介護士さん、ありがとう

水色のユニフォームを着た方たちは介護士の女性たちだった。気配りのプロフェッショナル。
入院して1週間洗髪していなかった。ハードタイプのヘアムースと、たぶん自分の血液でガビガビのゴワゴワだった。私本人は「まあしばらくはしょうがないよなあ」とあきらめていた。ところが、ベテラン介護士さんたちは、もう我慢ならないような感じだった。毎日、私の下の消毒とオムツを取り替えながら、悲しそうな表情で、
「洗髪したいよねえ…」
はたして、その時はやってきた。
2人の介護士さんがやってきた。
シャンプー、コンディショナー、バスタオルを病室の棚からバババ!っと取り出して、ベッドのストッパーを外し、「行くよ❗️」みたいな感じで病室を出る。
時を同じくして、夫が着替えを持って4階受付にやってきた。
コロナの折、面会は禁止。
「少しだけでも顔、見られるようにしますから、待ってて下さいって言っておきましたから!」
ベッドも入れる浴室。洗髪台があるのだろう、ベッドのまま頭をセッティング。
ここからは、例えて言うならF1レースのピットインしてタイヤ交換してるような、そんな感じだった。手さばきが早い!しかし雑ではなく、黙々とでもなく、ときに笑いながら、いかにも楽しげに。
シャワーヘッドから出てくる熱めのお湯がガビガビの髪に浴びせられ、シャンプーがつけられる。一度のシャンプーでは洗い切らない。洗い流され、再びシャンプーが投入される。2人がかりで洗い進められていく。頭に手術の傷があるから優しく優しく。傷のないところはダイナミックに。繊細に豪快に。コンディショナーをつけ、洗い流した後、2人がかりでドライヤー。こんなの家でやったらブレーカー落ちるよなと思えた。それくらいパワフルな音だった。
「あーキレイになったよお!スッキリしたねえ!さあ、旦那さんのとこに行きましょう」
ガビガビからモフモフに。あーこれが私の髪の触り心地だったと思い出した。
浴室から出る。すれ違うのを装って、ゆっくりベッドを進ませながら、夫と対面させてくれた。20秒もあっただろうか。夫はただ恥ずかしそうに手を振ってきた。手を振り返した。

寝たきりのあいだは、週に2日、身体を拭いて、着替えさせていただける日があった。それだけでももちろんサッパリして気持ちいい。最後に洗面器の中の熱いお湯で足湯してくれた。超絶気持ちよかった。

生まれて初めて、差し込み式便器を使ってベッドで排便したとき、片付けてくださったのは、ベテラン介護士の方だった。笑顔で「よかった、やっと出て。苦しかったでしょう?よかった」と、言いながらお尻拭きできれいにしてくれ、新しいオムツにしてくれた。

尊い。介護士さんの仕事は尊いなあと思う。

ありがとう、介護士さん☺️
本当にお世話になりました。

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