがどう作用しているのか、わからなかった。
これのマシンが人身掌握用の潜入兵器であっても成立してしまう気がするし、あるいは幽霊でもいい(だからこその狸なのか?)、いずれにせよ天皇であることの必要性が梗概からは伝わりづらく、おそらくもっとある天皇的な要素を出して欲しかった気がする。アピール文的に、もっと小ネタがあるはずなのだ。あるいは僕が読み取れていないかなのだ。
超高性能アンドロイドが実験段階にある世界でも、地方だからエアコンの室外機が壊れちゃうんだよねというのは、ちょっとありふれすぎてしまっている気もする。天皇型のアンドロイドも、アピール文にある通りありふれているとしたら、本当に怪しい一家としてやってくる要素しかないとしたら、やはりこの展開も、都市伝説としてありふれているのでは…そのミックスで化学反応があるのだろうか…

難波 行 「もう一度産むから、まって」

ワンシーンとして、人と似ていながら、いかに違う種であるか、と思わせる描写がとてもいいと思いました。逆に、ストーリーとしては、多様化の時代に淘汰されて行くもの、残酷さというものが見えてこないと感じました。
実は私もまた同じ種の生き残りで…となるとか、なんらかの感情移入のお話があると尚いいと思いました。

夢想 真 「奇々怪々な機械の世界」

「鈴原と美玲は交通事故で意識不明のこん睡状態に陥る。」!!??驚きの展開すぎませんか?
意識不明になった男女の魂が入れ替わって/混ざってしまう。というやつですね。
それにしても脈絡なく入れ替わってしまうのではなく、やはり入れ替わる理由、あるいはその結末と関連性のある原因があると納得がいくと思います。異世界転生トラックのように扱うのは、SFのテンプレとしても許容範囲が難しいところではないでしょうか。
「相容れない判定」はもうちょっと語呂がいいやつがあれば…
導入が女性の妄想で、というのも少し難がある気がします。これ全体がさらに大きな一つの宇宙人の実験場だったとかの方が許されるような…いや、忘れてください。。。
存在が入れ替わってからの展開は面白いです。機械を壊してしまうおじさんがチートキャラと化すのは面白いです。ですが、結末がこの戦いは続くとしてしまうのは勿体無いです。もう少しはっきりとした結末が欲しいと思いました。

古川桃流 失われない羊

どこ?ここ?4630万円はここ?
「¥に横棒を足した通貨記号から「羊ひつじ」の愛称で呼ばれる。」ここ好きポイント。
ま、またブラック労働→業績評価→引き抜きの必殺コンボが炸裂している、だと!笑
そして最後は親元に爆弾(メール)を送りつける。これが古川さんの様式美ということなのか!
引き抜かれて、お、俺のことわかってんじゃんこいつと思っていたのが、実のところ能力的に問題があり、責任を下に押し付けるやばいやつ。とわかったので、主人公が最後に叩きのめす。この展開はやはりスッキリしていいですねぇ。
 羊が名前の通り生き物のような振る舞いをする、ということなんだと思うんですが、読んでいてそこにはあまり感じませんでした。

相田健史 「酒球」

巨大彗星が地上に接近しすぎた結果、地球の環境はかくも変貌を遂げてしまった。みたいなことを神話的な導入で行われる。地上が高濃度のアルコールで汚染された世界を想定するのはなかなか面白そうだが、たとえば、殺菌作用等により菌類が死滅し、環境がガラリと変わってしまうなんてこともあり得そうだ。また、これにより海水面は上昇しているのだろうか、あるいは常に燃えている海面難というものもあるのだろう。神話的な導入をリアルに突き詰めていくと、それはそれで面白いのではと思ってしまった。お話は、ある種の原生民族の成人の儀式が執り行なわれている。僕個人はこういうところにそこまで惹かれない。それならターザンであったり、野生と人類の対比をされているものに勝てない気がする。ここは酒を絡ませてほしい。どこまでも酒が支配するのだ。飲み会大好きおじさんとか、アルハラとか、そういったメタファーを感じさせる要素があってもいいのではないだろうか。酒というテーマと、変貌した異様な原生世界での冒険のストーリー、ここをつなげるものがもっとあるといいと思いました。

瀧本無知 「頭の悪さはたゆまぬ努力のたまものです」

「力が欲しいか!」
やはりARMSはいい。厨二病は万病に効く。

ふと疑問に思うのは、本当に知能が人の評価軸でなくなった時、人はそこに劣等感を抱くのか。その点は少し腑に落ちなかった。
誰からも見下されない、嫌な思いはない、生活にも不自由しない、であれば、知能を求める理由は、知能指数と表示される点のみだ。
これはある種のディストピアの裏返し、生まれながら人々は点をつけられるが、それによって差別はされない。システムによってむしろ快適な未来がある。最近の作品ではサイコパスの犯罪計数とか、そういうやつに近いものだと思う。
であれば、やはり、主人公が圧倒的な頭脳を欲しがるには、うちから湧き上がってくるものとは別の、何らかのファクターが必要となるのではないだろうか。

主人公がバカみたいなガジェットを買い集めたことが原因で、実験対象となり、奇跡的に成功し、超能力を獲得する。というのは面白い。
一方で、犯罪組織を制圧した後の展開は、すこし不思議だ。頭が良くなりたかったけど、やりたいことは何もないんだよね。それでいい。やりたいことはやりたいことがあるやつにやらせよう。。私はもっとよくなりたい。
理屈はわかるのだが、共感はできない。

