宮木よいち

どこにもいない

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ヨルシカ「アルジャーノン」を聴いて、ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』を読む

スーパーの青果コーナーで立ち止まって音楽に耳を傾ける 最近、気になっている音楽がある。透明感のある女性が歌うどこか寂しそうな歌。その歌は行きつけのスーパーで聴くことができる。気づいたのは、1週間ほど前か。青果コーナーで白菜の山とにらめっこをしていた私は、しばらく呆けたように白菜を片手に音楽に耳を傾けた。何がいいとはっきりと言葉にできないが、すごくよかった。現実が波のようにスッと引いていき、静けさのなかでその音楽だけがすべてになる感覚。私の「好き」はそういう形をしていた。  運

    • 2023/2/15 追憶

       ことの発端は、私が旧友である草下氏の誘いにのったからであろう。いや、彼女が所属している会社から異動を命じられ私の住む街に引っ越してきたからか。しかし、それだとあまりにも受動的だ。  とにかく、私は、草下氏と再会したことがきっかけでこの文章を書いている。  草下氏は、大学の頃の友人である。小柄で化粧っ気がない大人しそうな見た目に反してパワフルで激しい情緒の持ち主だ。私は放蕩ののちに大学に入っているので、彼女の方が幾分か若い。草下氏とは大学を卒業してからしばらく会っていない。

    ヨルシカ「アルジャーノン」を聴いて、ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』を読む