「ブルーシフト」第1回梗概自主提出

夜空が青くなる、それが青方偏移による宇宙収縮の唯一の証拠だった。2030年の夏、科学者たちはGPSの誤差と天体望遠鏡の観測結果から宇宙膨張が反転し、宇宙が収縮し始めたことを発表した。

その発表以降、世界は一時的に混乱し、人々は世界の終わりが近いと恐怖を感じた。しかし、宇宙の終焉は遥か未来の出来事であり、日常生活にはほとんど影響がないため、人々は次第にこの現象に対する関心を失い、生活を通常通り続けるようになる。

この状況下、中国の巨大宇宙望遠鏡「巡天」で働く楊叮嚀は観測結果から、明らかに意図のある光の明滅を発見する。楊はCERNの研究所に勤める友人、廻にそのことを相談した。
廻は、重力波検知による背景放射の観測から、宇宙の収縮スピードが加速度的に上昇していることを告げ、各国政府は既に地球人類のみによる解決は困難だとして、外宇宙に協力を求めるべく、指向性の通信を行う準備を始めていることを伝える。

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「ワタシ」は助けを求めていた。 情報生命体として活動する「ワタシ」は、宇宙の膨張とともにその認識領域、即ち生命活動を広げていく。 しかし、宇宙の収縮が始まったとき、「ワタシ」は消失に直面した。生存領域が次第に狭まり、過去に蓄積した知識と経験が消えていく。「ワタシ」は自身の存在そのものが脅かされていると感じ、助けを求めるためにメッセージを送信した。

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メッセージは楊のチームにより解読されたが、救援を求める声とわかり、各国の機関は落胆した。 この情報生命体、仮称「流」の扱いをどうするか各国が悩んでいる中、楊は廻に電子空間上で生き延びることが可能でないか提案する。
廻は情報領域の提供先として、超巨大なクラウドコンピューティングシステムを推奨した。このシステムは、数々の国際的な科学研究機関や大学、さらには一部の民間企業が共同で開発・運用していた。全世界に分散された膨大な計算リソースを利用して、「流」の知識と経験を保存し、また活動するための環境を提供することが可能であった。

結果として宇宙収縮を止める手立てはなく、情報生命体の難民を救助し、膨大な情報資産を消費することを、各国の人は良しとしなかった。 情報生命体は自らを拡張し、ネットワークを乗っ取ろうとするのではないか。そもそも、なぜそのようなことをする必要があるのか。 疑問と懸念は人々の間で広がり、「流」の救助に対する公的支援が揺らぎ始めた。一部の政府は、自国のインフラを「流」の活動領域として提供することを停止した。「流」は最終的にはCERNのネットワーク化で保護されるようになった。

楊と廻に愚痴るように、「流」はなぜ実体を持つ生命体である人類が何を焦ると言うのか。と問う。現在の宇宙収縮にはあと数千年はかかるという。
この事実を共有すると人類は再び世界の終わりから興味を失い、日常へと帰っていった。夜空はより一層青さを増していく。

(1193文字)


アピール
ブルーロック、ブルーピリオド、ブルージャイアント。ブルーから始まる作品はどれも良かった。
ここはブルーにあやかるしかない。
青方偏移を題材にする、コロナ以後、ブルーシフトという海洋保全団体がいる。というところが着想にあったのですが、海洋保護団体に対する理解が浅く、断念し、いまの情報体とのコミュニケーションに方針を変えました。
もともと、宇宙が収縮すれば宇宙人と遭遇できるという方向のアイデアもあったので、そこに落ち着きました。


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