もう一度、遠くにいけ遠くに行けと僕の中で誰かが歌う。どうしようもないほど、そういうことに感情移入させてくれる何かがあれば…と思いました。

柿村イサナ 「光の文字で綴れ」

課題を二つ?その発想はなかった。今ならわかる。全ての課題を一つに統合し、最強の課題を生み出し、無敵の梗概を生み出すのが正解だったんだ。。。

刺繍の裏に物語があるというのは素敵でいいと思いました。
見知らぬ存在、カルタと交流し、最後はそれに助けてもらう。それはリボンによってのみ伝わり、刺繍によって密かに伝えられる。
つまり、虐げられたものはカルタにお願いし、助けてもらうんだよ。ということなのかしら、そう思うと少し怖い話なのかもしれない。
カルタの存在が最後までよくわからない何かで、それについてわからずじまいで終わってしまうのは勿体無いように感じてしまいました。
そして、この謎の存在と刺繍の物語がどのように繋がっているのか、刺繍によって語り継がれる伝説ということでいいのかなあ。

長谷川京 「熒惑の信仰者たち」

ロボットが宗教を起こす。という発想が面白い。長谷川さんのこういったアイデアと、ミナがサリの足跡をミステリのように追っていくストーリーとしての面白さ。ここは今回も、よく考えらていて感心する。アピール文書かれていること、そこはカッコよくていいんですけど、梗概では流石にそこまで読み取れない。2032年、十年後の世界でどのような火星開発をしているのか、いまいちよくわからないのは勿体無い気がする。「誰もいない、かつては海が広がった惑星の上に。」この辺にエモ味を感じるのだが、しかし、うーんよくわからんという気持ちも感じでしまう。もうちょっと説明的でもいいのではないか。そして最後の段落もエモい、やりおる。しかし、何か誤魔化されている気もする。サリに感情移入しまくるミナには少し無理がないだろうか。(いやそんなこともないか?)また、物語としての葛藤ポイントとして、正常化させるヒントを残しておくのはいいのだが、これはサリがミナの過去を知ってでもいない限り、思考ロジックとして無理がないだろうか。いやでもエモいので気にならないもしれない。ミナを感化(感染)させたサリの存在は、伊藤計劃のハーモニーのミァハなどに通づる、カリスマ性、神性のようなものがあると説得感が出ていいのかなあと思いました。

広海 智 「『秘密の花園』の秘密」

秘密の花園を知らないのでググりました無教養ですみません。買いました。読みます。
そのため、『秘密の花園』をどのように改変したかわからないため、後半については僕に言及することはできません。
出資の対象と会う、いきなり会って話を聞くように求められるというのは、少し性急な気がしました。
急に話が変わるのですが、アサシンクリードという作品があります。ゲームです。この作品では、主人公の遺伝子の中に眠るアサシンの記憶を呼び覚ますような形で話が進み、現実世界の近未来感ある医療施設で少しずつアサシンとしての力を思い出していく主人公と、医療機器によって記憶の中のアサシンの物語が交互に描かれます。
前置きが長くなりましたが、ハミッシュの研究について、最後に実はあなたがやっていた研究はねと教えてもらえるのも驚きとして十分いいのですが、であれば、冒頭にどのような研究をしているのか多少なりともわかった方が、個人的には、じわじわとわかっていたものが最後にスッキリする方が好みというだけなのかもしれませんが。

イシバシトモヤ 「エギィァアバキリッ…ジュドドロ…ッルッン」

前期受講生のとき、この課題は、まず、食べたくならないとダメという話をされたのを思い出しました。

人間を食糧とする上位生物の人間ファーム。そして、その生物もまた、さらなる上位種の食糧に過ぎなかった。お話としてはこれで終わってしまっており、ストーリーとして弱いのではないか。という点が気になりました。
飼育される人間というテーマですとジャンプ漫画「約束のネバーランド」のヒットが記憶に新しいです。この作品では、鬼はより知能の高い人間を食べることを目的として、賢い人間を高級品として育て上げていましたが、賢い人間である主人公は、鬼の目論みに気づき、ファームから脱出し、人間の世界を目指します。ここにはそういうストーリーがありました。
この人間ファームの中で、人はどのような物語を描くのか、それがもっと描かれていればいいのになあ、と思うところです。

霧友 正規 「わたしと七人の「わたし」たち」

わたし以外わたしじゃないの〜というのはやはりいいテーマだと思いました。アピール文にある通り、「もっとも美しい」から「最も私らしい」としたのは良い視点ですよ!!

梗概の上では「私らしさ」というものがどういうものか、そこまで描かれていませんが、ぜひ、現代における「私らしさ」に悩む人々に目を向けていただき、作品の中に盛り込んで行ってほしい、そこを読みたい!と思いました。
これは僕としては、という程度なのですが、白雪姫にはやはり悪い魔女が必要な気がしましたし、小人を登場させないのも勿体無い気がしました。もう少し、白雪姫の要素を盛り込んだ方が、寓話として効いてくる気がするのですが、そこは好みでしょうか。

