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マシンガンズと出会い、東京のお笑いに触れ、夫と分かち合えた夜

7月の初めのこと。
私が録画しておいたマシンガンズ出演の「ネタパレ」を、夫が自発的に見ていた。

驚いて「どうしたの?」と聞くと「好きだっていうからどんなのかなと思って。マシンガンズのネタ面白いよ。もっと見たい」と言うではないか。
えっそうなの?じゃあこれも見る?とばかりに、ガンズの素地を知らしめるべく「しくじり先生」「ソウドリ」を見せる。

夫はマシンガンズのことを「ゴミの人」と「右側のおじさん」という覚え方で認識している。
右側のおじさんのリアクションに終始大笑い。

「この人面白いよ、みんなにいじられて面白くなる人なんだね。ダイアン津田と同じタイプだけど、こっちの方がおじさんでおっとりしてて柔らかい感じだね。人間味があって俺好きだな」

非常に意外だった。夫はザセカンドをほぼ見ていない。
それどころかザセカンドに対して「15年ダメだったということはそれだけ実力がなかったということだろ」と某M-1チャンピオンみたいなことをいう男だったので、苦労と哀愁に満ちたおじさん芸人には興味がないと思っていた。

私がマシンガンズにハマったこともどこか冷ややかに見ているのだろうと勝手に思い込んでいた。



私はザセカンド後の滝沢ビジュ爆事変からマシンガンズのファンになった。
絵に描いたようなTHE新規勢である。

私は夫に黙ってコソコソと推し活をしていた。
散歩してくると言い本屋へ寄ってマシンガンズの掲載誌を買いに行ったり、QJWebの生写真が届く時には夫に見つからないよう光の速さで郵便物を回収したり、先に寝ると言って自室に引きこもり夜な夜なカードデコに勤しんでいたりした。

生まれて初めてのカードデコ。めちゃくちゃ楽しい


ここまで自分の中のヲタ気質を爆発させたのは実に25年ぶりなのだ。
私がオタクな人間であることは夫に知られているけれど、ここまで頭のネジを飛ばしている姿はさすがに見せたことがない。

夫はオタクを否定しないものの共感はあまりできないらしく、推し活についても「なんでそんな他人にお金をたくさん使えるの?自分のために使ったら良いのに」という考えの持ち主である。
推しと共に歩むという考え方は皆無であり、「それなら俺が中心となって歩く」というタイプである。陰となって生きてきた私と違いコミュニケーション能力も高い。陽キャ要素たっぷりである。

というわけなので、私がマシンガンズに大ハマりしていることが夫にバレたら絶対に冷やかされるし、なんなら嫉妬されるんじゃないかとも思っていた。
自分の好きなものを否定されたくなかったし、言い争いになるのも嫌だったから、「マシンガンズが面白いよ」と伝えてはいたけれど、それ以上のことはあまり伝えていなかった。怖かったのだ。



話は少しそれるが、最近の私は生活に意欲をなくしている。

主原因は仕事だ。
難しい仕事を抱え、自分の実力不足に落ち込む日々。
幸いなことに家庭は円満なので、仕事の悩みを夫に愚痴ってはお茶を濁す日々だった。

そんな時でも画面の中のマシンガンズに元気をもらっていたけれど、気持ちは相変わらず沈んだままだった。仕事やめてしまうかもしれない。
そんな私の落ち込みようを見かねたのか、夫はこう言った。

「せっかくだから、マシンガンズを見に行けばいいじゃない」

えっ?

えっ?

「気持ちが沈んでいるとき出不精なのはいけない。どこか出かけるとかしてむりやり気持ちを切り替えるくらいのことをした方が良いよ。せっかく見に行ける距離に住んでるんだから、行ける時に行ったほうがいい。俺もマシンガンズは見てみたいし」

さっき書いたように、私はコソコソとガンズへの愛を燃やしていたので、もちろんライブにも行きたかったしスケジュールも把握していたけど、夫に断りを入れないと行けないハードルが面倒で行動に移せなかった。
否定される恐怖を味わうくらいなら我慢して心の内にしまい込む、というのが自分の願望処理の方法だった。

でも、予想外の言葉が聞けたので、行けるのかもしれない。
急いで調べたら、ちょうどチケットが取れそうなお笑いライブがあった。

...一緒に行く?
「行くよ」

そうして私は、生まれて初めて生のマシンガンズを、東京のお笑いライブを、夫と一緒に見に行くことになったのだ。



2023年7月23日。

私と夫は西新宿ナルゲキにいた。

夫に「なにそれ!?」と言われながら撮影


東京のお笑いライブを見るのは生まれて初めてである。
おおついに...!と静かに心躍らせながら会場の入り口に着くと、見覚えのある人が普通に階段を上り下りしているのが目に入った。

キュウ清水さんが地下へ降りて行き、しばらくしたらぴっちりセットした髪で片手にヘアスプレー持って地上に上がってきたり。
ラブレターズが苦労しながらネタに使う自転車を地下に運んでいたり。

M-1やKOCのファイナリストが普通にそこにいることに驚いてしまった。
お芝居やライブの会場って、出演者と客の入場口は別だと思っていたがこんなにミニマムな劇場は初めてだ。
夫は「自転車運ぶの大変そうだったから手伝ってあげたら良かったな」と言っていた。ダメだよ!