岸田 大 「帰省」

到着に八年、調査に二年なのに、電波が五年なのはおかしいのでは。いや、調査機が亜光速で飛んでいるのならわからないでもないが、現代技術の延長であれば、計算が合わないのでは…
「しかしケイの気持ちは途切れない。たとえ15年であろうと自分は待つとケイはいう。二人はもしその言葉が真実ならそのときは結婚しようと互いに約束して写真の入ったロケットを交換する」岸田くんの今期のテーマはセカイ系なのか・・・?
目的の星に八年? いややはりワープ航行でもないと無理では?
火星ですら現代の技術では二年もかかるはず、到着に八年となると、かなり近距離になってしまう。にもかかわらず、電波で五年は、やはり時空間のゆがみが必要なのでは。
ファンタジーの世界ではときどき、世界を覆う結界があり、それを守護している人々と解放を目指す人々というものがあったと思う(オーフェンの最終巻とか)。SFでそれを行う場合、電波を遮断するというのは一つのやり方だろう。
ところで、現実の宇宙の電波はかなり解析されている。宇宙マイクロ波背景放射というものがある。宇宙に向けて巨大なパラボナアンテナを向けていたら妙なノイズがいたるところで観測される。これは何かと調査してみると、ビックバンの際に生じた熱量の残滓を観測していたのではないかということである。
また、電波において重要なのは位置関係もある。いわゆるドップラー効果というやつだが、宇宙空間の規模ではものすごい速度で天体間の距離が離れている、そのため、他の星系から電波を受信するとなると、本来の電波を維持することは困難ではないだろうか。
と、個人的にはもうちょっとこの辺の宇宙の電波とか、星間距離の移動と情報伝達の関係を近未来の範疇でやるのであれば考えればいけないような気がする。あるいは、マーベルユニバースのインフィニティストーンのようなものにした方が安全かも?
しかし、ほしのこえ,イリヤの空のようなテンションで行くのであれば、さほど重要な問題でもないのかもしれない。

母親を求めて恋人を置いて宇宙へ行き、その先で親とは違う結末を選択するストーリーは、シンプルですが力強いテーマだと思います。
一方で、人類を観察していた神のような超生命体が逆に浮いてるようにも感じました。宇宙の果てで力尽き、戻れなくなり、手記を見つけるだけでも十分強いストーリーだと思います。
この、人類全体を守護している存在の意図と、ユーリの旅との相関的な構造があると思うのですが、そこが梗概上ではよくわからなかったです。


渡邉 清文 無名(関数)祭祀書

最近CoCのGMをしたので、タイトル時点でににやにやが止まらない。
無名関数と無名祭祀書の言葉遊びで物語をつくるのは面白いとおもいました。
ただ、物語の筋が設定に引っ張られすぎていて、
「本の記述を3Dプリンタで出力する研究」をしている男が、クトゥルーの狂信的な公爵と引き合わせられ、邪神を召喚し、世界は飲み込まれてしまう。
これだけでは起伏に書けるのではないだろうか。という点が気になりました。
また、梗概の冒頭のバベッジやハワードといった人物も、クトゥルーやスチームパンク好きのフレーバーとしては大変共感できるのだが、
物語にとってはあまり関係性が弱く、出すのであればもっと絡めてくれれば面白くなるのにと思ってしまう。

伊藤計劃の「屍者の帝国」に渡邉さんも言及されていて、あの作品もフランケンシュタインやバベッジの階差機関が登場していくのですが、彼らの作品と人物が絡み合っていくのがやはり気持ちよさの一つだと思います。
ほかにも、桜井光の「漆黒のシャルノス」ではクトゥルー・スチームパンクベースのセカイで、シャーロック・ホームズやモラン大佐、シャーロット・ブロンデ、ブラム・ストーカーなど、史実や虚構をないまぜにして演出している。(これには伊藤計劃は名前を借りているだけと否定的だった気もしたが)
日本人研究者や公爵も、同一時代の作家や俳優、架空のキャラクター、歴史上の偉人や変人をそのまま持ってきてしまい組み合わせてみると面白くなるのではないだろうか。整合取るのが大変そうであれですが。


降名 加乃 砕けた瓦礫の願いより

一日分の<資源>を稼ぐことで手一杯な実が、身分違いのヒロイン和波と出会い、実は茶社との人間的なふれあいから惹かれていく、
その結果として、感情すら資源であるこの世界では、その気持ちが仇となり窮地に陥る。この展開はとても良いと思いました。
恋心も一つのコストとなってしまうのが面白いです。ただ、事前にこういう気持ちもまた、一つの「消費」になることが事前に分かっている方が、読んでいる側としては「ああせっかくなかよくなったのに、そういえばこの世界ではそうだったぁぁああ」となり大ダメージを与えられるのではないでしょうか。(おいしい食事もまたコストになるというのがこれに該当するのだと思いますが、もう少しわかりやすいほうがいいんじゃないかなと個人的には思いました)

「君と出会った日から私は城を崩すと決めていた。資源を目減りさせると忌み嫌われる、そんな瓦礫が好きだから」というシーンがありますが、
「瓦礫」への言及がその前にも一つあった方がいいと思いました。和波はこの世界では少し変わった女性ですが、その中に芯があるのだと思います。
現状では、爆発させた後にその片鱗が分かるだけとなってしまい、もう少し共感できる情報が欲しいかなと思いました。

もう一つ、これはいちゃもん的なレベルなのかもしれませんが、妹の乃亜の存在が少しテンプレすぎるというか、ご都合すぎる感じ出ているように感じてしまいました。
眠り続けている少女は単なる栄養失調としてしまうのも当然ありなのですが、この特殊な世界において何かの役割があった方がもっと良くなるんじゃないかと思いました。


コウノ アラヤ ギャラン・ドゥは二度死ぬ

笑ってしまったので僕の負けです。
もっともっと電車広告のことをネタにしてほしいです。まだまだ電車広告の育毛と脱毛の闇は深いと思います。

最後にいい話風な何かになっていますが、個人的には最後は電車広告のキャッチフレーズにつなげて落とすような、最後までバカみたいなオチもあってもよかったんじゃないかな。とも思いました。

余談ですがこの課題の天沢時生さんのやつもヤバいので、あれに負けないヤバい実作を読みたいです!


真中 當 白々と朝も夜も無く部屋照らす光がせめて暖かければ

梗概の中で物語が始まりるのが後半からなのがもったいないと思いました。
子供のまま生き続ける人が、生きるために疑似家族を形成し、和解する展開はモチーフとしても展開としてもいいと思いました。
逆に、ラストは、サラが「悩む」という結末になってしまっているのはもったいないと思いました。やはり、その先の決断が、読者としては欲しいところです。

ところで、震災を避けるために地下に避難し、半年が経過し、その後何事もなかったかのように地上での暮らしを始めていますが、大丈夫なんでしょうか。

もうひとつ、サラが無計画にたまたま見つけた二人を仲間にしていますが、できれば、シェルターでの生活や審査を通過するのに都合のいい能力を持っていたり、何らかの後ろめたさを感じていたり、せっかく疑似家族を形成するのですから、3人とも何らかの面白そうな背景があるほうがどうせならいいんじゃないかと思いました。と書いていて思いましたが、ヤバい能力者の共同生活ものといえばちょうどアニメ化している「スパイファミリー」がありますね、やはり、全員になにかしらのフックがある方が展開が面白くなると思いました。
なんだったら、その人物をサラが見つけるところも物語にできると思いますし。オーシャンズイレブンで仲間を集めるところとか、面白いじゃないですかそういう楽しさが組み込めそうだなと思いました。


牧野大寧(だいねい) イミテーション・アニマルズ

Animal Fight Clubというゲームはご存じでしょうか。既存の動物を融合させてキメラを作り戦わせるインディーゲームなのですが。そのイメージで読みました。
https://store.steampowered.com/app/1022780/Animal_Fight_Club/?l=japanese

結末から察するに、ギが怪物を制作したと思うのですが、その意図が分からずじまいで疑問符が浮かんだままおしまいとなってしまいました。
ギに何かしらの意図があれば、主人公のトーマにはわからずじまいでも構わないので、せめて読んでいる側にはわかるようにしてほしいなと思いました。

また、作中ではかなりの広さがある宇宙船なんだろうか?とこの宇宙船の規模感が分からずじまいなのがもったいないなと思いました。
モンスターパニックが起こる宇宙船がどんなものなのかわかる描写があれば、臨場感があっていいと思います。やはり、ジュラシックパークがおもしろいのも、どんなテーマパークかまずぐるっと一周してから、そこでパニックが起こるからこその面白さがあると思うんです。

これは個人的な趣味なのですが、やはり一人くらいは怪物に食べられて欲しい感がありますね!エンタメとして!笑


山本真幸(やまもと まさき) 睾猫譚(こうびょうたん)

「過去の破局を予知できる力を持っている」というのがよくわからない。過去の出来事をみる、サイコメトリーのようなことなのでしょうか。
「破局の内容は、Qから睾丸の一部を奪い返せるのだが、すべてを回収できず、失敗に終わるという未来だった。」というレベルの出来事を"破局"と表現するのは少し違うような・・・破局的噴火とか、そういうものを僕が真っ先にイメージしてしまうからもしれませんが。いわゆる恋愛関係的な意味での破局という理解のほうが近いのかなぁ。
過ぎ去った破局を予知するというのが、やはり違和感が残ります。「過去を見る行為」は「予知」ではないのではないでしょうか。

猫とササキさんの話は一つのお話としてよいのですが、それが主人公に影響を及ぼすような、リンクする内容だったとは、ちょっと結びつかなかったです。
最後、主人公の過去を見た猫人間が、忠告し、主人公の心持を少し変えるというのは、とてもいい展開だと思いますので、そこに引っかかる要素が序盤に欲しかったと思いました。
また、なぜ猫人間が主人公に興味を持ったのかというのも、最後に分かるといいと思いました。


大庭繭 とろける微睡み

現代の問題にもリンクして、イメージもしやすく、とてもいい題材だと思いました。
ストーリーも、事故をきっかけに悪夢を見るようになり、「竜骨」をきっかけに幸福な夢を見はじめ、現実よりも夢に居場所を見出していく。
少し恐ろしい話ですが、なんとなく分かるような気がする。絶妙なバランスの話だと思いました。

「イサリは自分が本当は現実世界にうんざりしていたことに気づく。」
ということは、これまで見ていた悪夢が、じつのところは、これまでの日常生活によって積み上げられてきたストレスが噴出したものであったとわかる。
よくわからない一連の出来事は日々のストレスが原因だったんだというのは、納得はできるのですが、驚きにかけるような気がします。
眠りに溺れる中毒性というのはとても甘美な響きなので楽しみです。

設定面ですこし、気になったのは、大人の睡眠時間が削れるというのは、納得できるのですが、赤ちゃんや子供はこのお話の中ではどのような成長をするのでしょうか。
これは物語の外の話なので、興味本位といったところです。


中野真 消えない星屑

バーチャルアイドル、星屑、、、星川サラってことですか?!(いやでもアピール文的にVtuberそこまで興味なさそうなんだよなぁ・・・)

ハードフォークという単語をググり、また一つ賢くなってしまった。

一つ気になるのが、今のVtuber界隈を見たときに、ファンはほんとうに自分だけのアイドルを求めているのかというのは、問題提起そのものが正しいのだろうかと個人的には疑問です。
ファンは1対1という幻想を抱くのはもちろんだと思いますが、コミュニティとしての快楽のほうが強いのではないか。というような気がします。
私だけのアイドルというのであれば、初音ミク的な、そういった中に人が入っていない存在に流れていたのではないか。
そうではなく、実在の人間が中に入っているとわかっていながら、キャラクターへのファンとして活動する。これは、私だけのアイドルという方向性とはずれているような気がしています。
とはいえ、僕はアイドル評論家でもなんでもないので、個人の感性の問題だと思いますが。