開場し着席した後も驚いた。舞台と観客席がめちゃくちゃ近い。
芸人さんたちをこんなに至近距離で見られるのか。
緊張と興奮でそわそわする。

私が見たライブは漫才とコントが両方楽しめる内容で、漫才の時は、漫才師が劇場の中庭から舞台へ登場する様子がスクリーンに映し出される演出だった。コントの時は出囃子と共にコント師の紹介映像が流れる。凝った演出が楽しい。

全12組のうち、マシンガンズは中ブロックの最後に登場。
暗転し、パッと中庭の映像が映る。
滝沢さんの足だ。

カメラが上に移動し、滝沢さんの調子に乗ったキメ顔が映る。場内大爆笑。
その後西堀さんの表情でさらに大爆笑。

K-PRO公式さんがその時の動画をあげてくださったので、ぜひご覧ください。


滝沢さんの足 → 顔が映った瞬間、爆笑と同時に「あっ、マシンガンズが今、横の廊下にいるんだ!もうすぐ出て来るんだ…!」と胸がいっぱいになった。
直後に舞台に出てきた時のお二人のきらめきったらない。
そして近い。滝沢さんはもう顔が汗ばんでるように見える。そんなのもわかるくらいめっちゃ近い。

漫才は昨今のビジュ爆&バブみいじりから始まり、新ネタも織り交ぜられていた。ライブ後どなたかがTwitterで書かれていたが「ネタと漫談の間が以前よりシームレスになっている印象」という旨の感想にすごく共感した。
観客の熱量も高い。会場一体が爆発的な笑いと拍手に包まれていた。

マシンガンズがこの後どのような人気街道をたどっていくかわからないが、ザセカンド準優勝の余韻が残る異様な熱さは今この時のものだ。
お二人はその熱さの中で終始キラキラしていた。
ああ、この現象は今しか見られないのかもしれないと思って、私は可能な限り目に焼き付けた。



私は子供の頃から吉本新喜劇で育ったような根っからの関西人だが、どちらかといえば東京の演芸やお笑いが好きだったように思う。
しかしテレビをつければ当然よしもとの芸人しか出てないし、今みたいにTVerもない時代だから関東ローカルの番組は見ることができなかった。
大阪のお笑いも大好きだ。でも東京のお笑いライブシーンに憧れのようなものをずっと抱いていた。

年を重ね、昔ほどお笑いに熱心になることはなくなってしまった。
関東へ引っ越した後も、バラエティ番組はよく見るけど、実際に劇場へ足を運ぼうとなるほどの熱はもう冷めていた。

しかしマシンガンズという推しができたことで、東京のお笑いへの羨望を思い出し、ようやく触れることができた。

他の芸人さんもめちゃくちゃ面白かったのだ。
KOC予選時期ということもあり、コント師の方々は予選会を意識した尺でネタをする中、8分という長尺コントを見せつけたラブレターズ。
マシンガンズの登場シーンをパロディにして「こんなもんなにが面白いんだよ!」といじり倒すまんじゅう大帝国。
客席に向かっての芝居が本当に上手で、コントの没入感が凄かったクロコップ。
小さな劇場にいろんな事務所のいろんな芸人さんがひしめき合っている。限られた人だけが共有できる秘密の空間のようなひととき。笑いへの熱意が間近に感じられて、終始わくわくした。


マシンガンズに会えた。
東京のお笑いライブに行けた。
子供の頃の夢が叶った。

いろんなことがいっぺんに実現して、家に帰ってから、ちょっと泣いてしまった。
仕事は辛いけど、なかなか上手に生きられないけど、生きていて良かった。



私と同様に、東京のお笑いライブ&マシンガンズを初めて見た夫も大満足だったようだ。
「お笑いはテレビで見るより、ライブで見る方が迫力も熱量も伝わって良いね」
「俺やっぱバブ堀さんが好きだわ。可愛いわーめっちゃ可愛いあのおじさん」

夫、まさかのバブみに魅了された模様。
家での呼び名は「右側のおじさん」から「ニッシー」に変化しました。ニッシー!

「いつのまにカードデコとか作ってたの?そんなに好きだったんなら言ってくれればよかったのに」
「今度うちわも作りなよ、きっと二人は喜んでくれるよ」

夫は全面的に私の推し活を応援してくれるようになった。
というか、私が勝手にコミュニケーションを怖がって引っ込み思案になっていただけだったのだ…絶対に冷やかされると決めつけて。
初めから夫のことをもっと信用すべきだったし、自分に自信を持つべきだったと反省した。

思い切って行動して、いろんなことの経験と好転に繋がった。
私もそこそこの年齢を重ねたが、それでも人生予想外のことって起こりえるし、こんなに気持ちが躍ることって、まだまだあるんだな。

これからも、マシンガンズを、東京のお笑いを応援しよう。
夫と一緒に。



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