ハードフォークという概念を使い、無制限に分裂し、独自個別に成長していくキャラクターというのはとても興味深いです。いい題材、だと思います。

であればこそ、ひとりのもとの人間に回帰し安心する/絶望する(絶望する方は「推し、燃ゆ」みたいな方向でしょうか)という結末はウェットでいいのですが、
たとえば、AI敵が分裂した個となるというのは、「攻殻機動隊」のタチコマなどが先行例としてあるのかもしれませんね。
そうしたときに、分裂したキャラクターは果たして個別のキャラクターなのか、これはかつての美少女ゲーム批評であったような、トゥルーエンド以外のヒロインが救われていない問題などにもつながってくる問題だとは思うのですが、って僕は何を書いているのでしょうね。。。
つまるところ、原初の推しが救われていたことが、きぬたの推しが救われていることになるのか。という問題提起はあってもよいかと思いました。

水住 臨 創造的休暇は突然に

歴史上の人物の語られざる物語をフィクションとして描くのはやはりかっこいい、個人的な興味としてぜひ実作がよみたいです。
本当にこんな出来事があったかもしれない、そう思わせてくれると嬉しいです。

ところで、せっかくのコロナ禍であるので、ペスト瘴気説に対して、現代医学を当時流にアレンジし、
天才アイザックニュートンの語り口で物語とする。ということは、読んでいて、オーここはやらないんだなという点は、なんでなんだろうと単純に気なりました。
何か食べたくなるが主題であって、コロナ問題は関係ないので、外しているということなんだろうか。

ラストが、おいしいリンゴによってすべてが解決するのは、料理漫画的なノリが発揮されていて、僕は結構好きです。
なんだったら、最後にケプラーにふれて、歴史に戻さなくたっていいんじゃないかなぁとすら思いました。いやでもここは戻すのがお作法というものか。


中野 伶理 神はよるべなき声の果(はて)

ん?これは結局ヒビキの肉体は見つからなかった。ただ、精神世界でカオルが会うことができたという解釈でいいのかなぁ。
また、「ミレイはカオルの悲願を拒否できない。」 ここで、カオルの悲願について、梗概中でミレイが気づくようなところはあっただろうか。ちょっと違和感がある。やはり、カオルが何のためにともにヒビキを追っているのか、わかるような描写が実作ではあると嬉しいです。

最後の最後で、最後にヒビキに会った時のことを思い出すのは、足跡を追うなどしていたのに、最後に会った時のことだけ思い出せないのは、不可解な気がします。
ミステリの展開のように、序盤に伏線として入れておくか、催眠術が使えるためこのタイミングまで思い出せなかったなどの理由があった方がいいような気がしました。

ミステリ仕立ての物語として、とてもよく練られていて、カオルが戻ってきて、最後にミレイの声を聴くというのは美しい展開だと思いました。
音を題材にし、最後に音を聞くオチというのは素敵です。
神話をモチーフ、カオル、、、これはネオンジェネシス?と一瞬理解した気になりましたが、気のせいでした・・・

向田 眞郵 それは小さなバトンだけれど

ホラーだったのにはおどろきました。タイトルからほんわか系かと・・・
小学生のアバターがこん睡状態に陥った陸に変わって復讐し、最後には父に会うことで終幕となる。
ところで結末の時、アバターはどうなってしまったのだろうか。呪いが解け、元に戻ったということでいいのだろうか。

因果応報という意味でも、ホラー(着信アリ的な)作品であれば、許される範囲だと思う。
少し気になるのは、親権がとられるといった敗北があったとはいえ、電光掲示板なども操作できる呪われたアバターであれば、廉価版のスマホだったからといって、母親が生き残るのはすこし矛盾している気がしてならない。
アバターが陸の意思を超えた対応をするのであれば、母親に対しても何らかの超常的な作用が働き殺されてしまうないし精神崩壊するのが流れとしては普通かなと思いました。

ホラーあるある的な要素で言えば、真相を探ろうとする人物というのが不在なのはもったいなきがしました。
幽霊が自ら種明かしするのではなく、ぎりぎりまで真相に辿りついた人の手で真実が語られる方が、いいのではないでしょうか。(まあ、そういった調査をした人は最後には殺されてしまうのでしょうが)


岡本 みかげ 穴が空いた日

近年のこういった異常事態には官僚的な対応をすること(シンゴジラとか)が面白いとされていることが多い中、子供目線の物語で行くというのはいいと思いました。
女の子に情報提供してくれるのが、謎の男の人ひとりというのはもったいない気がしました。こういった時には、この男の人と違うことをいう助言者がいるとドラマができていいような気がします。
あるいは、この男の人が実は並行世界の弟だった。なんていうサプライズもありかもしれないですよね。弟でなくてもいいので、この男の正体は読者には教えて欲しいいいいと思いました。
そして、最後、結果としてどうなったか。
それは、えり子の未来ではなく、たとえば、弟が戻ってきてえり子だけがいないとかの情報だけでも提供されると読者としては、えり子の意思は徒労ではなかったとなっていいのではないでしょうか。
このままだと少し消化不良な気がしました。

ここから先はSF警察的な人だったらもしかしてという点なのですが、
平行世界ではなく並行世界では。というところから始まり、
そのための次元の穴が開き続けるエネルギーとは・・・ということも考えてしまいます。(ブラックホール的なものだってすごくエネルギーを消費するじゃないですか)
何かしらの研究施設のようなものが(主人公の眼にはそれがなにかわからなくても)出てこないと変じゃないかなぁ。
みたいなことを言う人はいるかもなと、思いました。


櫻井 雅徳 少女の夢

夢の検閲。異性愛を是とするための同性愛の検閲、というのは少しやりすぎな気もしなくもないですが、しかしまあ、「ピュア」とかはそれどころではないのでいいのかなぁ。
15歳が言うのなら、夜這い装置じゃなくて、もう少し軽い言葉のほうがそれっぽい気がしました。
また、夢の検閲から、性的衝動への検閲、思春期への矯正、というテーマは面白く思います。
ちょっと気になるのが、むしろ現在は、多様性へ開かれたありとあらゆる正しさへの窮屈感とか、そういったもののほうが若者を縛っているのではないだろうか。時代と少しずれている感じは狙って出されているのかな。だとしたら、いいと思います。
また、ナルコプレシーがこの物語の中核に来るなら、実作ではしっかりとした説明がある説得力が出ていい気がします。
(正直、ナルコプレシーといわれても、ああ、どこでも寝ちゃうやつだよなーくらいしか教養がないので僕がそう思うだけかもしれませんが)

「同時に装置が微弱な電流で線条体を刺激し、メチルフェニデート=ナルコレプシーの治療薬、として脳内で作用している可能性に飛雄は思い至る。」飛雄、15歳とは思えない知識量だ・・・恐ろしい子!
「100年前には世界中で睡眠薬として処方されていたスボレキサントが人工的にナルコレプシー類似状態を引き起こすことを飛雄は過去の論文から発見する」飛雄、さすがに天才では。
15歳の天才少年でいいのではないでしょうか!

「少女は輪になって皆の前でハチをいじめる。ハチは自身の欲望に射抜かれる。飛雄に揺さぶられてハチは目を覚ます。いじめられた感覚はしっかり残っている。
にひひひひひひひひ。
ハチがはにかむ。ありえないスピードで点滅する夜這い装置と、真っ赤に染まる彼女の頬。」
正直、最後は何が起きているかよくわかりませんでした。ごめんなさい。
ハチの本当の欲求は、輪になっていじめられたかった、そういう性癖だったってことですしょうか?


伊達 四朗 髪がない

こっちは上の毛の話ですね。(コウノさんの梗概を見ながら)

「人類は禿を克服した。
禿げた人類は消え去り、スキンヘッドは機械人類の象徴となった。」
「生体だったころの彼は誰もがうらやむ素晴らしい直毛で、触れれば絹の触り心地だったという。」
ネタにしてはいけないとわかっているからこそ、めっちゃおもしろい。

「機械人間に関わるような仕事につきながら、彼らのことを理解していなかったことを恥じたタシロ―は、忘年会を機にサイトウと徐々に距離を詰めていくのだった。」
タシローいいやつ。マイルドヤンキー感がある。

しかし最後は悲しいオチとなってしまうのですね。こういったコンプレックスをネタにした話を書くときにどこまでが笑いで、どこからがいじめ・誹謗中傷にあたるか難しいラインだと思います。
スキンに手を加えるという展開は、冒頭からの予定調和なのでわかります、それを崩すために、途中でできた感情スイッチを利用するのは非常に考えられているプロットだと思います。
ただ、この作品のノリであれば、笑えるオチのほうがいいのではないかなと個人的には思いました。


和倉稜 冷めない鉄の軌跡は円

タイトルかっこいいです。
よく練られていて、ミステリ的構造として非常に実作を読みたいと思いました。
あえてミステリという点でいうのであれば、梗概なのでないだけかもしれないですが、ミスリード的な要素が弱い気がしました。
一本道過ぎて『12モンキーズ』的な驚きにいくのかどうか?という懸念も。
さらにあえていうのであれば、おそらくクライマックスというか、この一連の種明かし、なぜ血を入れ替える必要がというのが分かるのが50歳で、そこがミステリ的には頂点なのだが、
ループものという点では、やはり最後に戻ってきて、というところにも何かが欲しい。欲しい気がする。いや、そうでもないか、変にコメントを出そうとしているだけかもしれない。

駆動するために若い血が必要だったり、血が老いていることが判明したり、この辺の知識は、わかりやすく実作では提示していただけるといいのかなと思いました。
ミステリ仕立てで大変かと思いますが楽しみにしています!!


佐竹 大地 神の石ころ、人の一手

待っていたよ、宮内悠介に盤上で挑もうとする勇者の到来を!!

松川と松崎は同一人物で誤字っているだけなのかな。少し違和感。

「量子の存在は確率的であり、それらの偶然の関わりあいで世界は成り立っていた。」ここまでやるなら、現代物理的にはもうちょっと深堀した方が、個人的には突っ込み所が減っていい気がします。
量子論の量子は、現実では近似されてニュートン力学で何の問題もないので、プランク定数の確率を操作して超常現象を起こすような「されど罪人は竜と踊る」の現代物理ファンタジーみたいな世界なら必要かもしれないですけど、リアルで量子を見れてもなんもできない気がするなぁ。

最後から2番目の段落で急にふわっとした感じになっているのが、もったいなく感じました。
量子とか言わなくても、もっと能力者的な方向でいけるのではないでしょうか。世界に埋没したり、それを時笑が引き上げたり、ちょっと文面だけだとよくわからないでした。
「地球外少年少女」では、最後のほうで、なにやら観念的なやり取りが行われていましたが、あれは映像があるからこそ許される。エヴァもそうかもしれないですが、文章で表現しようとすると厳しい気がしました。たとえば、シン・ウルトラマンでは橋本先生が物理の監修をしていますが、あの人の本を読んで物理として理解できているぐらいでないと、真っ向勝負はできないんじゃないかなぁ。いやでも、うまいこと、読者をだまし切れば行けるのかもしれませんが。
そこを避けて、能力者的な方向で結末を導いたほうが、読みやすいと思いました。

花草セレ(はなくさせれ) 梅歌を齧る

アピール文いいですね!
実作ものこの文体で行かれるのでしょうか。非常に雰囲気もあっていいと思います。
和歌を送り、花を齧ると声が聞こえてくるという情景も、美しくていいと思います。
エンターテイメントとしては少し弱く感じましたが、この作品においては問題ないように思います。雰囲気を大事にしてもらって、実作を読みたいなと思いました。

あるとすれば、九州転勤で大宰府にというのは、やりたいことはわかるのですが、ちょっと強引すぎな気もしました。
でもそれも、たいしたことではないでしょう。実作楽しみにしています!

織名あまね 杉田+杉田≒杉田

どんな展開になるかと思いきや、めちゃくちゃ面白いコメディでいいと思いました。
ちょっとドラえもん的というか、そういう面白さがあっていいですね!

リアリティラインの高い話でもないですし、そういう点でも設定のリアリティとかは気にしない方向で全然よさそうに思いました。
読んで笑える楽しい実作を期待しています!

多寡知 遊(たかち・ゆう) ぬいぐるみと駆け抜けよう、古代宇宙遺跡

物語としてとも楽しいですし、不登校の少女が、冒険を経て、学校に行けるように成長するというのは、ベタですがいいですよね!
ゲームを通して子供が成長するSFだと、「ジュマンジ」や「ザスーラ」を思い出しました。
今回はアベック用のゲームということなので、そういったネタをふんだんに入れた楽しいゲーム空間、だけど片方はインディジョーンズ気分という、想像するだけで愉快な光景で、楽しみしています。
一方、ゲーム部分が肝になってくると思うので、ネタだし大変だと思いますが、頑張ってください!

個人的には、ピートにも少しばかりの変化があったら、うれしいなあなんて思いました。
目に見えるデレ入らないので、ほんと、ささやかでいいんです。なんかそういうのあるといいなあなんて、思いました。

あと、この二人でゲーム攻略するだけだと、ちょっと物足りないかもしれないので、ゲーム中の敵役・お邪魔役の一人くらいはいるのもありなのかも。ま、いなくてもいいですかね。


柊 悠里 孵(かえ)らなかった星間文明(あまかけるもの)への鎮魂歌(レクイエム)

俺よりはるかにルビのセンスがあることがタイトルからわかる。

「チーム構成は生殖パターンの異なる物理体εNAとATε、船内から移動体を複数駆使する機械知性のミューの3体だ。」ここがちょっとよくわからなかったです。

過去を探ることで、世界の真相がだんだんと見えてくるのは、ミステリ的で面白いです。
ゲーム理論のTit for Tat戦略が、為政者のプロパガンダによって抜け道が生まれ崩壊するところを、どう納得感があるように描けるのかが肝だと思いました。

ミステリ的とはいえ、超科学技術でなんでも解明できちゃうので、なるほどそんなことがと思わせられるか。ふーんなるほどねーで終わっちゃうのかは、
演出力というか技術的な問題になるのかなと思いました。

最後のオチが、この星は地球で、異星人は遠い昔地球から旅立った人類の末裔ということ?なんでしょうか。
そういうわけでもないのかなぁ。

また、ちょっとあったら面白そうと感じたのは、滅びた世界でも生き残っている人工知性がおり、それと異星人が対話する。みたいな展開があってもおもしろそうだなぁなんて思いました。
とはいっても、レクイエムなんで生きていてはだめですね。

やまもり 絡む、稲妻と怒り

ところで、モチーフとなっているのは斧ということなのでしょうか?それとも絵画等の美術作品があるのでしょうか。

北欧の凍てつく大地の遥か昔の物語というのはいいと思います。
ただし、SFとしての要素があまり見えてきません。という風に感じます。
のろいとしても、ゲームオブスローンズのような架空ファンタジー中に大いなる力を出してみるのもいいですし、あるいはエルデンリングのようにその力が外宇宙からもたらされてもいいのでしょうが、
現状ですと、ヴァインキングの結婚、領土問題等に絡んだいさかいの一幕、というラインをこえないのではないでしょうか。
呪いによってなにか大きく物語に作用するような展開があってもいいんじゃないかぁと思います。

ちょっと気になったのが、
「妻を娶って初めてのもので、女のみの技である呪い・予言の名手を多く出す一族から嫁いだハルゲルズの主婦としての手腕が試される宴でもあった。」
ここで、娶ってとなっているのですが、一方で視点が主婦としてあるので、ちょっと違和感がありました。

また、幕のおり方として、斧は今では博物館で眠っている。という、遥か未来の博物館に飛ばさなくても、いいのではないかな、とも思いました。
未来に来るのであれば、そこの博物館の管理人が、ハルゲルズの末裔であるとか、そういうものがあった方がいい気がしました。

猿場 つかさ 君と蹴鞠だけをしていたかった

未来を確定させる書を使い、現人神となる蘇我入鹿に対抗するために、
蛇神と契り、無性生殖が可能な種となった中大兄皇子の対決というスケールには驚かされる。
最後には、わずかばかり改ざんされた(帝は単為生殖する)世界に戻ってくる流れも、いいと思いました。

「〈国記〉の影響で入鹿の血族となった平氏を、北条を、後醍醐帝を、豊臣を、徳川を、あらゆる為政者を滅した。アマテラスの力で歴史を上書き直したのだ。」
この辺もアツい展開で、いいですね。刀剣乱舞の時間遡行軍で全日本の歴史を救う!みたいのを、中大兄の産んだ子供で実践するというのは絵としてはなかなか怖いですが、
その怖さも、狙って作られているものだと思いますので、安心して実作を待ちたいと思います。

ちょっと気になっているのが、そんなん完成してみなきゃわからんじゃんというところではもちろんあるんですが、エンタメとして面白いのだろうか。ということを感じました。
全然関係ないかもしれないですが、アニメ「平家物語」は、これも歴史をなぞっているものですが、非常に面白くかんじました。
一つには、平家物語自体の物語性が強い、登場人物も含めてというのもあると思います。(中学くらいの国語の授業を聞いていれば、知っているような歌やお話がでてきて、情景が描かれる、そして共感・感動できます)
一方で、私に知識がないのもありますが、中大兄皇子、藤原鎌足、蘇我入鹿の少なくとも名前の出てきている3名では、僕は暗殺した、という事実くらいしか記憶に残っていないため、どう面白くなるんだろうというのが、うまく想像できませんでした。

あるいは、ヤバい皇国、平氏、北条を、後醍醐帝を、豊臣を、徳川、この辺の話で、各有名人物を蘇我入鹿に置き換えることでの、エンタメみたいなことを狙っているのでしょうか。
これはこれで面白そうな気がしました。

髙座創 ギガンテック ブルー ピル

オチとして惑星を大きくしているわけですが、大きくなった分だけ大気密度とか変動してヤバそうな気がしました。酸素とか薄くなるのでは、さらに言えば宇宙線とかも大丈夫だろうか。
また、月との関係も気になる。地球の質量が増えると、主星と伴星の関係が崩れて大変なことにならないかとか。太陽と地球は質量差はものすごいから影響はないかもしれませんが。
なんていうあたりが、リアリティとして気になりました。
ただまあ、何でもできそうなタキオンがあるので、無視していいのかなぁ。
光速が3×10^8、1京が10^16なので、タキオンの速度は10^24。物理のことは忘れていいよっていう合図と受け取っていいんですよね?おそらく。
機動戦艦ナデシコのボソンジャンプとか相転移エンジンとかと同様のノリと勢いで行けば、行けそうな感じはします。

ノリとしては、シンゴジラ的な方向?になるのでしょうか。
梗概上ですと、物語としてはバジルが一人頑張っているのは伝わるのですが、他のキャラクターがほぼモブとなっているため、そこをもう少し、関係性が見えてくると面白くなりそうな気がしました。

継名 うつみ スキット・スキャット・スキャタラー

言葉を買取る宇宙人というのは面白いです。
ネタ切れになったら逆に宇宙にポイされちゃうみたいな非人道的なことが待っているかと思ったらそんなことはなく、
言語の売買による、マンション最上階の取り合いという面白バトルに発展したかと思いきや、最後には、祖母との会話を売りに出すことで勝利し、
宇宙人が祖母との会話再現し、温かく迎えられえるという展開で、安心しました。

「おしゃべり」のルールは、明確にされて、いわば「カイジ」とか「ライアーゲーム」とかみたいな、特殊条件付きバトロワみたいなものだと思いましたので、
いかにおしゃべりの競売が面白く描かれるのというのを楽しみにしています。
我々読者が驚くような、ゲームとして展開され、最後は、ヒューマンドラマに着地されるようなので、そこについては安心感がありますね。


馬屋 豊 ディープフェイクおばあちゃん

式さんのツイートで「DEEPFAKE OVERTURE作戦」が「ディープフェイクおばあちゃん」であることに気づいた僕に言えることなど何もない。
梗概の時点でやばいくらい笑えたので、もう実作を書くしかないよ馬屋さん!!

すべての要素が不謹慎に面白いので、ぜひ実作でのこのノリで、何文字でもいいので読ませてほしい。
不謹慎だが気分は悪くならない、この塩梅はすごいので、ぜひ、不快には感じないという難しい感性のラインを反復横跳びで耐え抜いていただければと思います。

八代七歩 月うさぎは眠らない

餅つきの始まりだ!
ふくよかなジンの顔を、月うさぎ達は前足でリズミカルにつきはじめた。
「えい」「やあ」「えい」「やあ」 ←かわいい

月ウサギがかわいいので、実作もかわいい月ウサギをいっぱい見せてほしいという気持ちしかない!
アピール文にある通りで、物語を複雑にするようなことは必要ないと思いますので、この路線で楽しく描かれることを期待しています。たのしみ。

邸 和歌 ポピポピポピポピ

機械系のセンサーでも感知できないんですよね?
そいつはなかなかすごい進化を遂げている。

ところで、インターネットのアングラ感と、やばめのSFというと、「デッドデッドデーモンズデデデデデデストラクション」が参考になるような気がしました。

夕方 慄 その舌触りは絹のよう

「そうしたある日、案理の母・茉莉が妙な噂を仕入れてきた。近所の大規模修繕工事中のマンションで人が消えたり、いつの間にか増えたりしているらしい。」
とあったので、最初は主人公2人のドッペルゲンガーものかと勘ぐってしまいました。

元号【照和】としていること。普通の昭和ではいけない理由が、よくわっからなったです。(なんで昭和64年とかじゃ駄目だったんでしょうか?)
タイムパトロール、異世界とあるので、ここが別世界/パラレルワールドであるという仕掛けの一つということなのでしょうか。
その割には、これを平成を迎えなかった世界として、描いている要素が見えてこなかったです。

一方で、少年少女のジュブナイルの物語としては楽しく読みました。
ひと夏の秘密の交流という物語はとてもいいですね。

もう一つ気になったのが、タイムパトロールのヤマシタと犯罪者のタニカワ。この二人はおそらくは読者の住む世界の未来から来た人間なのだと思います。
例えばスマートフォンをもっていたりとかして、物語に絡めるようなことがあったり、ストーリーとして絡みがないと、のび太の恐竜における、恐竜ハンターとタイムパトロール隊の、そのスケールちっちゃくしただけになってしまうような、もったいなさを感じました。

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